第10話 ただ、一生懸命に
今日は体育の授業で、相撲がある。
「相撲か…」
運動には自信がない。考えてみればずっと家で座ってピアノ弾いてたなー
「夏が明けたら、転向か…」
外を見ながらぼーっとしていると
「ねぇ!」
「うわ!」
包帯をバカにして来た子がまた、私に話しかけて来た
「相撲で勝ったら、なんでも1ついうことを聞かない?」
突然だ!
「なんで?そんなことしなきゃいけないの?」
「いいじゃん、別に」
「分かんないよ」
この子は嫌いだ、何でもかんでも自分が中心にいないと気が済まない性格なのだ
どうして、自己中心的なこの子がクラス委員になれたのだろうか?
クラスの余興で、一人一人自己紹介する時も、勝手に仕切っていたな~
「夏休みが明けたら転向か…いいよ」
「お!言ったな!絶対だから!」
ついつい返事をしてしまった。なんで話に乗ってしまったんだろう。
でも、いいか この学校にいるのもあと、少しなんだし
いつも、嫌がられを受けているんだもん。
今日ぐらいはギャフンと言わせてもいいよね
体育の時間になった
男子達の方は声と体が大きい子が優勝したみたいだ
「まぁそうなるとは思ったよ」
体格差をみれば一目瞭然だ
「さて、」
問題はこっちだ私は今、準決勝を戦っている
最初の一回戦は楽に勝てた、相手が砂に足を取られて勝手に倒れたからだ
準決勝の相手はクラスメイトの中で一番の高身長を誇る子と当たってしまった
小学1年で160cmもある
(どうしよう、これはさすがに…)
クラス委員の嫌いなあの子は、順調に勝ち進んでいた
万事休すか…
…おや?
高身長の足元を観て、勝利の兆しが見えた。
靴紐が解けているのだ!
周りが誰も気づいていない
これはチャンスだ!
身長が高いがために、みんな足元を見ていないのだ
「はっけよーい、のこった!」
合図と共に組み合った
「うわ!」
すごい力だ!
体制が一瞬で崩れて後ろにそれた、さらに相手が前に出てくる。だが
《これを待っていた》
私は腰を深く落とした、ほぼしゃがんでいる状態になった
相手の身長のリーチを利用して、つっぱりを回避した、その時、私は
《相手の靴紐を踏んでいたのだ》
想像通り前屈みになり、手が地面についた
《私の勝利だ》
私の予想外の勝利に周りが驚いていた
「小鳥遊ちゃんすごい!琴人ちゃんすごい!」
「やった」
気持ちいい歓喜だ
でもまだ、決勝戦が残ってる
気づいたら周りに男子達が見物していた
その中に宗善(むねよし)くんも見ていた。
《負けたくない》
「はっけよーい!のこった!」
合図と同時にお互い前に出た
組み合った
身長も体重も腕力も互角だ!
「決勝戦です!お互いに引かない!どちらが優勝するのか!」
先生の実況と共に男子達の目が気になる…
「でも!」
私はクラス委員を押す、そしたら押し返される
押しては、押されて、押しては押されて
まずい、腕が疲れて来た。
「がんばれ~」
「っ‼︎」
彼から、応援をもらった
「うん!」
最後の力を振り絞り思いっきり押した
◆◇◆◇◆◇◆
お互いに足を滑らせて、横に転んだ
「引き分け!」
そうか、引き分けか…
でも、なんだか清々しい気分だ
「ふふ」
私は笑っていた、彼も(むねくんも)見ていてくれた
「あ!」
なんだろうこの気持ち不思議な感覚だ
この感覚はなんていうんだろう?
「おい‼︎‼︎」
「っ!!」
突然先生が大声を出した
「何やってるんだ‼︎‼︎ 早く着替えろ‼︎‼︎他の男子は教室に行ってるぞ‼︎‼︎」
先生が
《まるで、お母さんみたいな声を上げて怒っている》
私は目を閉じてしまった
(怖かったのだ)
《また、演奏に失敗したら、鞭で叩かれるのかな…》
「ねぇ!」
「うっ!」
あの子が話しかけて来た
なんで毎回毎回驚かせるんだろうか?
「なんでもいうこと聞くって言ったやつ無しね」
「え!…あ、うん」
そう言ってクラス委員は教室に戻っていった
まぁ、なにはともあれ、ギャフンと言わせた
一泡吹かせたんだ!
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