剣軍

 ハヤトが点々と残した目印を辿り、必死に夜の森を走る。

 この体の有している高い夜間視力に加え、この世界は二つ月があり、そのどちらも円に近い形となっている今夜は光量は十分に存在し、視界には困らないが……それでも、まだか、まだ追いつかないのかと気が急く中で必死に林間の道を走っていた。


 ――そうしてしばらく走っていると、道の向こうから、小柄な人影が歩いて来た。遠目からでも鮮やかに夜の闇に映える金の髪と、銀の髪……あれは!


「アイニさん!……良かった、無事か! それにイリスも……!」


 歩いて来たのは、攫われた筈のアイニさん。その背にイリスを背負って歩いて来た彼女は、こちらに気がつくとパッと緊張に強張っていた顔を綻ばせた。


「ああ、レイジさん、よかった……こんな近くまでいらしていたんですね!」

「ハヤトのおかげです、あいつが目印を残してくれたから……イリスは、俺が預かります」


 イリスは小柄で軽いが、それでも一般女性には荷が重い。ここまで連れて来てくれた事に感謝を述べて左腕に抱く。

 薄い寝間着の布越しに感じる体温はさらに上がってしまっているような気がする。熱で上気した顔は絶えず汗を浮かべ、苦しげな呼吸音を上げている。

 そして……その、首に嵌った、重々しい首輪。たったそれ一つだけが華奢で小さい体躯には凄まじい違和感と背徳感で、痛々しさに唇を噛む。 


 ……そんな時。


「…………あ……れいじ、さん……?」

「……っ」


 いつの間にかうっすら目を開けていたイリスが、呆然と熱に浮かされた目をこちらに向けていた。


「……レイジさん……レイジさんっ……レイジさん……っ!」


 みるみる、くしゃりと表情を歪めて目から大粒の涙を零し始め、すがるように俺にしがみついて来る。その様子はまるで、いつかの心的外傷で幼児退行を起こしていた時に似ていて、震える手でどうにか抱き締め返す。


「ああ、俺だ、大丈夫だ……ちゃんとここに居る」

「……良かった……すごく……怖い夢を見て……でも、良かった、レイジさんが居た…………」


 ポロポロと涙を零しながら、ふにゃっと安堵したかのように笑うその様子は夢現ゆめうつつを彷徨っているようで、目は焦点も定まっておらず、どうやら僅かに意識が浮上しただけのようだ。


「……そんな物はただの夢だ、安心して眠っていろ……な?」

「……は……い…………」


 そのまま、体力の限界なのか、またすぐスッと眠りについた。

 …未だ眠りながらも目の端から雫を滴らせているが……さっきまでよりはまだ、少しは安心したように穏やかな表情で眠っているのが救い……か。


「あの、彼女のその様子は何故……? その、言いたくないのであれば聞きませんが、何かの心的外傷の症状ですよね。一体、何が……」

「……そうだな、あんたならいいか。前の町で、山賊に攫われて、ちょっと……どうにか取り返しの付かなくなる事態には至らなかったんですが……」

「そう、ですか……それは、辛かったですね……」

「ええ……だいぶ人との交流も増えて、せっかく良くなってきたと思ったのに、またこんな……畜生……っ!」


 これで元の木阿弥に戻ってしまわないか、それが気掛かりだ。何せ、今回の状況は嫌が応にもあの時を想起してしまう事態だろうから。


「……ごめんなさい、私、預かっていた子をこんな目に……」

「……いや、アイニさんも、無事で良かった、です。巻き込んでしまってすみませんでした」


 この人も、連中に攫われた被害者だ。なのにこうしてイリスの事を気にかけて、危地から連れ出してくれた、感謝こそすれど、責めるような事は何も無い。


「それで、ハヤトの奴は……」


 先に助けに来たはずのあいつの姿が見えない。そして町長の私兵の追手の様子も見えなかった。

 隠密系は、特殊な状況下では無類の打撃力を発揮するが、姿を晒した状態での面と向かっての戦闘は、俺やソールの職に比べるとそこまででもない。ヒーラーとはまた違った意味でパーティ向けの職だというのに、まさかあいつ……


