第3話 ワケアリ風ヒロイン

 私の朝は早い。



「「「「おはようございます! 瑞希お嬢様」」」」


「えぇ、おはよう。みなさん」


「お嬢様、本日のラッキーカラーの下着です。この中からお選び下さい」


「お嬢様、制服です」


「お嬢様、御髪を整えます」


「お嬢様の寝起きのちょっとアレな息にブレスクリーン的な粒です」


「あなたクビ」


「おぉぉぉぉぉじょおさまぁぁぁぁぁぁ…………!!!」



 私は今日のラッキーカラーである、紫の下着の上下セット(ちょっとゴム伸びてる)を手に取って身につけると制服に着替え、メイドに髪を整えてもらうと自分の部屋を出る。


 そして、学校の廊下の倍はある廊下を進み、朝食の用意してある広間へと向かう。大きな扉を開け、床が大理石で出来た広い部屋の中央に敷き詰められている、六畳分の畳の上に腰を下ろす。

 目の前にはキチンと整えた髭をたずさえてスーツを着たパパ。その隣には下着の上にネグリジェだけを着て、髪の毛がボサボサなままのママ。肩紐がずり落ちて胸が片方出そうになってる。



「おはようございます。パパ、ママ」


「あぁおはよう瑞希。今日も可愛いよ。さて、胸は何カップになったのか『ふっっ!』なブルファァァァッ!!」


「パパも朝からナイスヒゲ&殴られっぷりですね」



 そう声はかけてはみたけど、パパは既にママの拳で畳の上から殴り飛ばされて大理石の上で白目を剥いている。



「みーちゃんおはよ。朝からパパのセクハラごめんねぇ〜? しっかり顎にコークスクリューブロー入れておいたからね?」


「ママ、ありがとうございます。だけどママもちゃんと服着てください。色々とこぼれてます」


「あら? あらあらあら? 涼しいわよ?」


「それなら良かったです」



 これ以上何か言うのは無駄だと判断した私は、箸を持って目の前の朝食に伸ばす。

 今朝のメニューは、パエリヤ、唐揚げ、ボルシチ、キムチに五穀米。

 相変わらずの多国籍朝食。雇ってるシェフそれぞれが出身国の料理を出してくるからこうなるのよね。

 もう慣れたけど。



「ご馳走様でした。では学校に行ってきますね」



 私は箸を置いてメイドが渡してくれた鞄を持ち、広間を出る。そのまま渡良瀬家の玄関──には向かわずにその手前のドアを開け、目の前の伸びる動く廊下に乗るとそのまま運ばれていく。


 外の景色を眺めながら運ばれた先は普通の一軒家。

 ここがの玄関。


 家具も何も無い見た目だけの抜け殻の様な家。

 玄関を開けると朝日が眩しい。

 ここから足を踏み出す事で、私は普通の女の子として学校に向かうの。

 そう……今日も明日も!


 そして私は玄関から飛び出した。



「行ってきまぁ〜ゴフッ!」


「あっ! 高校生のお姉ちゃんごめんなさ〜い! 早く行かないとキラキライケメンのお兄ちゃん見れないの! ばいば〜い! あ、いきなり道路に出ると危ないよ!」


「「危ないよ!」」


「う、うぅ……【急な飛び出し危ないよ!】って看板が見えるぅぅぅ……」



 そして無駄にハモる女子小学生の集団に轢かれた。



 面白いな、もっと読みたいな。などと思ってくれたら執筆の力になります。

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