セフレに恋した私はセフレ失格かもしれない
東雲三日月
第1話 セフレに恋した私はセフレ失格
私はセフレだ。
でも恋をしている。
友達と飲みに行くバーにたまたま一人で行った時、たまたま一人で来ていた彼と出会った。
彼は本当は彼女と来る予定だったらしい。でも、彼女に予定が出来て会えなくなってしまったのだという。
私は彼の爽やかな振る舞いと優しい笑顔に惹かれ、一瞬で好きになった。そう、一目惚れ。
「今日暇してる?」
「暇······暇してますね······」
何故か分からないけれど、暇だと答えてしまった私は、そのまま誘われるがまま彼の家に行くことになる。
そして、そのまま躊躇することなく彼を受け入れ男女の関係になった。
彼女がいるのを知っているし、期待していた訳じゃないけど、心の何処かで何かを期待していたと思う。
「あの······遅くなっちゃったんで、その······」
「ごめん、それだけはごめん、明日は彼女が朝から来るってさっきメールあったんだ」
「······」
「あ、もし良かったらまた会わない!?」
「······はい」
「良かった。なら、連絡先交換しよう」
その日、何かを期待していた私はそのまま彼の家に泊まることは無く、タクシー代を出してもらい家に帰った。
やはり、私は彼女には勝てないのだろう。
そんなこと最初から分かっていた。
分かっていたけど、でも······。
帰り道、タクシーの中で静かに涙する私。
連絡先を交換したけど、次は会うのを辞めよう。手に持っているスマホを見つめながらそう心に違った。
次の日の夜、彼からメールで連絡が来る。
彼『明日は暇?』
私『仕事あるので夜なら暇です』
彼『何時なら家に来れそう? また会いたい』
私『8時くらい』
彼『なら、待ってるから』
私『はい♡』
もう彼とは会わないと誓った癖に、また会いたいの文字を読み、あっさり誓いを破り捨てた私。
無駄なことなんだと分かっていても、朝からバッチリ可愛く決める。
仕事先で先輩から彼氏でも出来たんじゃないかって疑われたけど、違うと答える。
そう、彼は好きな人だけど、彼氏なんかじゃないから期待してはいけないのだ。
仕事が終わると、コンビニにより美味しそうなスイーツを二つ買い、彼女でもない癖にウキウキしながら彼の家に向かう。
「こんばんは中入って」
「こんばんは」
狡いくらいの笑顔で私を中に出迎えてくれた。
「あの、これ買って来たんだけど······」
スイーツを渡すと、彼は受け取った袋を即テーブルに置いた。
一緒に彼の部屋のベッドに座る。
「良く来てくれたね。ありがとう」
そう言いながら頭を撫でられる。
何だろう······ちょっと嬉しい。
ところが、もっとゆっくり好きな彼と話がしたかったし、スイーツも一緒に食べたかったのに······会話も早々にそのまま彼に押し倒されてしまった。
······終わってから、何だか寂しくなって泣いてしまう私を、彼はとても面倒くさそうな顔で見つめている。
彼に迷惑をかけたらいけない!! そう思った私は、其れからすぐ泣くのを堪えた。
分かっている。
私は彼女じゃないってことを。
分かっている。
私はただのセフレだってことを。
私が泣き止むと、また頭を撫でてくれた。
ちょっと狡い!! そんなことされたら期待してはいけないのに何かを期待してしまうから······。
其れから一緒に無言のまま私が買ってきたスイーツを食べる。
食べ終わると彼からまた連絡すると言われ、私はコクリと頷きながら彼の部屋を後にした。
帰り道、何だか虚しくなる。
彼女になれないことくらい分かっているのに、恋したセフレは辛いのだ。
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