第2話 セフレに恋した私はセフレ失格
それから二日後、また彼から連絡が来る。
彼『明日は暇してる?』
私『明日もお仕事なので夜なら暇です』
彼『ならまた会いたいから家に来てよ。何時なら家に来れる?』
私『明日も八時なら大丈夫です♡』
どうせ辛くなるのが分かっているのだから、この関係を直ぐに断ち切るべきなのに、好きな彼に会いたくて断れなかった。
彼女になれなくても、少しの間一緒に過ごすことが出来るのならそれで良いと思い始める自分がいたのかも知れない。
会えばいつも通り彼は私に優しく接してくれる。
会話はそこそこで、じっくり沢山話すことはないけれど、彼は時々私に狡いくらいの優しい顔を覗かせるのだ。
そんな日々を過ごすこと一年······。
私は彼に何を期待しているのだろうか?
彼には大切にしている彼女がいて、私とはセフレの関係が続いていた。
私の誕生日が来ても当然彼からのプレゼントは無く、クリスマスになっても何もプレゼントは無い。
其れは当たり前のことなのに、彼にとって大切な存在ではないのだと実感させられてしまうから、何かを期待している私にははちょっぴり寂しくて、一人で過ごすのが辛かった。
それでも、彼の誕生日とクリスマス近くで買ってきたスイーツをプレゼントしたら少し迷惑そうにしながらも彼の優しさから受け取ってくれた。
その後、スイーツの感想は聞かなかったので、捨ててしまったかもしれないのだけど······それだけなのにちょっぴり嬉しくなって心が踊ってしまう私は間抜けなのかもしれない。
──セフレになって一年。
私は今日もセフレとして彼の家に向かう。
会話も早々に雰囲気などなく抱かれるだけの関係。
もっと続いていいて欲しいのに、願いは叶わず早く終わりが来てしまう。
でも、今日の私はちょっと違った。
「ねぇ、今日は泊まりたいな」
勇気を出してそう告げる。
やっぱり彼は迷惑そうな表情をしているのが顔を見るだけで分かった。
暫く二人の間に沈黙が続く······。
「ん、良いよ······」
彼は静かにそう答えた。
本当は迷惑何だろう、私との目的が終わったのだからさっさと帰って欲しいに違いない。
「ありがとう」
私には彼の気持ちを察することが出来たけど、今日はどうしても帰りたくなかったので帰らなかった。
夜は一緒のベッドで横になる。
最初腕枕をしてくれる彼にくっついていたのだけど、腕が痛いだろうと思いそっと腕を退かし腕にくっついて寝ようとした。
でも、彼のことが気になり中々寝付けない。彼も私と一緒に横になっているけど寝付けていないのが分かる。
暫くすると、チラッと此方を確認するのがわかり、狸寝入りをしていると、彼はそっと私の頭を撫でてからベッドから出てドアを開けどこかに出掛けて行ってしまったらしい。
ガキの閉まる音だけが静かな部屋に響いた。
やっぱり虚しい。
泣きそうになるのを堪えながら、結局一睡も出来ずに朝を迎えると、また鍵が空く音が鳴り響き、彼が帰って来るのが分かった。
布団に顔まで潜り寝たふりをする。
キッチンから、彼が何やら料理している音が聞こえてきた。
「おはよう」
「おう、おはよう。起こしちゃったみたいだね」
「何してるの?」
「朝食作り。簡単な物しかないけど、お前の分も作ってる」
「ありがとう」
「良いよ、別に······今日は仕事あるから、これ食べたら帰りな」
「うん、分かった」
やっぱり彼は私に優しい。
でも、昨日彼は何処に行ってたのだろうか? 私は一睡も出来ずに朝を迎えたけど彼は寝たのだろうか?
気になって仕方がない。
テーブルに並べられた朝食、トーストにインスタントのコーンスープとスクランブルエック、二人で顔を合わせて食べるけど、昨日のことは何も聞けなかった。
そのまま無言で食べる朝食。
彼女だったら、もっと楽しく会話しながら食べるのかな? そんなことを思いながら食べ終わる。
「ご馳走様、食器洗おうか?」
「嫌、良いよ大丈夫。支度出来たら帰って」
「うん······分かった」
片付けを断られて寂しい気持ちになったのに、帰り際、笑顔の彼が頭を撫でてくれた。
······やっぱり狡い。
私はセフレとして失敗している。
どうしてこんなに彼のことが好き何だろう?
彼に恋心を抱いてはいけないのだと分かっているのに······。
──二年目──
彼『明日は暇してる?』
私『うん、夜なら大丈夫』
彼『何時頃来れる?』
私『また八時かな♡』
こうしてセフレとして失敗した私だけど、二年目の今も彼に恋心を抱いたまま、今もセフレとしての関係は続いている。
セフレに恋した私はセフレ失格かもしれない 東雲三日月 @taikorin
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