第二章 王立学校 一学年
第0話 オーヴァーチャー
死にたくない。
生まれたばかりのこの子を残して死にたくない。
愛する人と離れたくない。
幼いころから親から引き離されて、自分の意思とは関係なく道具のように使われて。
だから愛するものを得た今、これを失いたくない。
この子が成人するまで、いえ十年で良いから一緒にいたかった。
愛する人とこの次は幸せに生きたいと願う。
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長く生きたと思う。
悲しい事も辛い事もいっぱい有ったけれどこうして終わりを迎えると幸せな人生だったんだと思える。
「ばあちゃん、死んじゃイヤだ」
「そんなこと言わないで。必ず別れは来るんだから」
「お母さん、でもまだ早すぎるよう。もっと百を超えて生きる人も沢山居るんだから」
「でもね。もっと若くして死ぬ人も沢山いるんだから。私は充分。子供や孫に囲まれてこうしていられるんだもの。幸せだった。満足してる」
目の前が段々と暗くなって皆の顔が良く見えなくなってきた。
泣かないで、笑って送っておくれよ。
「本当は私はもっともっと早くに命を無くすところだったのよ。それがこうしてこの年まで生きれたんだもの、これ以上望むのは贅沢なのよ。次に生まれる時はそれに報いられるような人生を送りたいな」
さようなら、みんな。
そして私をこれまで生かしてくれた人たちにありがとう。
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