「それが、あの子、私達を逃がすために一人で残って……お願いします、あの子を……」

「あいつ……分かった、すぐに助けに――」


 ソールの奴が気にかけていた訳だ、思っていたよりずっと骨のある奴だった。

 しかし、イリスをこの手に取り戻せたのは全てあいつのおかげだ、このまま放っては置けない。アイニさんが来た道へ歩き出そうと、一歩踏み出そうとし……ぞわりと悪寒が走った。


「――悪ぃ!」

「きゃ!?」


 嫌な予感に、左腕にイリスを抱いたまま、同じく歩き出そうとしたアイニさんを右腕でひっつかんで飛び退る。


 ――カカッと、地面に突き立つ投げナイフ。明らかに俺を狙い撃ちにしたものだ。


「……外したか……中々勘は良いようだな。あまり面倒事は避けたかったのだが」


 木々の影から、滲み出るようにぞろぞろと現れた、明らかに剣呑な空気を纏った黒装束の連中。


 ……見えているだけで、七人。気配はそれよりも多く感じるから、何人か潜伏している……か?

 皆が黒いローブを纏って夜の闇に同化する中、顔を覆う、目の所にだけ穴が開いた飾り気のない仮面だけが白く浮かび上がっている。武装は鉤爪や短剣、鎖鎌とまちまちだが、総じて殺傷力の高い刃物で武装している。


 ……どう見ても、堅気の、まともな連中には見えなかった。


「なんだ、テメェ等」

「……その娘を、置いていけ。あるお方が、ぜひ一度お会いしたいとご所望だ」


 どこからか聞こえてくる声。おそらくリーダーか、何物かが一人代表で喋っているように聞こえるが、しかし、全員が顔が見えず、黒装束達の誰が喋って居るのかがわからない。

 しかし、そのような些末事より……その中に聞き捨てならない台詞があった。


「……あるお方?」

「あぁ、言っておくが、あの町長などのような小物ではないぞ。従わなければ、貴様達は我々を敵に回す事になる……尤も、その前にここで始末する事になるが」


 くい、と控えめに袖を引く気配。ちらっと視線を向けると、再度緊張を滲ませた顔でアイニさんが連中を睨んでいた。


「……彼らはおそらく、西の大陸の通商連合の暗部、通称『ヘイシーダ・マオ黒猫』と呼ばれる連中……最大手の闇組織です……最近、人事でゴタゴタがあって、幹部の多数がすげ変わったと耳にしましたが……」

「へぇ……そいつはまた、大陸を渡ってまでご苦労さんなこって。なるほど、こいつらがあのブタ野郎町長そそのかした真打のクソ野郎ってことか」


 だが、何故それがイリスを狙う?

 今の口ぶりでは、奴らの親玉はまるでこいつの存在を知っているみたいではなかったか。

 しばらくそんな事を考えていると……


「……矜持が邪魔で決めかねていると言うのであれば、こいつをくれてやる」


 何を勘違いしたのか、どさりと、眼前の地面に重たい音を立てて皮袋が落ちる。奴らの一人が投げ放ったものだ。


「……なんだよ、これは」

「旅人風情であれば数年は遊んで暮らせる額が入っている。命が惜しければそれを持って女を置いて、とっとと失せろ、ということだ」

「……へぇ」


 身をかがめて、その皮袋を手に取ってみる。


「れ、レイジ、さん……?」


 訝し気に背後からかかる声。しかし、俺は手にしたその皮袋を軽く放っては受け止めるという動作をなんと無しに繰り返す。


「……随分と気前が良いんだな?」

「それだけ、その娘には価値があると言う事だ、貴様のような一旅人が何も知らず連れ回しているのが宝の持ち腐れであるだけの」

「なぁ、そんな事を話して、俺が手放すのが惜しいと考え直したらどうするんだ?」

「命が惜しければ引け、と言ったはずだが? 足りないと言うのであれば……」


 ベラベラとよく喋る男の言葉を、手で制する。もういい、もう聞けば聞くほど耳障りになっていく戯言は十分に聞いた。


「く、くくく……ははははは!!」


 人って、許容範囲を超えて面白くねぇ事があると逆に笑うしか無くなるんだな。


 ああ、確かに遊んで暮らせるんだろうな。手の内に感じる重量は、間違いなく金貨が詰まってるのだと理解させられる。


 ――なぁ、だから、それがどうしたってんだ?


