昼休みと、私の特技?

「……しかし、意外な奴が伸びてきたな」

「え?」


 彼の視線の先を見ると、少し離れたところで、周囲の喧騒をよそに弓の弦を引いている……未だに目にするたびに私の胸をチクリと罪悪感で刺す、後ろからでも目立ってしまう首のあたりの火傷跡は。


「あ、ヴァイスさん? ……って、あれやり過ぎじゃないですか、止めないと!」

「いや、ちょっと待て」


 視線の先に居たのは、ヴァイスさんでした。しかし、どうも様子がおかしいです。その様子は疲労困憊という体で、呼吸は荒く、腕を上げるのも難儀しているようなさまでした。

 明らかにオーバーワークで、慌てて休むように言おうとしたところ、ヴァルターさんに制止されました。


「もう少しだけ見守っておけ、これは……ひょっとするかもしれん」

「え?」


 その彼の腕が、すっと上がり、弦に矢を番えます……その動きが、余分な力が抜けたせいかここに来て尚あまりに自然体で綺麗な様子に、周囲でざわめいていた傭兵さん達の声が途絶え静寂と緊張感に包まれます。そして、残り少ないであろう体力で弓を引き……流れるような動きのまま放たれ……その矢が、闘気の光を纏ったのを目にしました。


 ゴウッ! という、風を切るという表現ではまだ生易しい、凄まじい音がしました。


 放たれた矢が目にも止まらぬ……異様な速度で空を駆け、目標である的を粉々に砕いたのみならず、その的を取り付けた木の幹を抉り……矢が、木に矢羽のあたりまで深々と突き刺さりました。

 ……これは、ゲームの時で言うスキルのようなものでしょうか。それも、相当な威力の物に見えます。


「な、ん……」


 当の本人は、自分自身眼前の光景が信じられない、そういった風情で呆然としています。


 そこまでを見届け、ヴァルターさんがそちらへ歩を進めたので、慌てて杖を動かしついていきます。


「よう、頑張ってるな新入り」

「だ、団長!?」


 驚愕するヴァイスさんを他所に、ヴァルターさんが周囲の状況をマジマジと観察します。


「たまーに、ふとした拍子に目覚めるのが居るんだよな。余計な力が抜けて、無意識に筋力以外の物で弓を引こうとした結果、全身に流れる気をうまく活用することに目覚めたんだ。それが時にはこう言った破壊力を……まぁ、ごちゃごちゃ細かいことはいいか、いわゆる戦技、ってやつだ、その感覚を忘れるんじゃないぞ」

「は、はぁ……」


 やはり先程のあれは、私たちの言うスキルみたいなものらしいです。こちらでは戦技って言うのですね。この威力と矢の速度は……確か、弓に『ストライクアロー』と言うものがあった気がしますが、それに近い気がします。貫通力と威力に秀でた、かなり高位のスキルだった気がします。


「ちなみに……『あいつら』もそれを使いこなしてるからな、追いつきたいのであれば今後そっちの鍛錬も励めよ」

「……! わ、分かりました!!」


 森で彼がレイジさんに助けられて以降、ずっとレイジさんやソール兄様に対抗心を燃やしていた事は、流石に私でも理解しています。それ故に追いつくための糸口を見出した彼の喜びようは、後ろで見ていてもよくわかりました。


「そういえば、お前には、客人を守り抜いた報酬を渡してなかったなって思ってな、ほれ、受け取れ」


 今思い出したと言わんばかりに告げ、これまでずっとヴァルターさんが肩に担いでいた包み……それも、かなりの大きな物を、あまりに気やすい様子でひょいっと投げ渡します。


「うわっ! っとと……重っ!?」


 何気なく受け取ったヴァイスさんが、その重量によろけます……あの、それをずっと担いであまつさえ忘れかけていたんですか、ヴァルターさん?


