男同士……おまえに伝えたい最後の言葉〔BL〕

楠本恵士

第1話・生と死の境界線〔一日目〕

 国光は、どことも知れない白い霧に包まれた場所に立っていた。

 夢を見ているような感覚の中、国光は誰かと今まで会話をしていた。

「……で、いいんだな」

 姿が見えない声の主に、国光はうなづく。

 声の主の一方的な声が聞こえる。

「三日間だ……それ以上はムリだ、約束を忘れるなよ」

 国光の周囲が、深い霧に閉ざされ。その中に雲の切れ目から差し込む、天使のハシゴのような光りが国光の体を包んだ。


 国光は背中に当たる冷たい金属の感触に意識を取り戻した。

(ここは? どこだ?)

 殺風景な手術室のような場所、消毒液の臭いが漂う部屋。

 国光の方に背を向けた、手術エブロンをした二人の男が、カチャカチャと手術器具を並べながら会話をしている声が聞こえてきた。

「それにしても、事故死した高校生の検死とはなぁ……トラックに跳ねられたのに、外傷がまったくないショック死だったんだろう?」

「死体を見た医者も驚いていたそうだ、事故死した高校生の家族に医学的な見地から、ぜひ検死をさせてくれって頼み込んで。承諾してもらったそうだ」

「解剖して、内臓がどんな状態なのか確認したら縫合して、すぐに遺族に引き渡さないとな……明後日には火葬するって話しだから……それじゃあ、はじめるか」

 振り返った男二人は、検死台の上で目を開けて、自分たちを見ている国光に仰天して腰を抜かす。

「ばかな!? 脳死確定だったのに?」

「生き返った?」


 状況が飲み込めない国光は、男たちに声をかけて上体を起こす。

「あのぅ……ここは?」

 体を起こした国光は、素っ裸で銀色の金属台の上に寝かされているコトに気づく。

「なんで? オレ。裸で寝かされて?」


 男子高校生、国光──【死亡診断書】学校からの帰宅時、信号機が無い横断歩道を横断中に、居眠り運転で蛇行走行してきたトラックに跳ねられ全身強打のショックで死亡。外傷なし。

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