「ふっ……ざっけんじゃねぇぞクソがぁあああ!!」


 怒りのままに、宙に放り投げた皮袋に、抜き打ちで放った斬撃を放つ。鞘から疾った剣は炎を巻き上げ、一瞬で皮袋を灰に変え、中身の金色の塊を赤熱化させてびちゃびちゃと周囲の地面にまき散らした。


 その火力に、黒装束の男達の間に警戒が走る気配……けどなぁ、もう遅ぇんだよ、テメェらはキッチリ、獅子の尻尾を踏み抜いたんだからなぁ……っ!


「…………なぁ、テメェら……今更、『冗談でしたー』とかホザくんじゃねぇぞ――クッソつまんなかったからなぁ! 面白くもねぇ事は冗談って言わねぇんだよ!!」


 面白くねぇ。本っ当に、面白くねぇ!

 どいつもこいつも、コイツをカネになる、権力の足掛かりになる、そんな下種な考えで傷つける奴ばっかりで、本……っ当に、笑えねぇ!!


 ――もう、いい加減こういう手合いにはうんざりだ……!!


「……なぁ、アイニさん」

「……は、はい!」


 思った以上に冷たい声が出た。背後で青ざめていたアイニさんには悪いことをしたなと思うが……この腹の中で煮えたぎる感情は、どうやっても納めれそうにない。心の内で、怖がらせて申し訳ないと謝っておく。


「イリスに、この首輪をつけた連中は、あいつらで合ってるか?」

「……取り付けたのは町長ですが、その首輪を持って来たのは彼らで間違いない……と思います」

「そう、か……」


 すぅ、はぁ、と、いったん呼吸を整える。


 落ち着くためではない、そんなつもりは全く湧いてこない――怒りという熱で刃を鍛え、殺意を、研ぎ澄ませる為にだ。


「――剣聖技、『剣軍』」


 手を空に掲げ、ぼそりと、脳裏に流れ込んできた技名を呟く。すると――周囲に、半透明に輝く『剣』が一二本現れて、俺の周りを旋回するように円陣を組んで舞い降りてきた。それは、俺とその後ろに居るアイニさんを中心に滞空し、俺達を守るようにゆっくりと旋回を始める。


「……アイニさん、悪いけど……この剣の円の外には出ないでおいてください……外に居る連中は、誰であってもうっかり斬らない自信が無いです」

「は、はい、わかりました……」


 近くにいる事を確認し、手の内にいるイリスを抱え直す。二人を守りながらの戦い、それもイリスを抱えたままの戦闘だが……


「……愚かな。貴様の武勇は聞いているが、我々を相手に勝てると……」

「御託はいい、さっさとかかって来いよ」


 さて、さっきから代表で話しているごちゃごちゃうるせぇクソ野郎はどいつだろうな……まぁいいか、全部ぶった斬ってしまえば同じか。

 一人一人は動きを見るに相当の手練れなのだろう。それが相当な数。連中も街で俺らの戦闘を見て必要なだけの数は用意して来たのだろう……けどな!


「しゃぁ!!」

「……うっせぇんだよ!」


 先陣を切って鈎爪の男が一人、飛び掛かってくる。その一人を、無造作に掴んだ『剣』の一本で叩き切る。

 男は、鈎爪で空中で防御姿勢を取り……


「シャ……!?」


 その防御が、まるで紙のように抵抗なく断ち切られ、その先に居た男自体も頭から股間まで一刀両断したのち、手にした力場の『剣』が崩壊して消え去った。


 ――が、こいつは囮。空気の流れが別の方向から接近する影を伝えている。


「……ハヤトの隠行に比べたら、テメェなんか見え見えなんだよ!!」


 風すら感じず、攻撃の直前まで微塵も気配を悟らせなかった、坑道で一度見たあの少年の『アサシネイト』は、もっと鋭かった――!


