第52話 やっぱりなんでもない
ずっとモヤモヤしている。いったい何を話すかとずっと考えてる。告白してくるんじゃないのかと考えてる。でも、そんなモヤモヤは終わるはずだ。なぜなら咲希さんと一緒に今帰っているからだ。しかし、今のところ何一つと喋ってくれない。いったいどういうことなんだ?
「咲希お姉ちゃん」
反応がない。顔がピクリとも動かない、まるで人形のようだ。息苦しい、なんとか話してくれないとツラい。そう思うと咲希さんはピタリと足を止めた
「どうしました?」
「黙っていても進まないよね。私言うよ?準備はできてる?」
「はい、いいですよ」
「私ね、まーくんのことが....へっくしょん!へくしょん!ゲホッゲホ!」
えぇ!?そんなギャグみたいなことある!?肝心なところで言わないとかどういうことなんだよ!そこはなんとかいって欲しいとこであるな
「大丈夫ですか!?」
「だから、そんゲホゲホッ!ゲホ」
「どうしました?」
「急に咳が止まらなくて。そのなんでもない」
なんか喋ってくれよ!急に口を閉じないでほしい。大事な話があるっていうのから身構えていたのが意味なくなるじゃないか!なんとか喋ってほしい
「それで大事な話って」
「もう言えない。口が動かないけどまーくんは私が話す内容が分かるはず。まーくんは言わないで!絶対ね!?」
「うん、分かったよ」
「素直なところ大好きだよ?明日は言えるように頑張る」
自信満々な顔で言ってるけど、正直今すぐ言って欲しい。いつまで俺はこの心の苦しみを味わないといけないんだ。どうしてなんだよ
家に帰った瞬間、部屋にすぐさま入ってベットに飛び込んだ。どうしてだ?つらい
肉体的なつらさじゃない、精神的なつらさだ。でもこの辛さは今までに味わったことのない辛さだ。ドキドキとしてなんだよこれ!感情がぐしゃぐしゃになってわからなくなる。どうしてなんだよ
「訳わからないよ」
悲しい。けど、これは期待した自分が悪いんだ。咲希さんが悪いわけじゃないんだ
空回りをした自分が良くないんだ。バカだ、なんでそんな期待をしたんだ
感情が爆発しそうだ。俺はどうすればいいんだ?涙がポロポロと出てきた
いつぶりだろうか、俺がなんで泣いているんだ?分からない
「なんでだよ、うわあああああああ!」
ベッドに叫んだ。いままでイチバンツラいかもしれない貧乏で苦しかった時よりもツラい。恋ってこんなツラいんだ。体を動かさなくて何もしなくてもツラい
恋って恐ろしいものだ
体が重たい。しまった!どうやら寝てしまったようだ。咲希さんに怒られるぞ!
すぐに急いでリビング向かった。すると咲希さんが食卓に座っていた。どうやら今日は鍋みたいだ
「起きたんだね、まーくん」
「あぁ、そうですね」
「ゆっくりしてなよ。ほら座って」
「ありがとうございます....」
今日の咲希さんすごく優しい。なんでだろう?いや、いつも優しいけど今の咲希さんはとびっきり優しい。これはどういうことなんだ
「火があると暖かいよね」
「そうですね」
「ごめんね」
「え?」
「私があの時に上手く言えなくてごめんね。だから苦しめちゃったと思う。だから泣いていたんでしょ」
複雑な気分だ。音が遮られてるかと思っていたが、聞こえていたとは恥ずかしい
弱音を好きな相手に聞かれるとか最悪だ。このまま死にたいくらいだ
「でもね、まーくんは何一つ悪くないんだよ?」
「そうだとは思わないです」
「なんで?」
「だって、自分がヘタレだからですよ。こんなことできないなんてヘタレです」
ヘタレだよ。こんな告白ひとつ出来ないヤツなんてヘタレだ。咲希さんが悪くないんだ。だってこんな弱いヤツじゃダメだ
「あのね、一つ言っていいかな?なんでも男がやるって考えは古いと思うんだ。あと私もつらいんだ。まーくんがツラい姿を見たくない。まーくんはずっとニコニコしてほしいの。言う必要はないかもしれない、だってもう伝わってるかもしれないから。だけど、しっかりと顔を向き合ってまーくんに伝えたいんだ。明日には言うからもう少しまっていて?」
咲希さんもやっぱりツラいんだな....でも本当に明日で終わると言うならばなんというか頑張れる気がしてきた。俺もしっかりと頑張らないとな
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