第135話 ファッションショー計画
【1】
「それは良いわね。冬のお披露目会の時に参加した服飾店に新作を出させて競合させると良いかしら。学生だけでなく大人たちもたくさん見に来るはずかしら」
「サマードレスが狙い目かしらね」
「違うわセイラちゃん。狙い目は成人式や成年式の付添の衣装よ」
「でもそれは来賓向けのデザインになったしまうわよ。学生にアピールするデザインをメインに据えないと盛り上がらないわ」
「それもあるけれどヨアンナ様。これ沢山人が集まりますよ。場所を変えませんか?」
「どう言う事かしら?」
「ファッションショーなら秋にやった時でも、平民寮の女の子と下級貴族寮の女の子でほぼ満席になっちゃったわ。今回は上級貴族寮からも人が増えるだろうし、来賓の奥方様たちも来れば入りきらないわ」
「それならどうするの入場制限なんてしたくないし、招待客だけという訳にもいかないし」
「だから入場券を売るのよ。お金を出してもみんな見に来ると思うのよ」
…エマ姉の本音はこれか! 儲けるつもり満々だわ。
「それにね、上級貴族や貴族婦人は混雑した場所で見るのも嫌がるでしょうから、テーブル席を設けて金貨一枚でお茶とお菓子付きにしましょう。それから椅子だけの一般席が銀貨五枚。それとは別に銀貨一枚の立見席も設けてみましょう」
「でもそれでは本当に客数が限られるかしら」
「だから、場所を変えましょう。最終日の午後は闘技場を押さえてそちらに場所を移しましょう。中央に花道と舞台を
ああ、これはかなりのお金が動きそうな予感がする。
テーブル席だけでもチケット五十枚は捌けそうだ。お茶とお茶請け、そして給仕のメイドを付けても八割は純利益で計上出来そうじゃない。
「そうね、なかなか良いアイディアかしら。でも闘技場の確保は大丈夫なのかしら」
「騎士科の生徒のトーナメントが初日からあるけれど、決勝が最終日の午前中なの。午後から表彰式があるけれど、訓練場に変更して貰いましょう。パーティーを開くのに訓練場しか取れなかったと嘆いておられる上級貴族の方がいらしたので、下級貴族寮の食堂と交代してあげればどうにかなるわ」
そう言えばさっき迄居たリオニーの姿が見えない。
多分会場確保に動いたいるのだろう。
「そうなると、失敗できないかしら。よその企画にお客を取られない様に何か考えないと…」
「ねえ、いっその事で服飾デザインを出す商会を増やしてはどうかしら。ポートノイ服飾商会とシュナイダー商店の関係だけでなく、冬にファッションショーを開いた商会にも声をかけて見ればどうかな?」
「入場料の儲けを分けるつもりは無いわよ。この企画はサロン・ド・ヨアンナ主体で、ヨアンナ様とジャンヌちゃんの名前を使うから」
「別にショーに出品する服飾店は参加料を取っても良いし、入場料を分ける必要も無いじゃない。自分たちの服を宣伝するんだもの。教導派の貴族たちも自分たちの関係者が出るなら足を引っ張るような事はしないわよ。それよりも宮廷貴族たちや見栄っ張りの上級貴族が沢山お金を落としてくれるかも」
「やりましょう、セイラちゃん。コンセプトは自由! 一店舗二点までで、参加者を募りましょう。…大丈夫! ポートノイ服飾商会もシュナイダー商店も系列店を使って新作をアピールするから」
「コンセプトは自由で大丈夫かしら? 変なデザインを持って来る店は無いのかしら?」
「私たちはしっかりとコンセプトを決めましょう。さっきの成人式用の衣装は来賓向け。学生向けは卒業式の舞踏会用のドレスを狙いましょうよ。下級貴族や平民をターゲットにプレタポルテの販売を狙いましょう。卒業式のドレスはそろそろ仕立て始める時期だけど、ファッションショーが有るなら様子を見る娘も出てくるでしょう。下級貴族や平民ならセミオーダーやレディメイドを求める人も大勢いるでしょうし、上級貴族でも仕立て直す人も出てくると思うのですが」
「それは良い考えね。ジャンヌちゃんに頑張って貰いたいけれど説得できるかしら。ヨアンナ様は出て頂けますか」
「そんな面倒はお断りかしら。上級貴族寮なら着飾って歩きたい人は沢山いるかしら。その人たちに頼む事ね」
「そんな人って東部や北部の教導派貴族たちばかりですわ。私たちの服は着てくれないし、着せたくも無いわ。ここはセイラちゃんが一肌脱ぐべきね」
「脱がないわよ! それにモデルに関しては私に良い考えがあるのよ」
【2】
リオニーはキッチリ最終日の午後の闘技場を押さえてきた。
その上当日の設営に騎士団寮の一・二年の生徒の動員まで目途をつけてきたのだ。
どうやったか? どうも立見席の予約券をエサにして騎士団員を釣ったようだ。
翌日には校舎の入り口に黒板が据えられてファッションショーの参加者募集の掲示が成されていた。
推薦者は学生で構わないが、参加はあくまで服飾店である事。参加費は一点につき金貨一枚で一店舗二点迄の制限が付けられている。
この募集に貴族令嬢たちが色めき立った。
上級貴族令嬢たちは早々に御用達である服飾店に連絡を入れて呼びつけ始めている。
各服飾店も今回は学生だけでなく来賓にもアピールできるため力が入っており、令嬢たちは誰がそのドレスを着て舞台に立つかでせめぎ合っている。
私たちは卒業式の舞踏会用のドレスの出品とレディメイド品やセミオーダー品の販売も行う事を下級貴族や平民を中心に流し始めている。
上級貴族たちもショーの結果次第でデザインを変える可能性も有る為、オーダーを止めた者もかなり現れた。
大手の服飾店も失地回復の為かなり気合が入っており、出品者として参加するだけでなく観覧席の確保も打診されている。
お膳立てはしたが、私たちの手を離れて王都の高級仕立て屋や服飾系商会が勝手に踊っている。
エマ姉は何もせずにお金が入ってくるのでご満悦だ。
私はシュナイダー商店とポートノイ服飾商会から一枠ずつ合計二点の枠を貰い、学生からの公募作品を募る予定で平民寮に募集の掲示を行った。
春に行ったコンペの影響で、関心は高まっている。今回も審査委員長にジャンヌを起用し、シュナイダー商店とポートノイ服飾商会の名を入れている。もちろん観覧者全員に投票用紙も配布する。
シュナイダー商店のもう一枠は前回コンペの優勝者、ポートノイ服飾商会の一枠は系列も含めたお針子からの公募を予定している。
主催側の二商会は新しい才能の有る者の庇護者を旗印にして学生たちの支持を増やしている。
実態は才能の青田買いとマーケット戦略なのだが、新しい雇用と才能に対する正当な報酬を確約しているので良しとしよう。
後は私の考えている仕込みがどの程度爆発力が有るかだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます