しゅくしゅくぽん
すももももちゃん
しゅくしゅくぽん
「あれは……なんていうの?」
男は得体の知れぬものを見るような目をして、指をさしながら聞く。
「これは……しゅくしゅくぽんっていうんだよ」
女は
「しゅくしゅくぽんっていうんだ。あのヴェシカパイシスみたいなものが……」
男は興味深そうにジロジロとしゅくしゅくぽんを見る。
「そう。泡みたいな……水みたいな……スライムみたいな……そんなもの」
女は嬉しそうにしゅくしゅくぽんを眺めながら色々例える。
「あっ! しゅくしゅくぽんが笑ってる」
女はしゅくしゅくぽんに微笑み返す。
男は見えていないようで、「わかんないよ」と言っている。
「あっ! しゅくしゅくぽんが蹴ってる」
女はしゅくしゅくぽんにとても優しく蹴り返す。
男もわかったようで蹴ることはせずにしゅくしゅくぽんを優しく撫でる。
「あっ! しゅくしゅくぽんが歌ってる」
「本当だ! 歌ってるね」
男も女もしゅくしゅくぽんに優しく微笑みかける。
「あっ! しゅくしゅくぽんが泳いでる」
女はしゅくしゅくぽんが泳いでいるのを見て、感極まって涙が出ているようだ。
男はしゅくしゅくぽんに耳をあてて、じっくりとしゅくしゅくぽんの音を堪能している。
しゅくしゅくぽんの光が消え、急に
「あっ! しゅくしゅくぽんが死んだ」
女はしゅくしゅくぽんをとても可哀想な目で見ている。
男はしゅくしゅくぽんをとても気の毒そうに見ている。
「涙が出てきちゃった……」
男はしゅくしゅくぽんの死に「仕方がない」と言っている。
女はしゅくしゅくぽんの死が耐えられないという表情をしている。
「しゅくしゅくぽん……しゅくしゅくぽん……しゅくしゅくぽん……」
女は神に祈るような仕草をして、呪文のように唱えている。
男は呆れた顔でこれを見ている。
するとしゅくしゅくぽんは大きくなって、やがて光りだした。
「しゅくしゅくぽんが生き返った」
女は全身で喜びを表現するかのごとく舞っている。
「しゅくしゅくぽんは生き返ってないよ」
男は女の方を見て断言する。
「なんで?」
「生き物は生き返ることはないよ」
「私のしゅくしゅくぽんは生き返るよ、絶対」
しゅくしゅくぽん すももももちゃん @sumomomomochan
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