第一章 008 腹痛
突然の腹痛により目が覚める。
腹を抑えつつあたりを見渡すとまだ暗く、朝はまだ来そうにない。
近くにある薪を火にくべる。
腹はどんどんと痛み、我慢ができそうにない。
「~~~~~~~!」
あまりの痛みに声にならない悲鳴を上げつつ、再度あたりを見渡す。
もう選択肢などないに等しかった。
火の明かりが届く範囲ぎりぎりまで行き、ズボンを下す。
腹の中に蛇が入り込み暴れているのではないかという痛みと気持ち悪さが襲い…
「ウボェッ!!」
口から
嗚咽の声が止まらずボタボタと音を立てて地面に内容物をぶちまけた。
口の中が酸っぱくすぐにでも沢へと向かいすすぎたいが暗闇がそれを許さない。
そうこうしていると下の方にも限界がきていた…
ーーーーーー
ーーー
ー
「惨めだ…」
シェルターの中で
外で催したのもそうだが、あれから何度か吐き気と便意に襲われ体力を奪われ続ける。
この状態に陥った原因はすぐにわかった。
生水である。
一度サワガニが原因かと思ったが念入りに火を通したので水があたったのだろう。
なぜあのとき何も考えず水に食いついてしまったのか。
何度もあの時のことを思い出して後悔したり、もしもあの時こうしていればということを考える。
横目で火を見ながら朝を待ち続けることしか今はできることがなかった。
朝になるまで何度か便と吐きに行かされ、身体はボロボロになっていた。
大量に水を消費したので水を飲まなければ危険な状態だとわかっているが、そのまま沢の水を飲むわけにもいかない。
沢の水を沸かして飲めば大丈夫かもしれないが、沸かすための鍋がなかった。
身動きが取れず水も飲めない。
背筋が凍り、体が震える。
寒いわけではない。
ただ自分の死がすぐそこまで来ている予感がして怖いのだ。
もうすべてを諦め、目を閉じようとした瞬間、
【頭の中で糸が一本張られた感覚がした。】
頭の中で現状を打開する方法が急に思い浮かぶ。
力が入らない体に鞭を打ち、なんとか立ち上がる。
ふらふらとした足取りで一本の木に向かって歩き、寄りかかった。
その木に対して石のナイフを叩きつけ始める。
木に切り込みを入れ、そこに棒を差し込み、てこの原理で樹皮をはがす。
そうすると音を立てながら、切込みに沿って樹皮がはがれ地面に落ちた。
腹が痛く内股になりつつ樹皮の荒皮をはがすと、ツルンとしたシートが出来上がる。
火で樹皮をあぶりながら曲げて箱を作りツタで固定する。
そうすると水漏れしない鍋が出来上がった。
沢の水を汲み、先ほど作った樹皮の鍋を火にかける。
樹皮は燃えることなく、鍋の役割をこなしてくれていた。
しばらくすると鍋の水が沸騰しはじめるが、すぐには飲まず、さらに火にかける。
十分に水に火を通したら火傷しないように火から離し冷めるのを待つ。
腹の痛みと吐き気はまだ収まりそうにない。
これから先どうなるかという漠然な不安が背中にのしかかってきた。
※役に立つかわからない知識※ーーー
樹皮は自然の中で手に入る水を通さない材料の中で非常に有用です。
水が入っている容器ならば紙でも燃える心配はありません。
ただし注意点があり、夏頃の樹木でないと樹皮をはがすのに手間取ってしまうかもしれません。
樹木は冬の時期に休眠し、夏の時期に水を貯えます。
水分をたっぷり含んだ樹木の樹皮のほうがむきやすいですが冬の樹木は逆に向きずらいです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます