円 アルファ

「進め。我らの鉄騎は世界を踏破する。我らは神の軍。ゆえに不敗なり。異教徒は浄化する。存在すべきでない物は浄化せざるを得ない。異教徒に死を」


 群衆は騒ぎ立て、復唱する。


「異教徒に死を、異教徒に死を、異教徒に死を!」


 簡易な演説台の上に立つ人は顔を引き締めたまま、テントに戻る。緊張か興奮かは分からないが震えを伴い、ゆっくりとテントへ向かう。その姿は神の使者のあるまじき姿ではあるが興奮している群衆はそんなことには気が付かない。


 *****


 兵士が準備を終え、行進する。異教徒の町へ。

 異教徒の軍は抵抗虚しく、神の軍が持つ攻城兵器に敵わず。敗北し城門がこじ開けられる。


「異教徒に死を!」


 と叫ぶ軍勢は士気高く、人を見るなり切りかかる。

 市街戦に入り、地理に熟する市民に理があるはずだが、火が逃走経路を塞ぐ。神の軍は手当たり次第略奪、放火、殺人をする。

 市街は燃え尽きる。


 *****


 逃げられた。人数こそ少ないが逃げられた。

 父は町の仲間とともに火の海に葬られたのだろう。

 しかし、母と姉は生きている。母の中に弟もいる。

 逃げ切るんだ。

 私は馬に鞭を当てた。


 *****


 神の軍は行進を続ける。次の異教徒の町へ。神のいる所へ。

 が、異教徒もただ死を待つものではない。どこから天の火を持ってきたのか?

 黒い筒に入れて、円形の球状物を打ち出す天の火。

 黒く粘りの強い燃える液体。

 しかし、我らは神の軍。行進せよ!


 *****


 神の軍の大半は炭となり果てた。

 どこからは分からないが王は吹き出す火と燃え尽きない黒い水を手に入れた。

 攻撃には使いづらいが防衛時には絶大な効果を発揮した。

 そして王は我らの街を滅ぼした異教徒を討伐したいと思った。

 王は徴兵をした。私は父を思い、応じた。

 二度と異教徒がこの土地を侵さないように、異教徒を皆殺しにせねばならない。と。

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