「ドレッドノート、っていう銘の魔弓だ。まだ使いこなすのは難しいだろうが、くれてやるよ」

「魔弓!?……あ、あの、引いてみても……?」

「おう、やってみろ」


 ヴァイスさんがそわそわとしながら包みを解いて広げた中から出てきたのは、大型の、複雑な機構を有した、それでいて優美な印象さえ感じる真白い弓でした。一目で、ただならぬ逸品だと感じます。が。


「あ? なんだこれ、引けねぇぞ?」


 さっそくその異様に太い弦に矢を番えてみたヴァイスさんの手が止まります。どれだけ力を入れても、ほとんど動かない様子でした。


「あー、魔弓は力で引くんじゃなくてな。さっきの一矢みたいに、闘気を弓に行き渡らせるようにして……」

「って、言われても……こ、こう……っくっ、それでも、重ぇ……!」


 弓の所々から淡い緑色の光が漏れ始め、額から脂汗を垂らしながらも、少しずつ、少しずつギリギリと引かれている弦。


「うわっ!?」


 しかし、とうとう手から力が抜け、指から滑った弦が矢を弾き……ばきばきと、木を貫通しながら森の奥へと消えていきました。


「…………」

「す、すごい、ですね……」


 あまりの威力に、絶句しているヴァイスさんと、辛うじて言葉を絞り出す私。引き切っていないにもかかわらずこの威力では、使いこなしたら一体……


「と、まぁ、まだまだ使いこなせないだろうが、こいつが使えるようになりゃお前は大型のモンスターでは貴重な戦力だ。励めよ」

「あ……ありがとうございます!」


 物凄い勢いで頭を下げるヴァイスさんに、ヴァルターさんはひらひらと手を振って戻っていきました。


「ヴァイスさん、良かったですねっ」

「あ、ああっ。もっと頑張らねぇと……!」


「……そこまでです」


 はしゃぐ私と決意を新たにするヴァイスさんの中間に、後ろに控えていたレニィさんが割り込んできました。その目は、ほかの人に向けるものより幾分厳しい物で、向かい合っているヴァイスさんが思わず引きつっています。


「イリス様、異性に対し距離が近すぎます。このような荒くれの集まる場の男にそう無警戒では、いつ狼に変貌した者に襲われるか。特に彼のようなのは危険です」

「し、しねぇよ!? というか、こんなガキは対象外だ!?」


 ガキ、という言葉に、思わず自分の胸元のあたりをぱんぱんと叩いてみます……否定できません。がっくりと肩を落とします。


「ほう……初対面の時、お仲間と一緒に彼女に迫っていたと聞きましたが……?」

「くっ、あのときはどうかしていたんだよ、俺はもっと……もっと……」


 突如言葉の勢いが落ちるヴァイスさん。その視線が一瞬対峙しているレニィさんの、その大迫力な胸に移り、すぐに僅かに顔を染めて明後日の方に逸らしたのは見逃せませんでした……ああ、なるほど、そっちの方でしたか。そういえば、以前も抱き心地がどうとか言ってましたもんね。


「……くっ! とにかく、そういう目ではもう見てねぇから放っといてくれ……畜生、何でよりによってこいつが……」

「まぁ、そういうことにしておきましょう、ですがくれぐれも……」


 っと、いけない、このままお小言が始まってしまえばお昼が遅くなってしまいます!


「そ、それより、皆が待ってますので、お昼にしましょう!? ほら、ヴァイスさんも良ければ一緒にっ」

「お、おぅ……」

「……イリス様がそう言うのであれば」


 しぶしぶと、二人が着いて来ているのを確認し、皆がお弁当を広げている場所に戻りました。


「ところで、レニィさんとヴァイスさんはお知り合いなんですか?」

「……遺憾ながら、家の方で少々付き合いが」

「こいつは俺の住んでたところの領主の娘だよ、くそっ」


 まさか傭兵団で再会すると思っていなかったと、悪態をつくヴァイスさん。この世界も、案外狭い物なんですねぇ……






 お弁当のの内容は、ハムや卵などの何種類かのサンドイッチに、お芋と塩漬けの肉を炒めた元の世界で言うジャーマンポテト。それと葉野菜を酢漬けにしたものを少し。本当はもっと野菜も入れられたら良かったのですが、少量に留まってしまっています。寒冷地であるこのあたりでは新鮮な野菜類は貴重なため、泣く泣く増やすことができませんでした。


