トラック6 炎刃全開、最強の騎士

プロローグ

「お、そろそろか」


山中。草木をかき分けながら、50前後になろうかという年齢をした男が言った。その目線の先には、焚火。

パチパチと燃える炎の上には、吊り下げられた箱――所謂、飯ごう炊爨と言うものだ。

男は魚を抱えながら、本日の夕食に心躍らせていた――そんな時であった。


「ん、なぁんだありゃ……」

男が呟く。その視線は空。そこには一筋の光があった。

それは真っ直ぐな軌道を描きつつ、どんどんと高度を下げている。

「隕石か……?」

しかし、男は自分の予想が間違っていたことを直後に理解した。

地面へと近づくにつれ、その姿がはっきりとしてきた。そしてそれがはっきりとわかった時、男は目を丸くした。


「人……だと!?」

そう、それは紛れもなく人の姿をしていたのだ!

人間が空から落ちてくるという怪現象に、男は駆けた。焚火を消し、魚と荷物を持って急ぐ。


「落ちたか!」


彼が発ってからしばらくすると、轟音が響いた。音からして、おそらく落下地点は目と鼻の先。

件の人間が生きている確率は限りなく0に近いが、それでも見過ごすという選択肢は彼に無い。

寄る年波からくる息切れに悩まされながらも、男は走った。そして――


「いた!」

見つけた。大きく空いたクレーターの中心で倒れているのは、若い男。

全身はボロボロで、まるで爆発でも喰らったのかのような傷跡が目を引く。

しかし男の眼には、それよりももっと驚くべきものが映っていた。

それは、青年の傍らに転がる物体。

男は思わず、「ちょ、待てよ……」と呟く。

曲線を描いた刀身を持つ、2対の剣。そしてその1つの中へとはめ込まれた円盤。

男はこれが何であるかを、よく知っていた。

なぜか?その答えは――


「あいつ……メモリアナイツなのか!?」


彼もまた、そう呼ばれる存在であるが故だった――!

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