そして元の位置に戻っていく

 閲覧数の話だ。時に、何者かが僕の文章を見て、何かを感じ取って、そうして痕跡を残していく。その時、閲覧数は十を超えて、あるいはこの流れが続いていくのではないか……その様な淡い期待を生み出す源となるのだ。


 そして、閲覧数は元の位置に戻っていく。その数は0で、だからこれ以上少なくなることのない数字だ。悲しみではない。苦痛でもない。ただ、平坦な数字が道に連なって、どこまでも続いていく気配を匂わせるのだ。そして、結局はそれさえも長く続いていくものではないのだと。


 僕はそうして、何度も数メートル上の景色を眺めているのだ。つまりは、二階くらいなものだ。階段をのぼればすぐだ。僕はそんな景色を見て一喜一憂しているのだ。幼児なのかもしれない。誰もそうは言わないので、訂正されることがないままに、ここまで来てしまったのではないか。なんということだ……素晴らしくどうでもいい。


 だってそれでいいじゃないか。誰かが文句を言っても、自分がその景色に感動できるものなら、それに何の不都合があるものだろうか? うるさいってことか? だったら、後ろめたい言い方なんてしないで、堂々と指摘すればいいんだ! 近所迷惑だのなんだの、他に言葉はいくらでもあるだろう。それでいいじゃないか。僕がここに一人でいて、それで何が悪いというんだ。


 僕はここにいるぞ。消えずに残っているぞ。それの何が悪いというんだ。あなただってそこにいるだろう。それだっていいだろう。悪いことなもんか。いいことでもないかもしれないけれど……ここにいたって、そこにいたっていいだろう!? 別にいいじゃないか。どうでも、いいって思っているじゃないか。ここにいることが悪いなら、そう思うことだって悪いんだ。だから、僕はそうやって相反する状態を示しながら、僕が元々思っている事に回帰していくんだ。そうやって、僕は元の位置に戻っていくんだと、そういうことだ。

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