若輩者のうわごと

埋もれていく言葉の数々

意味がなくても書く意味

 とにかく、やろうと決めたらやるべきなのだ。だから始めた。目標もくひょうなど、どこにもなかった。伝えなければいけない事があった。漠然ばくぜんと、奥底おくそこに埋もれている感覚があった。僕はそれを心の形に沿ってなぞるのに飽きただけなのだ。


 物語など、一つも用意できていない。他者に語る程の含蓄がんちくなど、まともに授業を受けた小学生にだって負ける始末だ。それでも伝えようと思ったならそれをする価値はある。僕はそうやって自分をだまして、今、文章ぶんしょうを連ねている。こんな事よりも、もっと別の事をするべきなのだ。生活のかてを得ようとするとか、人に認められる様な偉業いぎょうを成し遂げるとか、とにかく何でもいい。書く事よりマシな事なんて探せばいくらだってあるだろう。それでも書く論理的ろんりてきな理由なんてものがあったなら、どうして今までそれをしなかったのだ!


 そうやって、やらなかったところで、やったところで、結局は自分を責める材料を手にするだけなのだ。それなら、やって自責じせきの念に駆られる方がいいだろう。たったそれだけの理由だ。それだけだ。そんな理由で良かったはずなのだ。いつからか、それだけではいけなくなってしまった。何か眼前がんぜんの人を納得させられる理由が無ければ、自分は歩を進める事さえ許されなくなってしまっていた。気のせいだった。全く気のせいだった!


 とにかく、また何かを認めるだろう。そうやって自分と向き合おうとするだろう。続けられるのなら何でもいいのだ。これは全て自分の為なのだ。今はそうだ。これからの事は、やっている僕にだって分かりはしない。価値がある行動だと、そう思うべきなのかもしれない。そんな風に思うくらいなら、馬鹿ばかにされるぐらいに認知にんちされている方がマシってものだ。馬鹿ばかにされる事も無ければ、人には何もないのだから。

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