閑話5 冬至祭の夜
おかげさまで、一年間どうにかやって来れました。
初めの頃は色々と悩みながら書いて来ましたが、折れずに続けられたました。
これも皆様のフォローあっての事だと感謝し事を御礼申し上げます。
今週末から年末年始はしばらくお休みいたしますが引き続きのフォローをお願い致します。
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☆彡
「それでエドは戻ってこないのかい?」
「そうね。私も一銭の儲けにもならないのにエドを引き摺って帰るなんてゴメンだもの。連れて帰ってきたらまた連れて行かなくちゃあ行けないんだもの。二重にお荷物だわ」
「でも聖女様は連れて帰って来た上にグレンフォードまで送って行ったじゃないか」
「ブリー州だけでは無くてレスター州の貴族令嬢たちにも配達が有ったし、ジャンヌちゃんはとっても良いシュナイダー商店の広告塔になってくれるわ」
「お前、そのうち罰があたるぞ…」
「大丈夫よ父さん。ジャンヌちゃんは良い娘だからそんな事思わないわ。…グレンフォードの大聖堂も株式組合化出来ないかしら、そうしたらライトスミス商会の系列としてテコ入れできるのに…」
「エド~! 帰ってきてくれ! この罰当たりな娘にみんな呑み込まれてしまう…」
「これからはシュナイダー商店も王都の貴族令嬢を中心にファッションショーを展開しなくっちゃ。拠点をクオーネに移すべきかしら」
「ベテランのお針子を大量にアヴァロン州やカンボゾーラ子爵領に連れて行ってしまうし。商店主の座も娘に奪われてしまう~」
「そんな事しないわ。父さんはこれからもずっとお飾りの商店主として居続けてね。何かあったら火の粉を被って貰うから」
「エド~…お願いだから、帰ってきてくれ~」
☆彡☆彡
「それでアヴァロン商事の令嬢のセイラさんと親しくなったんでライトスミス商会に大きな伝手も出来たんだよ」
「しかしフラン、そのカンボゾーラ子爵家の令嬢とライトスミス商会が繋がらんのだが」
「父さんでも知らないか。実はあまり知られてないけれどカンボゾーラ子爵様はアヴァロン商事の会頭なんだ。その上そのアヴァロン商事の経営権の半分をライトスミス商会が持っているんだよ」
「一体カンボゾーラ子爵家の令嬢って何者だ?」
「セイラさんはゴルゴンゾーラ公爵令嬢の従姉だそうで、ロックフォール侯爵家の令嬢とも親しいみたい。それにライトスミス商会の番頭格の娘が平民寮にいるんだけれど、それがあのウワバミのエマさんなの。エマさんとセイラさんとは親友と言うより姉妹みたいな関係ね。その上そのライトスミス商会のエマさんがあの聖女ジャンヌ様と同室ですごく仲が良いみたいなのよ」
「よくやった、フラン! 絶対そのご令嬢の人脈を手放すんじゃないぞ。その人脈だけでモンブリゾン商店の王都進出も可能じゃないか」
「ただね、少し気になるのが居てね。ジャンヌ様の周りでオズマ・ランドックって言う北部の商人の娘とか言うのがウロチョロしてるんだよ。北部商人なのにジャンヌ様に取り入ろうとしてね」
「分かった。オズマ・ランドックが何者か判るかどうかしら知らねえが調べておいてやるよ」
☆彡☆彡☆彡
「本当にお姉様のバカさ加減には辟易するのだわ。脂っこい料理を有難がって、王都の貴族の食べている豚の丸焼きだとかホロホロ鳥の丸焼きだとか鴨肉の炙りだとか太るだけなのだわ」
「そう言うお嬢様だって、炙り焼きのタルタルソース添えは好物だろう」
「私は蒸し鶏を炙るのだわ。お姉様は無条件で王都やハッスル神聖国の流行を一番と考えている所が浅はかなのだわ」
ファナお嬢様は冬至祭の晩餐の途中で抜け出して厨房にコーヒーを飲みに来ていた。
