第6話after 奏音side〜②
僕はマイスターの提案を聞いて、しばらくずっと頭を悩ませていた。
たしかにこの提案を呑めば、僕達はずっと一緒にいられる。でも、これが華凛にとって本当に良いことなのだろうか……、ずっと答えが出ないままでいた。
すると、こんな僕の姿を見かねたのか声をかけて来た者がいた。
「よお! 一体、どうしたんだ?」
「ディア……」
話しかけてきたのは昔に僕の指導死神だったディア。彼は名前を覚えてはいるものの自身で名乗ってはいない、だから僕が勝手に呼んでいる。
少し前までマスターの称号を持っていたが、ある時に剥奪されてしまい、今では一般の死神に混ざって仕事をこなしている。
僕は、今回マイスターに言われたこと、華凛に対しての思いを全てディアに話した。
そして返ってきた反応は予想をはるかに超えていた。
「そうか……、お前もそうなったか〜。」
(お前もって、もしかして……)
思いついたことは大正解だった。
そして、ディアはその時のことを語ってくれた。
「俺さ……、彼女のこと本気で好きになっちまって、ずっと一緒にいたいって互いに願ってた。でも、いられる方法がなくてさ……、悩んだ末にマスターの権限を悪用した方法で一緒にいられるようにとしたんだが……、結局失敗しちまって彼女は旅立ち、俺はマスターを剥奪、なかなかすごいだろ(笑)。」
正直、言葉が出なかった。華凛に、死神になれる素質がなかったら自分もこのような道を選んでいたかもしれないと本気で思った。
「おいおい、そんな卑屈な顔するなって!!(笑)。」
そんな中でも、笑いかけてくれるディア、やっぱりこの人が僕の指導者で良かったと改めて思った。
そう思った時、最後にディアからこんな言葉を貰った。
「奏音、お前のことだから、相手にとってマイスターに言われたことが幸せに繋がるのかとか彼女にとって本当に良い選択なのかとか考えてるのかもしれないが、これだけは言っておく、彼女がどんな状況になってもお前と一緒にいたいって言ってくれたら、奏音は全力でサポートしてやれ!。俺と違ってお前は冷静な考え方ができる、相手の幸せを優先しすぎるぐらい優しさがある……。俺が言えるのはこんだけだ、まぁ称号を剥奪されたやつの言葉だと軽く思っていてくれよ。」
そう言って、ディアは「じゃあな」と手を振ってからいなくなった。
少し考えて、答えが出た。
最後のこの日、華凛に答えを聞こうと。
そして、いつも通りの時間となり僕は華凛のいる病室に現れた。
「あ、あの……奏音くん……昨日はその…ごめんね、それとありがとう……。」
到着して早々、華凛から謝りとお礼を言われた。
「全然、謝ることなんてないから大丈夫だよ。それに僕もすごく楽しかったから。」
それに対して僕は正直な気持ちで答える。華凛にはやっぱり笑っていて欲しいから、こそだ。
そして、今日が普通に会って過ごすのは最後の日、最後と言ってもいつものように何気ない会話で笑い合いながら時間を過ごしていた。
そんな中で僕は華凛に質問を切り出した。
「華凛、君がどんな状態になったとしてもずっと僕と一緒にいたいって思ってくれるかな……。たとえ今の状況が変わったとしても……。」
聞き方が重いのは理解していた。それでも、華凛に素直な気持ちを聞きたかった。
「う〜ん……、よくわからないけど、私はどうなったとしても、奏音くんと一緒にいたい!! この気持ちは変わらないよ!! 本当だったら奏音くんと同じ死神になりたいくらいに(笑)。」
僕はこの言葉を聞いて心底驚いた。それと同時に喜んでいいのか自分でもわからなかったけど心は喜び、嬉しさに溢れていた。
それからはまた、いつものように会話を続け気がつけば明け方、僕はそこで華凛に
「じゃあ、とうとう明日のあの時間にお迎えに行きます。」と伝えた。
そして死神の世界に戻りマイスターの元へ足を向けた。
「おや、覚悟は決まりましたかな……?」
僕は一呼吸おいてから、
「はい、彼女の死神への転生を依頼します。」
そう高々と宣言した。
〜続く〜
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