第2話 ブルードラゴン
俺は株式会社ドラゴン営業部のブルードラゴンだ。
俺たち営業部はドラゴンの活躍する場を求めてあちこち飛び回っている。
この会社の仕事はドラゴンの出演作品を取り付ける事。
そのために営業部では様々な提案を取引先にし契約を取っていく。
そうここは、
ドラゴンの、ドラゴンによる、ドラゴンのための会社だ。
えーっと、今月の営業成績は…
ふむ、2位か。
まぁ今月はレッドの奴が大口契約を取ったからしょうがない。
しかし、この契約数のグラフを見てみろ!
俺がぶっちぎりで1位じゃないか!
そう、俺は営業部のエース、ブルードラゴンだ!
※あくまで自称です。
「もしもし、私株式会社ドラゴンのブルードラゴンと申します。御社の次作のアニメにドラゴンを登場させてもらえないかと思いまして…」
「あー、次の作品は学園ものだからドラゴンは必要ないんですよ。」
学園ものには確かにドラゴンは必要ない。普通のドラゴンならここで引き下がるだろう。
しかし、俺は違うぜ!
「学園ものだからですよ!ドラゴンマスターみたいなギャップを持っている美少女クラスメイト、ありだと思いませんか?動物系が登場することでグッズ販売も好調になりますよ。」
そう、アニメのグッズはメインキャラクターもだがマスコット的な存在が大きな売り上げを占めている。
「あー、確かにそういうのもありかもですね。ただ、上にも確認しないといけないから取り敢えず資料送ってもらっていいかな?」
…ふ、勝った。
「わっかりましたー!今すぐお届けに上がりますね!」
俺は身支度をちゃっちゃと済ませエレベーターで屋上に向かった。
本当は窓から出たいのだが、
………
……
…
「ぬぉおおお!!」
俺はこの世の終わりのような声を上げた。
「どうした!?ブルードラゴン!?」
「ブルーさん!大丈夫ですか?」
皆が俺を心配している。
この状況大丈夫ではない…。
俺は綺麗に窓に引っかかったのだ。
前にも後ろにも行けない。
これはもう一人ではどうすることも…。
「いや、ちょっと、無理です。引っ張ってください…。」
こんな恥ずかしい姿はドラゴン以外には見せられないな。
「よーし、みんな引っ張るぞー!オーエスっ!オーエスっ!」
「ぐわわわわーーーー」
俺はまた声にならない声を上げた。
皆が俺の尻尾を引っ張ているのだ。
実験はしたことないからわからないが、きっとドラゴンの尻尾もトカゲのように逝ってしまうのでは…。
俺は耐えた。今を生きるために耐えた。
身体中を石鹸まみれにされながら…耐えた。
…
……
………
ってなことがあったから学習したのだ。
窓からは出てはならない。窓は出入口ではないと。
そう、俺の偏差値は高いのだ。がははは。
飛べないドラゴンもいるが、ブルードラゴンは空を飛べるからな。
空を飛ばない理由などない。
そして、音速のスピードで今回のクライアント《京風アニメーション》に着いた。
風圧がすごいので髪型が乱れていないか、ガラス張りのビルで確認したら、
さて行きますか。
「こんにちはー!株式会社ドラゴンでーす!資料をお届けに参りましたー!」
営業は第一印象で全てが決まると言っても過言ではない。
「はやっ!!」
「え?もう来たの?」
「ドラゴンってやっぱりすごいのねー。」
「かっちょいい」
皆の心の声が聞こえる。この表情はドラゴンを崇めているに違いない。
※あくまで個人の感想です。
「担当の方はー?」
俺の問いかけに、
「あ、私です。どうも。」
名刺交換が始まった。
「資料はこれですが、単刀直入に学園ものなら大きさを自在に変えられるドラゴンがマスコットにもなって美少女のギャップにも繋がって最適かと。アニメが前作と同じくらいの反響があった場合のグッズ売り上げの見込みがこのくらいに………」
「…………前向きに検討しますね。今作でもよろしくお願いします。」
俺たちは固い握手を交わした。
「痛でででででで」
ん?
*
**
***
ふふふ、株式会社ドラゴンのスーパーエースだから当然の結果!
※もちろん自称です。
今日も株式会社ドラゴンの社員はせっせと働いている。
いつもと変わらない職場の中でも、様々なドラマが生まれる。営業の基本はスピードと第一印象。
翼で回って契約件数を稼ぐこと、そんなことは基本中の基本だ!
契約件数1位は伊達じゃない!
※これは本当のことです。ちなみにブルードラゴンの名誉のための注釈です。
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