第33話 「深紅に、おぼれたこともない。文字なんて」詩人になりたいパンダ⑥


『あの人に会いに 穂村弘対談集』穂村弘より

「情がなかったら撮れないよ。情に溺れるなっていうけど、本当は溺れちゃえばいいんだよ。」荒木経惟



★★★

『深紅に、おぼれたこともない。文字なんて』


惑溺せよ、惑溺せよ、惑溺せよ

何かにおぼれ

目の前が深紅になったことのない人間に

なにが書けるというのだろう。


我が融け、彼我のさかいめさえも見失う

波にのまれたことすらない人間に

なることこそ

懼れよ


惑溺がしずみ、

濃紺のとばりが落ちてからしか

この身の内より、取り出せない言葉がある。


肩を裂け

骨を取り出せ

血肉より引き出した宝玉だけが


あなたに伝わる



★★★

書き手のエゴ、というものは

大きければ大きいほどに

書き手そのものを侵食するおそれがあります。

しかし浸食を避けていたら

なにも書けない。

そんな気がするのです。


物を書くということは、

つねにロープの反対側に落ちるリスクを負っている。

リスクを恐れるようになったら、

水ぎわという書き手は終わりだ、と。

そう思うのです。


では。今宵も佳き秋をお楽しみください。

パンダは一人で、着ぐるみの洗濯でもしましょう。

さっき、ネンにチョコレートをなすりつけられたからね(笑)


おやすみなさい。

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