何だかんだ、生きている訳だし

 このページに辿り着いている時点で、何か思う所を一つ持っているべきだ。これから書かれている文章に全く目を通さなくとも、そこにあなたは存在していると。当たり前だ。そんなのは、こんな文章がこの世に一つとして存在していなかったとしても、同じ事だ。


 単刀直入に。何だかんだ、あなたは生きている訳なのだ。死んでいる筈がないのだ。この文章を読んでいるからではない。何かを始めようとしているからだ。だからこの文章に辿り着いた訳だろう。つまり、この文章はどこまでいっても副作用である。主作用は、この文章には期待されず、また生み出す事もない訳である。


 本題は、あなたが期待する様な所にはないという事だ。僕は、どちらかというと僕の存在を確認してほしいのだ。文章を書き始めた時からずっとだ。だからこうやって働きかけているのだから、題名はむしろ、僕の肩の力を抜く為に用いられている筈なのだ。だがそうはならない。僕は肩肘張ったままでいる。僕には、絶えず欠乏がある。だから書いているのだ。


 このサイトにおいて、文章の登場する頻度が少ない理由も、その欠乏にあるのだろうと思う。つまり、欠乏が解決している時間があって、それだけ書く理由を失う出来事があって、それが僕を絶えず文章から遠ざけているのだろうと思う。そうでなければ、疲れているのだ。そうやって言い訳ばかり浮かぶのだから、僕は弱い人間だ。


 それでも、何だかんだ生きていれば、良い事があると、そう嘯く人もいるだろう。良い事があった人だけがそうやって言うのだから、本人にとっては真実であるし、言われる側の人にとっては、どこかで必ず嘘なのだ。人生、ままならないものだ。しかしこれは、クラゲ生でも、トカゲ生でも、マンボウ生だったとしても同じ事だろう。ままならないから、物事に干渉し、解決しようと試みる訳である。順風満帆であるなら、そんな事はしなくてもいいのだ。あるいはする必要があったとしても、必死にならなくてもいいのだから、それが上手くいっているという事なのだろう。


 僕は、どこかでそうであるし、どこかでそうではない、どこにでもいる様な人間に過ぎない。人並みに苦労もした、喜びを分かち合う事もあった。僕はそうして人生にあやされているばかりだ。そんな人間に、何だかんだ生きている訳だと言われても、きっと何も響かないだろう。そんなのは前提条件だから、今更指摘されたところで何の足しにもならないと、きっとあなたは思うのだろう。思わなくても、どうでもいい事だ。そうやって現実的な発想を持っているのなら、人生を乗り切る事はできる。自然と、その方向に自分を進めていく事になるから、そうやって何とかなるだろうという事だ。


 問題は、いつも空想的な人間の方にある。空想を抱える余裕を持つ方に多くある。つまり、同時に時間的な余裕もあれば、それだけ他者に迷惑をかける余地もあるからだ。現実的な人間は、いつもそれらを失わせようとする。それを自分の為だと勘違いしている。だからそれが一番の問題である。空想的な人間は、それ以外が問題なのである。勤勉な姿勢も意識もなく、かといって怠っている事もままならず、そうやって愚痴をこぼすのが仕事である。現実的な人間にはそれらが意識されている故に、人間的な関わりというものに欠けやすくなる。


 とにかく、それぞれ上手くいかない部分を持ち合わせているという事が分かっていればいいのだ。自分がどちらの側だとか、何が真に問題であるとか、そういう事は重要ではない。誰であっても、問題を抱えているのだ。その量やら、質やらが異なっているだけだ。それを格差だと言って糾弾するよりも、何だかんだ生きているからと、気軽に生きる方がいい。僕はそう考えているし、そう意識しているし、だから失敗続きである。


 そうやって、ままならない所を生きている。皆そうである。羨まれる者も、羨んでいるものである。あるいはそうして将来をより良いものにしようと画策しているのである。それもこれも、どうでもいい事だ。生きている事に比べれば、本来どうでもいい事だ。生きている事が当然になると、その姿勢や立ち位置やらに向かって文句を言う様になるのだから、知性とはままならないものである。


 それでも、何だかんだ、生きている訳だし。

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