 振り向きざまに、また宙から一本の『剣』を掴み、何もない――ように見える空間に向けて振り斬る。ぱっと血の紅が扇状に広がり、染み出す様に姿を現した黒装束がべしゃりと泥の中に倒れ込んだ……上下、真っ二つに断ち割られて。


 ――これは、性質としてはイリスの『ソリッドレイ』に似ているな、と、怒りに燃えながらもどこか冷えた頭で考える。


 違うのは、その性質が防御ではなく、攻撃に……鋭さ、殺傷力に特化している事。


 単分子カッター。元の世界にあったその言葉が脳裏に浮かんだ。

 闘気でできた力場ゆえに……物理的な刃ではないがゆえに限りなくゼロに近い極限まで薄く引き伸ばされた絶対守護領域が、たった一度だけの絶対的強度を以てあらゆる物質の分子の隙間に入り込み、苦も無く斬断する


 物理に対しての絶対切断能力。一本につき、必ずひとつの物を惨断する、致死の一二枚の刃。


 ――あと、十本。余裕でお釣りがくる本数だ。


 ざわりと、周囲から動揺した気配。おそらく容易く奪い取れるつもりで居たのだろうが、誤算に今更気がついても遅ぇ。きっと逃せばまたイリスを狙って来る――だったら、全員ここで……!


 一人、離脱しようとしたおそらく伝令に向け、その背に手を掲げると……俺の意志を受けた剣が宙を駆け、その背を、心臓を貫いてから崩壊し、星屑のような煌めきだけ残して消えていった。これであと九本。


 ――そうか、これ、手に持たなくてもこうやっても使えるんだな。


「しゃあ!!」


 危機を察した男の一人が、掛け声とともに俺とアイニさんに向けて何か短剣のようなものを投げてきた。

 何かの液体に濡れているように見えるのは、毒か……いずれにせよロクでもないものに間違いない。

 しかし、その間に割り込んできた『剣』が、それぞれその身に短剣を受けて崩壊し消えていく。

 あと、七本……いや、その男の首をたった今、回転を付けて飛翔していった『剣』が刎ねたから、あと六本だ。


 俺が考えるべきことは、まず第一にイリスにこれ以上の負担をかけない事。出来るだけ、動きは少なく、揺さぶらない様に。そしてそのために連中をできるだけ素早く消し去る事、この二つだけ。


 ――なんだ、単純明快、簡単な事だ。


 極限まで集中した思考に、視界から色が消え、灰色の世界が広がっていく。

 そんなモノクロの視界の中、色の無い世界を縫う様に縦横に奔る赤い線。まるで、ここを辿って行けと導く道筋のように。


 今度は三方向から同時に迫ってくる黒装束。微妙にタイミングをずらされた攻撃は、おそらくそう簡単に躱すことはできないのだろう、が。


 その中で、一番こちらに届くのが遅くなるであろう右手の男に、ゼルティスから借りた剣を鞘から抜いて投げつける。ぞぶりと音を立て肩に長剣を受けた男は衝撃にたまらず蹲った。

 それでも起き上がりまだやろうとするのは大したもんだが、これでこいつは少し出遅れた、後回しでいい。


 ――金だとか、権力だとか、そんな物の為に、そんな事のために好き勝手しやがって……!


 周囲に浮かぶ『剣』を一本握り、最初に繰り出された正面の男の攻撃……カタール、っていうんだったか。それを右から左へ横薙ぎに無造作に振るった『剣』で切り飛ばす。

 砕けて消える『剣』を尻目に、その『剣』を振り切った体勢の手の内に、さらに滑り込むように手の内に入り込んできたもう一本の『剣』を逆手で掴み、その無防備になった心臓に乱雑に突き込む。

 これで、あと四本。


 ――ふざけんな、誰にも渡さねぇ……渡してたまるか……っ!