「どうですか……?」

「ん、大丈夫、美味しいよ」

「……ま、まぁ、味付けは大体ミランダおばさんの指示の下、ですけどね」


 兄様の言葉に苦笑いして、頬を掻きながら白状します。そんな私の頭を、レイジさんがポンポンと撫でて来ます。


「それでも、実際に作ったのはお前だし、覚えたんだろ? 美味かった、次も期待してるぜ。ごっそさん」

「は、はい! また明日も用意してきますね!」

「お、おぅ……」


 レイジさんに褒められた事に、頰が自然に緩んでいく気がします。こうして自分が作ったものを褒められるのは、本当に嬉しいです。


「はいはい、ごちそうさま! ……兄貴、その、大丈夫?」

「ん? 何がです? ああ、彼らも仲睦まじいのは良い事ですね」

「あー……なるほど、そういう感情ではないのね……難儀だなぁ」


 やや離れた場所で、微笑ましい物を見る目でこちらを見ているゼルティスさんと、どこか呆れたようなフィリアスさんが会話をしています……何でしょう?

 そんな様子を首を傾げながら眺めていると、ゼルティスさんと目が会います。


「そういえば、姫」

「ひっ……姫は、止めてください……」

「っと、失礼しました。イリス嬢。先日のあのゴブリンの変種について、貴方達は何やら詳しかったようですが、良ければひとつご教授いただければと」


 ああ、この間の戦闘の時の。そういえば、こちらの世界では相当珍しいみたいですね、彼らの反応を見ると。ゲームの時は高レベルの狩場などでは珍しくなかったのですが、そういう部分もやはり違うようです。


「おぅ、俺もそれを気になってたんだ。なにやらお前たちは魔物の情報に詳しそうだが……ちなみに、一番詳しいのは?」

「それは……」

「まぁ、イリスだろうなぁ」

「え、私!?」


 お鉢が回ってきてしまいました。確かに、支援職は後方で俯瞰して周囲を見ている分、全体の指揮を任されることも多く、大体のエネミーの特徴は攻略サイトを熟読して記憶していると自負はしています……けど。


「それじゃ、嬢ちゃん。先日のあの変種ゴブリンの特徴を、こいつらに教えてやっちゃくれねぇか」

「あ、はい。まず、先に断っておきますと、文献での知識の為、実際とは食い違いのある可能性がある事を前提に聞いて欲しいのですが……」


 様々な部分がゲームとは全く異なるこの世界、ゲームと現実の差がある可能性を考え、保険をかけておきます……間違えてたら恥ずかしいなぁ。記憶の中から、攻略サイトの記述を思い出して脳内で整理していきます。


「こほん。あれは、私達はハイゴブリンと仮称していますが……ゴブリンの呪術師によって施術をされ、様々な強化を施された――」


 話しているうちに、興が乗ってきて、指をまるで指揮棒のように、手振りを交えてつらつらと特徴を説明していきます。



「――というわけで、私は使えませんけれど、高位の付与術師エンチャンターの使用可能な強化術式を解除できる魔法があれば、そうした効果を一時的に無効化できるため大分楽をできると思うのですが……そうでなければ、レイジさんや、えっと、ゼルティスさんみたいに、強固な表皮をどうにか切り裂いたのち、内部から破壊、が最も効果的な……手段だと……はい、そういうことで……はい……」


 説明が終わりに差し掛かるにつれて、今まで教師気分でノリノリに話していたことに気が付いて、顔に血が集まってきます。やっちゃった、やっちゃった!? やだ、凄い恥ずかしいんですけど!