姉君のイオアナ様のお菓子に付き合っていると胸焼けがするとか何とか云ってマドレーヌを食べながらブラックコーヒーを飲んでいる。
「まあ、イオアナ様は少々ふっくらなさってらっしゃるけれど…」
「はー? ふっくら…物は言いようね。あんな体型では体を壊してしまうのだわ。私がいくら言っても大量の砂糖と蜂蜜を塗りたくったパンを絶対やめないのだわ。クレープだってそう。焼いたフルーツを乗せるだけで十分甘いのにその上に蜂蜜やシロップを流さないと我慢できないのだわ」
「甘さに慣れてしまっていらっしゃるんだろうね」
「何か良い方法はないものかしらね」
昔からファナ様が散々煽って来たのでその反発が大きいのか、イオアナ様はファナ様の言う事にことごとく反発するんだよな。
さすがにファナ様も反省してイオアナ様の体型を心配しているようだけれど。
「野菜のグラッセとか蒸し料理とかさっぱりとした料理方法を考えてみますかね」
「それは良いのだわ。野菜のグラッセは私も興味あるのだわ。ニンジン以外でも考えてみるのだわ。出来れ一番に私に持ってくるのだわ。ザコの作る料理は私が最初に味見するのだから」
☆彡☆彡☆彡☆彡
大きな食卓にはホロホロ鳥の丸焼きが幾つも並び、果物も山と積まれている。北の海から直送されたサケやニシンのパイ包みや子豚の丸焼きも並んでいる。
ワインも何本も開けられて、ブランデーやカルヴァドスのデキャンタ―も置かれている。
宴席に饗されたそれらの御馳走は大半が食べ残されていた。
椅子にはでっぷりと肥えたシェブリ大司祭とその妻たち、シェブリ伯爵と妻たちがカルヴァドスの杯を重ねている。
その中で共に座る異母兄弟たちを見ながらアントワネットはボソリと不満を口にする。
「これだけ並べてもあのファナ・ロックフォールが作らせた焼き菓子には劣るわね。忌々しい事」
「おや、お前はロックフォールのはねっかえりと交流が有るのかい?」
「違うわお父様、あのセイラ・カンボゾーラが持ってきたのよ。なんでもあの娘、ジョバンニ様を足蹴にしたとか踏みつけたとか良からぬ噂を聞いていおりますわ」
「ジョバンニ殿も気概の無い事だ。父君のペスカトーレ枢機卿や妖怪のような教皇猊下に比べれば御し易い愚物ではあるがな」
「ユリシアとクラウディアには言い含めておりますが、ユリシアがセイラ・カンボゾーラに殴られたとか。下賤な成り上がりものは始末に負えませんわね」
「その娘、カマンベール子爵領の金鉱の一件にも噛んでいるようだな。どうもあの鉱脈も見込みが薄いようだし思案のしどころだが…あの娘もカンボゾーラ子爵家も目障りだな」
「あら、報告に上がった管理官は黄金が出たと申していたのではなくって?」
「功を焦った文官や管理官どもと本職の調査員の言葉とどちらに信を置けばよいと思う? 功を焦るならそのまま死んでくれればカマンベール子爵家の非を責められたものを」
「あら可哀そう。まだ雪山で籠っている文官や管理官も居るというのに」
「バカな奴らだ。下山してカマンベール子爵家に管理を任せておけば付け入る隙もあったものを。おまけに馬鹿正直なマイルス次席武官まで見張りに付けておるのだ」
「冬山なら凍え死んでくれれば宜しいのにね」
「マイルスがそんな事はさせないだろう。ルシオ・カマンベールがマイルス次席武官にあの二人の監視を押し付けおったそうだからな。食料と燃料はたっぷり準備しているようだし」
「これもセイラ・カンボゾーラの?」
「さあな。ただ事故の発生時に居たそうだから何も知らない訳では無いだろう」
「そうですか…。王都に戻れば何か手を打ってみましょう。クロエ・カマンベール共々目障りになってきましたから」
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