第29話 「指を染める。どこかの積乱雲」詩人になりたいパンダ②

『あの人に会いに 穂村弘対談集』穂村弘より

「草花は何のメッセージも持っていない。けれども、見れば綺麗だから感動するじゃないですか。」谷川俊太郎



★★★

「指を染める。どこかの積乱雲」


空たかく、どこかに名残りの積乱雲。

きみの手は柔らかく、歩くうちにすり抜けてしまいそうで。

たちどまり、しゃがみこみ、クローバーを無造作にむしる。

白い指先が、緑に染まる。草の色がきみの生命線を染めていく。


どうか。

この線は長く続きますように

わたしを。

遺してゆく線ではありませんように。


空青く。

どこかで積乱雲が

夏の終わりを掻きあつめている

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