第4話 ダークドラゴン



私は株式会社ドラゴン営業部のダークドラゴン。

私たち営業部はドラゴンの活躍する場を求めてあちこち飛び回っている。


私の名はが不吉な感じ、そして顔もイカツイ。…らしい。

自分では全くそう思っていないのだが周りからの目はそんなもんか。


こんな私が営業に出向いたら先方は萎縮してしまう。だから今の私は営業には向かわない。

営業部なのに営業にいかないって、給料泥棒じゃないかって?

いやいや、私の仕事他所との関係を円滑にすること。


………

…………

「この度は申し訳ありませんでした。」

私は深々と頭を下げる。


「いや…。もう過ぎた事ですし、これから気をつけてくれればいいですよ…。」

すごく怒っていると聞いていたので菓子折りも用意して謝りにきたがそうでもないな。


まぁ、いつも私がいくと丸く収まっているからな。


………

……


これが私の仕事。そう、いわゆるクレーム処理だ。


私が出ていくと先方は怒りがなくなっている。


というより、怒りの感情から恐怖の感情にすり替わっていくらしい。

こちらに非がある時はもちろん、非がないイチャモンに近い感じの時も私は全てを丸く収める。


人呼んで「必殺火消し人」


この二つ名は何気に気に入っている。


まぁ、私も仲間のドラゴンが(言葉だけで)やられていく姿なんか見たくない。

ドラゴンは唯一無二の誇り高き種族である。



仕事だからってペコペコする必要はないし、ドラゴンがペコペコしていたら嫌であろう。

幻滅であろう。



先方に謝る時もこのドラゴン族のプライドだけは捨てないよう気をつけている。

しかし、若いドラゴンたちは何かとすぐ謝っている。

もっと堂々としなければドラゴンとしての威厳がなくなりその他の所謂雑魚キャラと同等の道を歩んでしまう。


スライムの奴が良い例だろう。

もともとは物理攻撃は全て無効化、特定の属性魔法しか効かない。そんな強力なモンスターだった。

それなのに、今では最弱キャラの代名詞にまで成り下がってしまっている。


そこまでして契約が欲しかったのか、切羽詰まっていたのかはわからないが。


私たちドラゴンはその轍を踏むわけにはいかない。






何も納得のいかない事まで自分らを捨てて取り引きする必要はないのだから。

誇りを持たない事は死んだも同然。

そんなの仕事でも何でもない。


そんな人生つまらないだろう?



ただ、強さを捨てた事で可愛さを手に入れたスライムたちはグッズ売り上げが桁違い。

アレはちょっと羨ましかったりもする。



可愛いドラゴンは勿論いる。しかし、ダークドラゴンはカードゲームなどでは重宝される立場にはあるが、可愛くはない。


ぬいぐるみなんて夢のまた夢。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る