第12話 挨拶なしの別れ
夏が明ける、それと同時に引っ越しだ
まだ、お父さんの姿は見えない
お母さんの片手には携帯電話が
「え!なんで!なんでなのよ!」
お母さんが怒っている
「なんで!迎えに来られないのよ!迎えにくるって言ったでしょ!」
「お母さん、大丈夫?」
「うるさい!」 バシ!
お母さんのビンタが私の頬に当たる
「っん!」
お父さんが家に迎えに来てくれないだそうだ
「くそ!」
お母さんの口が悪くなる
お母さんはいつもこうだ、少し自分の思い通りにならなかっただけでこんな状態になる
ピシ! また叩かれた
「っ!」
頬には涙が流れる
「行くわよ!」
そう言ってお母さんは私を車に乗せる
「ん?」
誰かが通りすがったような…
この時間だとみんな学校に行っているはずだが?
「はやく!」
お母さんが急かす
私は車に乗り、どこかに向かう
5時間後……
新しい家に着いた
前いた家より、少し広い
「お母さん!ここで暮らすの?」
「そうよ、もう少しでお父さんも来るわ」
「うん」
また、しばらく時間が経過して、お父さんらしき人が、家にやってきた
お母さんの態度が急変した
「あなた~、やっと会えたわ!この日をどんなに待ったかしら!」
その後、私は生まれて初めてお父さんの声を聞いた
「お父さん?」
「あぁ、そうだ、お前が俺の子供か…」
「…うん」
この一言で私には嫌な予感がしていた
《この人、なんか怖い》
◆◇◆◇◆◇
次の日ーー
私は新しい学校に転校した
「小鳥遊 琴人です!」
休み時間になると新しいクラスメイトが私の周りに集まってくる
まるで人気者になったみたいだ
その日はたまたま、音楽の授業がありけんばんハーモニカを一人一人、発表することになる
新しい先生が
「小鳥遊さんは学校に来たばかりなので、小鳥遊さん以外で発表します。」
先生がそういうと、周りが演奏を始める、
不思議だ、妙な感じだ!
《音が、全部聴こえる》
私は自分が持っていたけんばんハーモニカを手に取り吹いた
「小鳥遊さん、あなた…」
周りのクラスメイトが、私に注目する
初めて見た譜面、初めて聞いたメロディ
それなのに、まるで何回も練習した音楽を披露しているみたいだ
「小鳥遊さんすごい!演奏したことあるの?」
演奏が終わるとクラスメイトが拍手をして、私を祝福してくれた
初めての感覚、いや、2回目かな…
「ううん、始めて演奏した、でも、家でピアノのお稽古受けてたから…」
隣の席の人が
「でも、この曲は初めてなんでしょ?すごいよ」
「ねぇ、それ、《ぜったいおんかん》ってやつじゃない?」
「ぜったいおんかん?」
そういえば、お母さんきら聞いたことがある
ピシ!
「いたい!」
「なんでまた同じところを間違えるのよ!」
お母さんのお稽古のことを思い出す
「だって、難しいよここ」
「うるさい、あんたに…あんたに絶対音感があれば、こんな面倒くさい事しなくてすんだのに」
お母さんがこんなことを言っていた
《私には、絶対音感がある!》
「これで、お母さんが喜んでくれる!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます