映画『カフカの妻』

自分が人間でないならば

お前をパクリと食べられる

生き物になりたい

それができないなら

苦しませるが

血を啜り、肉や骨を断てる

生き物になりたい

それよりも小さければ

お前を見守る何かになりたい

いいや、体の中に入れるなら

なんの生き物でもかまうまい

空気や塵に意思はないと思うから

やはり、お前をお前と認識し

お前をどうにかしたいと思う


自分が人間であるかぎり

この望みは叶わない

お前を食べることができない

無粋な刃物でも駄目で

切れそうな糸でも駄目だ

お湯を沸騰しても気分は晴れない

人間では駄目なんだ

「あなた、なんで」よりも

「たすけて――」こう名前をね

聞きたい

だから自分が人間でなくなるのを

想像しては楽しみにしている

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