第一章 010 石器

どんぐりで腹を満たし、樹皮の鍋でお湯を沸かしながらこれからのことを考えはじめる。

まだ日は高くまだまだ暗くなりそうにはない。

これから何をするかではなく、どこを節目とするかを考えなければならない。

最終目標は人のいる場所…自分の家に帰ることだ。

だが、今それを行うには何が必要でどうすればいい?


水が沸き熱湯が冷めるころには必要なことが大体見えてくる。

それらを枝で地面に書いていった。


・食料の安定供給または保存食

・水の持ち運び


今思いつくのはこの二つだった。

このままやみくもに行けば次こそ死んでしまう。

人里に行くにしてもビバークは必須だろう。

その時に食べる携帯食料の作成、そしてそれを作成する間の食料が必要だろう。


水に関しても同様で沢を下るには崖を迂回する必要があり、水が手に入らない可能性がある。

それ故に水を携帯できる水筒が欲しかった。


水は少なくともここにいる限りは心配する必要はない。

そうすると食料を安定的に手に入れその後、保存食を手にする。

そうした後は…


「帰る…」


自分の家や家族のことは思い出せないが、元居た場所に帰りたいと思うし、少なくともこんなところで死ぬつもりはさらさらなかった。


その場に立ち上がり沢へと歩を進める。

ここに来た理由は石器づくりであった。

今持っている石器のナイフはお世辞にも出来がいいとは言えない。

そこでしっかりとしたものを作ろうと考えていた。


手ごろな石を見つけ、今回は土台の石と手に持った石を挟むように打ち付ける。

そうすると小さく石が剥離していく。

剥離した小さな欠片はポケットに放り込んでいく。

そうしてある程度形を整えたらまた別の石を探し始める。


しばらく歩き回って探すとお目当ての石を見つけた。

その石は大きく平らな石で沢の近くに転がっており、それを見るとつい顔がにやける。

その平らな石に沢の水をかけ、先ほど形を整えた石をこすりつける。

そうすると白い泥のようなものが面白いくらいに出てきた。

水でそれを洗い流したりして繰り返すとそれは完成した。


持ち手らしき部分はごつごつしているが刃の部分は別だった。

刃は石で作ったと思えないほどなめらかに仕上がっており、刃を立てて覗き込むと微かに貝のような形になっていた。

その石器の持ち手にツタを巻き付ける。


石器のナイフができあがた。


前回作ったものとは違い耐久力、切れ味も向上しており、見た目からして全くの別物であった。

新しく作ったナイフを片手にツルを集めていく。

ツルはたくさんあるのだが数が欲しいのでそれなりの範囲を歩き回り集めていった。

型にツルを巻き付けながら森を歩くのはしんどいが文句を言っても仕方がないので黙々と拠点に運んでいく。

それが終わると再度どんぐりを拾い、水を沸かす。


少しずつだが確実に目的へと近づいている。

そう思うと気力が内側から湧いてくる気がした…。



※役に立つかわからない知識※ーーー


丈夫で切れ味のいい石器が欲しいなら研ぎましょう。

切れ味が良くなるだけでなくハマグリ刃に加工することもできます。

よく知らない方はハマグリ刃は両刃の縄らかな刃とでも思っておけばいいでしょう。

こうすることで、次回研いだり作り直す時間を節約するほか作業効率も上がります。

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