映画『恋する席は過去未来』

木目が顔に見えるからシャアプペンシルで

なぞりがき

ささやかな授業の合間の走るペン

薄く薄く机に書いた。それはとても

たわいない


なぞりがき

木目が顔に見えたのかシャーペンで

なぞられて

少し間抜けな顔だった。だから優しく顔の

形を濃くしてみた


なぞられて

刻々とアホウになっていく木目氏が

書くところなく体を描いてみた

薄く薄く

我ながら傑作ではないだろうか


薄く薄く

顔を描きおえたと思うたら

今度は体が木目にそって描かれている

ふふ、ふふ、ふふ

あまりにおかしいけれど描き人に伝えよ


あははは

知らぬ制服に包まれて顔はアホウのまま

木目氏はぎょろり目で机に描かれた父兄

明日へのメッセージは

「ここにいて」


どうするか

落書きは昨日のままで鎮座する

好きになりそうだったよ

恋は恋で終わろうか

それもまた補習の間柄


木目氏は

たのしかった

と別れを告げた

いいアプローチだと思ったのに

やはりうまくはいかないナア


いい告白だったと思っている

けれどもキミのことを知っている

ボクは「  」に生きている

キミは「  」に生きている

ゴメンよ、この世でキミに恋せない

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