「はは、照れるな照れるな、いい教師ぶりだったぞ……正直、ここまで詳しく対処法まで解説してくれるのは予想外だったが」

「うううぅぅうううっ……!」


 ばしばしと痛くない程度に頭をはたいてくるヴァルターさんですが、そう言われても、争い事を本業にしている人たちの前で説法を垂れたのかと思うと顔から火を噴きそうです……


「しかし、こう詳しいとほかにも聞いてみたくなるねっ!」

「そうだな……例えば……レッサードラゴンと、ドラゴン種の外見上のサイズ以外の差は?」


 フィリアスさんの発言に、ヴァルターさんが追加で質問をしてきます。が、このくらいなら……ドラゴンは有名なため、その特性、攻略法だけは広く伝わってますから。倒せるかどうかは別ですが。


「……えっと……レッサードラゴンに比べ、ドラゴンは知能がより高く、魔法等も高度に使いこなすことと……耐魔力でしょうか。相当の威力の物をぶつけないと、ドラゴン種には鱗で弾かれてほとんど効果が……でしたっけ?」

「はいはい! ブロブ種に粘液を浴びせられた時は!? あれ、ほっとくと服溶けちゃって大変で」

「あ、えぇと、さっと水洗いした後アルコールを霧吹きなどで数回シュッシュすれば、多分中和できるかと――」







 最初は広く知られているのもから始まり、徐々に質問がマニアックな方向へ進んできました。現在は、一つ目巨人サイクロプス族について、となっていますが……


「――というわけで、彼ら一つ目巨人サイクロプス族は、世間一般の巨人族の粗暴なイメージとは裏腹に堅気な職人気質の者が多く、彼らの繊細かつ強力な冶金技術によって製造された武具は非常に高品質、強力な魔剣も数多くあって……気難しい者が多いため難しいですが、もしその協力を得られれば、得難い一生物の装備が手に入でしょう」

「それは……ぜひ、可能であれば一本拵えて頂きたいものですね……ところで、もしや皆さんはお会いになったことが?」


 流石に戦闘に携わる者だけあって、ゼルティスさんが一つ目巨人の話に喰いつきます。その彼から発せられた質問に、思わずレイジさんと目が合います。


「ま、まぁ、あるというか……ないというか……」

「あ、あはは……」


 ……何を隠そう、レイジさんの所有する『アルスレイ』の素体である、竜眼の器である漆黒の刀身はその一つ目巨人の作ですので、会ったことがあります。が……その時のことを思いだし、羞恥に顔に血が集まってきました。ちらっと横目で確認すると、レイジさんは露骨にこちらから目を逸らしています……制作してもらうにあたって要求された条件にどうしても必要だという事で私も同行しましたが……その時の事は、誰にも、ソール兄様にも言っていません。


 ……そういえば、その『彼』もこちらに存在しているのでしょうか……?


「くくっ、堅気の職人気質、ねぇ」


 そんな中、ヴァルターさんが何かを思い出し、愉快そうに笑っていました……え、まさか。


「一応、そのつもりがあるなら伝手はあるから紹介は可能だぞ……まぁ、そっちの嬢ちゃんがいれば駄目とは言わないだろ」

「えぇと、その……まぁ、はい、あはは……」


 若干申し訳なさそうな色を含んだその言葉に、乾いた笑いが漏れます。ああ、これ、居る……やっぱりこっちにも居るんですね……とはいえ、力を借りれるのであれば心強いのですが……その時は、少し恥ずかしいのを我慢する覚悟はしておきましょう……






 最初は賑やかに始まったこのやり取りですが、幾つか質問に答えていくうちに、周囲に別の人たちも集まってきて、なのにだんだん周囲の口数が減ってきました。

 ……あの、趣旨が変わってきている気がします。どこまでであれば答えれるか試されているような……? 視点が集中していて辛いです。


「……こないだ見せてもらった服に使われてた糸の出所、アラクネクイーンの注意点、なんてのは流石に」


 どこか、疲れた様子のヴァルターさんの質問。少し、脳裏に情報を思い浮かべ、どう説明したらいいかを脳内で組み立てます。えぇと……


「あ、はい。まず、本体と触れている糸に、強力な吸精能力がある事でしょうか、大の大人でも、3分も触れていると昏倒して、10分程度で死に至ると。触れていることに気が付かないことも多いので要注意だそうです。それと、まず一体では行動していないので、側には大体側近が潜んで……」

