第2話・二日目

 生き返った国光に、家族は涙して喜んだ。

 号泣した母親は、生き返った我が子を強く抱き締めた。

 生き返った翌日、国光は学校に登校した。

 心配する母親の。

「しばらく、家で休んで」の言葉に心苦しさを感じながらも、国光は登校した。

 なぜか、学校でやり残してきたような気がしたからだった。


 国光が元気に登校すると、クラスメイトは驚いた。

「みんな、心配をかけてごめん」

 クラスメイトは全員、生き返った国光を温かく迎えてくれた。

 特に、一番の親友の兼定かねさだは目に涙を浮かべていた。


 放課後──国光は兼定に呼び出されて、校舎の裏にやって来た。

 この場所は、学校の中で垣根があって遮蔽されているので、人の目は届かない場所だった。

 向き合った兼定が国光に言った。

「良かった国光、本当に良かった」

 兼定の涙目に、国光の心臓がドクンッと高鳴る。

(なんだ? この感覚? 兼定に見つめられるとドキッドキッする?)

 シャツの胸の部分を、ギュッと握りしめる国光。手の平が汗ばんでいる。

 兼定が言った。

「あの日、帰宅する時、下駄箱で『明日、大事なコトを話す』ってオレに言って、小走りで帰った霧雨の日の夕方に。

国光が事故で亡くなったって連絡があった時はショックだった」

 国光には亡くなる数時間前の記憶がない。

(そんなコトがあったのか)


 必死に思い出そうとしている国光に、兼定が訊ねる。

「あの時、言いたかったコトって何?」

 霧がかかったような心で、兼定に伝えたかった言葉を、必死に思い出そうとする国光。

(兼定に伝えたかったコト……ダメだ、どうしても思い出せない……すごく、大事なコトだったようなや気がする)

 苦悩する国光が、気分が悪そうによろける。

 国光が兼定に言った。

「悪い、気分が悪いから先に帰る」

 そう言って、国光は帰宅した。


 自宅の自分の部屋の寝具の上に寝っ転がった国光は、部屋の天井を見上げながら内心呟く。

(オレが兼定に伝えたかったコト……いったいオレは、何を伝えたかったんだ?)

 そう思いながら天井を見上げていた国光の耳に、どこからか声が聞こえてきた。

《あと、一日だ……急げ》

 勢い良く上体を起こした国光が呟く。

「思い出した……兼定に伝えたかったコト……それは」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る