映画『不快の成功』

気が狂った女の話

彼女はどこにでもいる女だった

少しばかり裕福な家庭に生まれ

苦労は外の人間関係

高飛車でもなく被虐的でもなく

彼女は愛されたし

彼女は愛した

恋もしたし、別れも知った

友人と過ごす時間と

たった独りになった時間

容姿に文句はつけられない

格好に文句はつけられない

頭脳に文句は言えなかった

平々凡々

将来は見合いでもして暮らすだろう

そんな期待を押しつけられて

女は、にこりと笑いつつ

いつか自分で選んでみせる

そんなことを思っていた

出会いは突然

好いた人ができた

どこにでもいる男だが

彼女にとっては唯一の男で

身分の差があれど二人は恋をして愛し合った

それまでは、よかった

でも、皆々がソレは駄目だと女に言う

何故と返せど駄目だと言う

女はわからない

どこが駄目なのかわからない

しかし、男は身を引いた

何故、何故、と聞いても背を向けて

男は去った

女は独り

悲しみ暮れ、彼女は首を吊って死んだとさ


どうでもいい話

よくある話なのだが、まあ、どこにでもいる女の話だ。平々凡々の特質もない女でさ

家に文句も言わねえ、友にあわせるだけで

何も言わねえ、でも、にこりと笑うと幸せそうなもんだから、ちと憎らしい。普通に暮らしてたら、まあ、いい男ができたとさ。

ちょっとした身分差もあったが強く反対する理由もなかったもんだ。

だけどよぉ

なんかいやじゃねえか?

なあんもない女が幸せを見つけるなんて、

そりゃあ、その女は男と出会うまでは普通。

男の話をしはじめたら綻ぶように笑うのさ

幸せです、嬉しいです。

もうよう、暖かそうで憎いんだよ

こんな普通で、何か成し遂げたとか波瀾万丈の生まれだとか高飛車だとか卑屈だとか。

苦労を知らずに幸せになるなんて、周りは

許さなかったらしいよ。文句を言って駄目だ駄目だと言い続けて、初めて女の苦しそうな顔を見たわけだ。もう大喜びよ

普通の女が普通に傷ついて泣いて泣いて

男の方には金を積ませたら、あっさり別れてどっか行っちまった

そしたら首を吊ったんだよ! その女は

たかが独りになっただけだなのに、だ

意思のない女は馬鹿だねえ

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