やるだけやってみよう

 いつもそう思っている。そう思わないと、やっていられない。成功は程遠い。他者に発見されるなんてのはもっとだ。そんな人間でも、生きていかなければならないというのなら、やるだけやる。やれるだけやってみようというその気持ちがなければ、やっていられないのだ。


 何をやっても、どうせ失敗するだろう。もっと言えば、何かに成功したつもりでいても、より成功した人物と比べたら、赤子がやっと二本足で立ち始めたようなものだ。自分なんていうのはそんなものだ。カクヨムに何かを連ね始めたのもそうだ。もう誰か成功した人物がそこにはいて、僕は傍からその様を眺めているだけなのだ。僕はここにいるが、他者にとっては何の足しにもならない。自尊心を満たす材料にだってなりはしない。発見されていないのだから。それはいないのと同じだと……もう何度も同じ事を考えた。明日も思い返しているだろう。こんな未確認執筆物体をここに残しているのも、結局は途方もないダイイングメッセージを連ねているのと変わらないのだ。


 それでも、何かを伝えなければならないと思っていた。話し相手ではなく、ただ何か、心に趣を残すようなものを、伝えなければならないと思っていた。今もそう思っている。何か書かなければならない。そんなのは、皆そうだろう。僕は結局、そんな有象無象を形成する一部分でしかないのだ。まるでレギオンの一兵士のように、数えられるものでしかないのだ。いや、僕は数えられもしないだろう。名前も呼ばれずに、少しずつ薄れていく霞でしかないのだ。


 そう思っていても、やはり生きなければならないのだから、やるだけのことはやってみせようと思わなければ、やっていられないのだ。どうせ消えてしまうなら、納得して消えたいのだ。誰かがそう言っていた。僕も、そうでありたい。それだけだ。それだけで、僕はこうして文章を書いているのだから、そんな事は誰にでもできて然るべきだろう。だから有象無象なのだ。だから一兵士なのだ。だからやってみせなければならないのだ!




 そういう、駆られた人なのだ。僕という人は。

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