第28話 「毎晩20:10。名言と、短い詩をお届けいたします。 秋の夜のおともに」

ある日、水ぎわパンダは考えた。

この世には、名言がたくさんある。

そいつを一つずつ拾いあげ、詩を添えてみたらどうだろう。


なぜ。

唐突に詩なのだ、と思うでしょう。

パンダは昔から、詩人になりたかったのです。

リリカルで繊細で、透明なプリズムが危うい均衡で重なり合っているような

言葉が言葉の重みだけでバランスをとって成立しているような。

詩人とは、パンダである(いや、ちがうし(笑))


だから。

しばらくだけ。毎晩20:10に、パンダが出会った名言と、短い詩を届けさせてください。

秋の夜のおともにどうぞ。



★★★

『自分もあなたのように世界の向こう岸に行きたいんです、と。』穂村弘

     『あの人に会いに 穂村弘対談集』 穂村弘



「ひかる言葉は、いつでも向こう岸に」


私とあなたのあいだに 空間があるとすれば

それは広い広い、言葉の河だろうとおもう。

幾千・幾万もの言葉が、静かに目の前を流れてゆく。

かすかにきしみ、句読点と濁点がぶつかり合い

ゆっくりと流れていく。


ひとつずつ拾い

陽に透かし

耳元で音を確かめ

そっと河に戻す。


月が沈み 星が消え

日が昇りかける。


戻ってこられないのならば。

せめて

言葉を


なによりも

言葉を


ただ。

ことばを。

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