東京迷宮(ラビリンス)

亀様仏様

第1話冒険科に行こう!

2025年、東京都板橋区役所前駅前。

「住民票良し!戸籍抄本良し!印鑑良し!忘れ物なし!」


電車から降り手提げ袋から取り出したクリアファイルに挟んである必要書類を呼称確認し、改札から出て意気揚々と目的地へと向かう。


とは言っても徒歩1分と掛からない目的地はそこにあった。板橋区役所。

そう!今日俺は此処で探索者【サーチャー】に登録するんだ!!


4年前のあの日、全世界を巻き込んだ未曽有の大災害により日本だけでなく世界をも激変させた。2021年突如として現れた超古代遺跡迷宮のそれは正体不明のウイルスを全世界にばら蒔き、世界総人口の1割がウイルスにより犠牲になった。

勿論俺も体がウイルスに侵され約1週間程生死の境をさ迷った。


また現れた超古代遺跡迷宮から這い出た異形の怪物達により街中だけでなく全世界がパニックへと陥った。日本では自衛隊は勿論の事、警察、消防迄も総動員し、これに対処したが、民間人への被害も相当な物だったと当時の新聞で知った。

現在は出入口はゲートと呼ばれる物が設置され管理が厳重にされており、何時何が起こっても良いように駐屯地が置かれている。

入れるのは限られた職員と俺がこれから登録する探索者【サーチャー】のみが許可されている。


意識を取り戻した頃には病室のベッドに横たわりにエクモと呼ばれる人工呼吸器は勿論の事、両腕には点滴、下にも管が通されている状況だった。気がついた時にはそんな状況だった為、最初何が何だか分からず頭の中が混乱し錯乱した様で即座に鎮静剤を投与され、また深い眠りについた。と後で冷静さを取り戻した時に当時の看護師さんからそう説明された。


あの時は暴れてごめんなさい。


その後、集中治療室から解放されたものの、一般病室には移されず感染患者専用の隔離室へとベッドが移された。

隔離室へと移された後も定期的な検査を受けた。主に採血やレントゲン撮影、CTスキャン撮影等だ。

また、ずっとベッド上での生活だった為、体力、筋力共に著しく落ちていた為、回復する為のリハビリを受けてなんやかんや退院するまでに2ヶ月は掛かったかな。


入院中、面会は謝絶だった為、暇をもて余していた俺は、携帯でずっとニュースばかり観ていた。


ウイルスが発現されてから全世界の研究者が血眼になって原因の究明と特効薬の開発に勤しんでいるとニュースでやっていた。


またウイルスは世界総人口全てに感染しているが、発現するのはある一定の条件を満たした人にのみ発現すると発表していた。

つまり、全世界の人達全てがキャリアー【保菌者】ということになる。


只、その条件迄は何かはとは明言されていなかった。

発現した場合の致死率は約90%。

俺はどうやらその10%の確率をもぎ取ったらしい。


サイトやSNS等は日夜その話題でお祭り騒ぎの状態でゴシップや眉唾の治療法や詐欺が横行していた。


そんな毎日を過ごしていたある日、SNSである一文に気になる事が書いてあった。

その内容とは・・・スキルが発現した。との事だった。


投稿した人は俺と同じ様にウイルスに感染し、生死の境をさ迷い生還した人だった。


SNS上での発言を皮切りに世界各国から同じ様な投稿が相次ぎ炎上していた。


俺は直ぐ様スキル関連の情報を片っ端から読んでいった。何時?何処で?どんな風に?俺にも発現する可能性があるのか?


俺は生還した喜びよりも良くあるラノベの異世界物の様な能力が手に入るのかとワクワクが止まらなかった。


しかし、待てど暮らせどスキルが発現する兆候すらなく無為に時だけが過ぎていった。


だが、ある時ふとした事が切っ掛けでスキルが発現したのだが、それはまた今度話をしようと思う。


今は、ここ区役所で探索者の登録を済まさなくては!


俺は1階にある総合受付で登録場所を聞き、登録場所のフロアへと向かった。

【冒険科】と書かれたブースへと向かい、整理券を発行してもらい、自分の番号が案内されるその時まで待っていた。


待っている間、辺りを見渡すと老若男女様々だ。1番若いと言っても探索者の登録年齢は18歳からと法律で定められているから俺と同じ18歳なんだが。1番歳がいってそうで40歳越えてるかどうかの人がチラホラ見えるだけかな。


2021年超古代遺跡迷宮出現により国会では新たに法律が制定された。

その名も超古代遺跡迷宮に関する特別措置法通称【迷宮(ラビリンス)法】だ。


この迷宮(ラビリンス)法をざっくり説明すると、

一つ、探索者は新しい職業として認知する事。

一つ、迷宮(ラビリンス)に入る事が出来るのは有資格者若しくはそれに準ずる職員である事。

一つ、資格取得条件として覚醒者である事、また18歳以上である事。


ここで言う覚醒者とはスキル発現者の事を指している。

等々細かい規定は他にあるが、ざっくり説明するとこんな感じの法律が制定された。


最近では探索者育成に向けた専門学校なんかも創立されたみたいだ。


4年も経つと色々変わる物で探索者向けのSNSなんかもあり、AdventurerTube略してアドチューブなんかも動画配信され人気を博していたりする。


トップランカーの探索者が配信してる動画なんてそれこそ何百万人も登録したりして、それこそ視聴数や案件、イベントとかで億を稼いでいる人がいるとかいないとか。

正に迷宮(ラビリンス)ドリームというやつだ。


と、言ってる傍から動画を撮っている奴なんかがいる。


俺も後で動画配信しないと・・・。


折角助かった命、発現した力、誰にでも起こり得る事だが、今はこの力は自分だけの特別な力だ。試さなくて何時試すというんだ。過信していると思われるかもしれないけれど、俺は何かにきっと選ばれたんだと思っている。確信してる訳じゃないけど、そう思いたい。だから自分の力で必ずビッグになってやる!


と、意気込んでいると機械音声で自分の番号が呼ばれたので、いそいそと目的の番号の窓口迄移動した。



























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

東京迷宮(ラビリンス) 亀様仏様 @Kamesamahotokesama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