風船の弾ける音

おれはいつか彼に嫌われるんじゃないかって毎日考える。

おれはとてもとても弱い。寂しがり屋でトラブルメーカー。だからいつ嫌われてもおかしくない。

一人では眠れないし暗いのは怖い。だれでもそうなのかもしれないけれど、おれだけがおかしいみたいな気がする。この世界にはおれだけなんじゃないかって。痛みだけがおれをわかってくれる気がする。


彼が優しく手当てしてくれるのは好きだし、彼が傷口を見て苦しそうな顔をするのも少しだけ好きだ。

でもそういうことでしか彼を繋ぎ止められないから。おれは最低で最悪な人間だから。

ほら、頭の奥で死ねって聞こえるんだ。

おれがおれに死ねって言ってるんだ。

こんな人間は死んだほうがいいっておれもよくわかってるつもりだよ。

でもね、おれが死んだら、薬もカッターもクラゲも彼の笑った顔も困った顔も優しい手当ても全部全部なくなってしまうんだ。

それを考えるだけでね、おれは、海に溺れるみたいに息苦しくなる。

やっぱりおれは弱い。


おれはクラゲだ。

脳みそのないクラゲと一緒だ。なんの意味もない。

ならどうしてかんがえる?おれには脳が存在してしまっている。

ああ苦しい。苦しいよ。おれはおれを殺せるほど強くはないのだ。

「ごめん、ごめんなさい。そばにいてほしい、そばにいさせて」

こんな陳腐なことしか言えないこの口をねえ、ふさいで。

おれは全部馬鹿らしくなって笑った。どうして生きるのかなんて彼にだってわかりはしないのに。おれは彼を困らせるしかできないのだ。

苦しい。苦しい。苦しい。彼の負担にしかなれないおれ。でも笑うしかなかった。何も変えられないから。

かなしいよ。

「あいしてる」

もう一度重なった彼の唇は冷たかった。

鼓膜の奥で風船の弾ける音がした。

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