「……もういい、十分だ……正解だ」


 何故かげんなりと疲れたように頭を抱え、ヴァルターさんが説明を遮ります。あ、でも、これも言っておかないと何かあると大変ですね。


「……それと、アラクネは人型の方だけですが、アラクネクイーンの場合、繁殖のため最悪どちらか潰れても大丈夫なように、人型だけでなく下半身の蜘蛛の方にも全身に分散した脳組織があるらしいです」

「……それは俺も知らなかったな……そうか、以前首を撥ねたはずの奴に後ろから不意打ちされたのはそういう事か……」


 がっくりと肩を落としたヴァルターさんに、頭上に疑問符を浮かべます。周囲を見回すと、ゼルティスさんやフィリアスさんを始め、最初は興味津々で話を聞こうと集まってきていた傭兵団の皆がどこか疲れたような乾いた笑いを浮かべています。


「……正直、何言ってるのか途中からさっぱり解んねぇ……」

「……奇遇ですね、私もです。どうして目撃例しかない筈の幻獣の習性まですらすら出て来るのでしょう……」


 ヴァイスさんとレニィさんが、ぐったりと項垂れていました。


「あ、あの、どうかしましたか……? 私、何かやらかしました……?」


 もしかして、何か間違っていたでしょうか。それともやっぱり調子に乗りすぎた……?


「い、いえ! 決してそのような! 素晴らしい知識に感服しているだけです!」

「ほ、本当凄いねイリスちゃん! ……ねぇ、あんたたち皆こんなの覚えてるの……?」

「い、いや、流石に私もここまでは……というか、私も妹がまさかこれほどとは思ってなかったです」

「……俺、もっと真面目にサイト見て勉強しとくんだったわ……こういうの、任せっきりだったからなぁ」

「……私も、それなりに自信はあったけど、素材ドロップとかはともかく、それ以外はここまでじゃないにゃ……」


 プレイヤー側のはずの皆にも、色々言われてます……あれ、これって普通じゃないんですか? 支援職ならできて当然、みたいにたまたま覗いた掲示板等で言われていたので、片っ端から必死に覚えていたんですけど。




「……まぁ、何にせよ、嬢ちゃんのその知識はありがたい。何かあったら知恵を借りるかもしれんから、よろしく頼む」

「あっ……は、はい!」


 そんな、大仰な物ではないと思うんですけども……ちょっと魔物に詳しいだけですし。


「このくらい大したことじゃないって思ってるな、その様子だと」


 まさに今考えていたことをぴたりと言い当てられ、びくっと肩が震えました。はあぁ、と、深いため息を一つついて、ヴァルターさんが真剣な顔でこちらを向きます。その目は本気で心配の色を浮かべているため、つい姿勢を正し言葉を待ちます。


「……一つ、言っておく。知識ってぇのは宝だ。今聞かせてもらった話だけでも、例えば本にまとめるとか、あるいはその知識を用いて新しい商売を始めるだとか、ざっと考えただけでも大量の活用手段はある。治癒術とか種族とかを抜きにしても、それだけで狙われる理由としては十分だ……あまり、迂闊に披露しないようにな。服飾の姉ちゃんもだ、いいな?」


「えっと……わかり、ました……?」

「にゃはは……了解、気を付けるにゃ」


 なるほど、何気なく披露していましたが……そもそも攻略サイトの知識とはいえ、それは無数の人の持ち寄った情報をまとめ、編集したものですから、ゲームの際は無数に集めれた情報でも実際に行おうとすればその労力は凄まじいのでしょう。これも、ある種の「知識チート」なるものになってしまうのですね。


「……まぁ、ミリアムはイリスよりはその点はしっかりしていて信頼できるから大丈夫だろ」

「ちょっと、レイジさん!?」

「というわけで、ちゃんと気を付けるんだよ、イリス?」

「兄様まで!?」


 頭を抱えて疲れたような様子でそんな失礼なことを言われました。二人とも、そんな言い方って酷いです! もう!

 しかも、周囲は一斉に頷いており、その様子に私は不機嫌ですと主張するように、若干はしたなく、乱暴に、サンドイッチを一つ掴むとがぶりと齧りつきました。






【後書き】

 ×乱暴に、はしたなくがぶりと齧りついた

 〇精一杯大きく口を開けてはむっとかぶりついた

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