第5話 リザードマン

オレは株式会社ドラゴン営業部のリザードマン。


オレたち営業部はドラゴンの活躍する場を求めてあちこち飛び回っている。



この会社の仕事はドラゴンの出演作品を取り付ける事。


そのために営業部では様々な提案を取引先にし契約を取っていく。




そうここは、


ドラゴンの、ドラゴンによる、ドラゴンのための会社。




オレリザードマンは、この人と同等の小型なサイズを活かして飛び込み営業を主に行っている。


新規開拓の第一歩はわが社を知ってもらうこと。


そのために電車に乗って様々な企業を訪ねるのだ。




「こんにちはー!株式会社ドラゴンです。」


他のドラゴンと違いオレは小さい。だから相手に恐怖を与えることなく仕事を進められるのだ。


これはオレ、リザードマン特有のスキルだ。


ただ受付のお姉さんの表情がなんか気にはなるがな。



--新人の頃


「ブルー先輩!飛び込みの極意みたいなのってあるんですか?」


「清潔感と笑顔。それだけあれば基本大丈夫だ、まぁ見てろって。」


ブルー先輩はそういうとオレを引き連れて初めての会社に入っていった。




「こんにちはー!株式会社ドラゴンです。」

すごい爽やかな笑顔だ…。


「ドラゴンさん!?本日はどのようなご用件で?」

「近くに寄ったのでアポイントはないのですがご挨拶にと思い立ち寄らせていただきました。」


「確認とりますね。少々お待ちください。」



「4階へどうぞ。あ、あと触らせてもらってもいいですか?」

「…?あ、あぁどうぞ!」


また爽やかな笑顔を振りまいている。


「キャー!!ドラゴン触っちゃったぁ!!」


受付のお姉さんは終始テンション高めだった。




エレベーター内で、

「俺たちの会社は特殊な案件を持っているから他の企業とは違い飛び込みもかなり楽だぞ。それになぜかファンも多いし。」


「そうなんですね!頑張ります!」





ってなことが何回もあってオレもワクワクしてたんだが、

一人で回るようになってからはキャーキャー言われたことは特にないな…。




次のところに行くぞ!


「こんにちわー!株式会社ドラゴンです。」


「きゃー!!」


俺の顔見るなり黄色い声!?


これは!?


オレはかっこつけたくなって右手を少し上げた。




「へびー!!きゃー!!」




・・・え?




「いや、違います!違います!オレはリザードマンで、いうならトカゲで・・・」




そんなこんなしていると警備の人が駆けつけて俺を押さえた。




こんなん違うわー!!






誤解はすぐ解けて、受付のお姉さんも平謝り。


オレは大きな括りではドラゴンなんだが、細かい分類にするとちょっと違う。


誤解されることも多いが、それでもくじけずにやるしかない。




まぁ誤解された方がそのあと優位に話を進められるオマケが付くのでそれはそれで良しとしておこう。




スーツも特注じゃないし安上がりなんだけどなぁ。

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