第三章 王立学校 二年
第0話 アジサシ
【1】
河風が頬を流れて髪を揺らす。
私はこの国に帰って来たのだ。
まさか再びこの地に足を踏み入れる事になろうとは思いもしなかった。
河船の舳先で波を切る喫水線を眺めている。
船が北上するに従って気温も少しづつ下がっているように思える。
夏の日差しを避ける為甲板に張られたタープの下で河風の涼しさを満喫する。
あの時は絶望の中で全てを失ったこの身である。
途中通った街々はあの頃とは大きく様変わりして、人も増えて賑やかになっていた。
河船での流通が増えて寒村ばかりだった川岸の村々が大きく発展したと聞いている。
かつての中央街道の街々は変わったのだろうか?
王都も変わっているのだろうか? 旧態依然のままなのだろうか?
国王は代替わりして、かつてのペスカトーレ枢機卿は今は教皇クラウディウス一世としてハッスル神聖国に君臨している。
ペスカトーレ侯爵家は息子が枢機卿として宮廷を支配していると聞いている。
私がこれから向かうラスカル王国の王都には、未だ憎い仇が健在だ。
私から夫も子供も奪ったあの仇どもが…。
船の喫水をアジサシが飛び過ぎて行く、ラスカルの王都を目指して。
私のこの想いを奴らに届けて欲しい、復讐に帰って来たと!
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