 返り血を浴びる前にその体を蹴飛ばして後退し、若干左手から迫る黒服の男と距離を取る。ほんの極僅かな距離だが、それで十分だ。

 左手から迫る男の鉄爪の気配、背中越しに掴んださらにもう一本の『剣』を、全身を使って振り抜き、後ろでしゃがんでいたアイニさんの頭上をすり抜けて、その爪ごと右肩から左脇に、袈裟切りに断ち割る。

 何が起きたのかわからぬまま、下半身は大地を踏みしめたまま上半身だけをべしゃりと泥濘ぬかるみに落下し倒れ伏したその男を尻目に、砕けた『剣』を手放し、物陰からこちらを狙っていた弓を持った男に手を差し向ける。同時に、背後に浮遊していた二本の『剣』が空を疾る。

 一本は同時に放たれた矢を砕いて虚空に消え、もう一本がその弓を構えた男の頭を、身を隠した木の幹ごと打ち抜く。

 あと一本……!


 ――テメェらが俺からコイツを奪うってんなら、俺はテメェらを絶対にぶった斬る……!


 最後に残った『剣』を、ようやく体制を立て直したばかりの、先程最初に借り物の剣を投げつけた右手の男に叩きつける。殆ど抵抗も無く真っ二つに断ち割られ、ゆっくりと左右別々に倒れていく男……これで、最後。


 不意に、猛烈に嫌な予感が背中に走り、とっさに倒れていく男の肩に刺さったゼルティスに借りた剣を引き抜いて、その嫌な予感に任せて逆手に掴んだ剣を背後の空間に突きこむ。手にかかる、鈍い肉を貫く感触と、何者かの体重。


「――ガッ……おの、れ……貴様のような、者など、聞いて……」


 ――この男だ、さっきから、五月蠅かった野郎は……!


「イリスは、どこにも行かせねぇ……こいつは――――俺のだ……っ!!」


 一度剣から手を離し、180度振り返って再度掴む。


「俺の女に、手ぇ出してんじゃねぇぞ、このクソ野郎がぁぁああああ!!」


 その柄を、全力で逆袈裟に振り抜く――!



 ……どしゃり、と、左脇腹から右肩までを切り裂かれた最後の一人が泥濘に沈む……周囲には、俺と俺が腕に抱いたイリス、そしてずっと後ろについて来ていたアイニさんだけしか動くものは存在しなくなった。


「――はあっ!! はぁっ、はぁっ……これで、全部、か……?」


 世界に、色が戻る。突如増大した情報量に軽い酔いのような症状が走り、酷使された脳がくらくらする。

 ごっそり闘気も持ってかれた。疲労と眩暈で吐き気がするが、腕にイリスを抱えているため気力で押し留める。

『剣軍』……この技、強力な分、消費が半端ないな、そうそう乱発できそうにない。


 腕の中のイリスに、一滴の血も掛かっていないことを確認し、ようやく安堵の息をつく。


「……悪い、女の人に見せるようなものじゃなかったな」

「……え!? あ、いえ、すみません、ぼーっとしていて」


 ……?

 なんだ? てっきり凄惨な光景に引いているかと思ったのに、その顔は何故かほんのり赤く、その眼差しには生暖かく見守るような色が滲んでいる気がする。


 って、こうしてる場合じゃなかったな。


「それより……」

「ああ、余計な時間を取られた、急いでハヤトの奴を迎えに行くぞ!」


 腕の中のイリスを気遣いながら、後ろからついてくるアイニさんを見失わぬように、再度夜の闇の中を駆けだした。







【後書き】

 ブチ切レイジさん無双回。最後のあれはテンション上がって思わず願望が口を突いて出ました。


 新技『剣軍』については本来は、周囲に浮いた剣を、剣聖将軍・足利義輝よろしく次々と使い捨てながら持ち替えて使用する技でしたが、片手が使えないため今回はこんな使い方。


 補足になりますが……今回の敵は、決して弱かったわけではなく、本来であればアイニさんを見捨ててヒット&アウェイに徹しなければ勝てない程度の相手でした。

 数に物言わせ、一人が押さえておいて他の者が仕留める……そんな戦闘に特化した集団でしたが、今回のレイジさんには防御の上から真っ二つにされるのでそれもできず……新技が酷かった。

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