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『それが嫌なら、俺の一番近くで、復讐出来るチャンスをあげる。何度も何度も襲いかかって来ていい』
じわりじわりと、心が黒い渦に飲まれていく。
何度も?失敗しても?
一番近くで……復讐できる……?
今この息苦しさすら感じる怒りを振り切ってこの男を逃すか、それとも男の懐に入り込んで最も近くで確実な復讐を叶えるか。
狙いを定めたように目を細める男は、次の言葉で私から全ての選択肢を奪う。
『俺の家においで。君の好きな時間に、好きな方法で、好きなだけ憎しみをぶつけにおいで』
もう、迷いなんてなくなっていた。
その話に、私は乗ったのだ。
確実に復讐を果たして自分が楽になれる道を、選んだのだ。
それがつい2ヶ月前のこと。
この家から出たら二度と戻って来れないと言われたのはその後のことで、そのまま私は私の意思で、このマンションの13階に留まっている。
まだ、復讐は果たせぬまま。
寝て起きた後、少しの時間ぼーっと空を見上げているのは、もうここ2ヶ月で癖になってしまった。
あの子がそこにいるような気がして、あの子に毎日の報告をすることで、自我を保っている。
決して忘れないように、この胸に刻みつけるように。
それから喉の乾きに駆られて寝室の扉を開くと、そこには広々としたダイニングキッチンが現れる。
ダイニングの椅子へ座り、悠々とコーヒーを楽しんでいる男は、昨日……というより今朝方だが、寝る前に私が襲いかかった男だ。
「やぁ、おはよう。よく眠れた?」
「……死ね」
「会って早々物騒な挨拶をするね」
いつものように舌打ちをあえて聞こえるように打ち、冷蔵庫へと向かう。
中に入っていたミネラルウォーターを取り出し、また部屋に戻ろうとした。
「ごはんはどうする?」
寝室に戻ろうとドアに手をかけた時、後ろからそう声をかけられ、足を止める。
もちろん、この家にはあの男しかいないので、声の主は彼だ。
その質問は私にとって、最も苦手とするものである。
ごはん、と言われても、私の体はあの日以来、ほとんど固形物を受け付けなくなっている。
そんなことはあの男もずっと知っているはずなのに、それでも未だ飽きずに確認してくるのだ。
私は食事をしたかどうかを聞かれることを元々嫌っている。
食べないことが悪だと言われているような気持ちになって、心地が悪いからだ。
モノを食べないと死ぬことくらいはもちろん頭ではわかっているけれど、それとこれとはまた別の問題。
「まだ、ゼリー残ってるからいい」
「そんなんじゃいつまでも俺の事殺れないよ?」
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