第3話 ラプンツェル③

 どれくらい眠っていたことでしょう?


 エリーゼは、身体を揺すられて、重い瞼を開けるのでした。


「良かった!さっきからずっと、問いかけても、揺すっても動かないので、もうあの世へ逝ってしまわれたのかと思いましたよ、可愛いお嬢さん」


「あの、あなたは、どなたでしょうか?」


「ぼく?」

 そう言うと、彼の白い歯がキラッと光りました。


「僕は、この辺り一帯を治めるお城の王子です。ここへは、噂の塔の探索に来ました。でも、貴女はいったい、こんな所でなぜ、寝ていたのですか?」


「わたし、ジョーを、その、幼馴染のジョーを探していたんです。でも、見つからなくて」


「それはそれは、お気の毒な事です」


「わたし、その塔を見ました・・そうです!わたし、見たんです!確かに、見たの!そして、塔の中にジョーが・・・ううううう」


「ちょっと、落ち着きましょうか、お嬢さん。これでも飲んで。どうぞ」


「あ、ありがとう」


 そう言って、エリーゼは少し苦目のティーを飲みました。

 エリーゼは、やっと、目が覚めたようです。


「ぐぎゅるるる~~ん」

 エリーゼのお腹が鳴りました。

 彼女のお腹も目覚めたようです。

 彼女は顔を真っ赤にしました。

 そして、照れ隠しに笑いながら言いました。


「あっ、そうだ、わたし、こんなこともあろうかと、ビスケットを持って来てたんです。一緒に食べませんか?」


「それはそれは、ステキですね。それでは、頂戴しましょうか」


 こうして、二人はビスケットを食べながら、塔の事、塔の女性の事、ジョーの事、王子の婚約者の事、王子はなぜ一人で森に来たのかの理由などを一通り話すのでした。


「よし、少しは元気が出て来たようですね、エリーゼ」


「はい、モーリス王子様」


 二人は、お互いの名前を呼び合う程には打ち解けたようでした。


「それでは、叫んでみますか」

 そう言うと王子は大声を張り上げました。


「ラプンツェル、ラプンツェル!!塔よ、出でよ!」


 王子の大声に驚いたのか、王子の命令が届いたのか、いつの間にか、目の前に塔が現れたのでした。


 塔の上にはあの若く綺麗な女性がこちらを見ています。


「あっ!・・・あの、貴女は、そこで何をなさってるのですか?」

「助けてください。どうか、私を助けてください!」


 そう言う女性の綺麗な顔の柳眉が眉間に寄せられて、懇願する姿を見た王子は、居てもたってもいられなくなりました。

 そして、彼女の声は、王子の心の隅々にまで沁み渡り、彼女の元へ行かなければと、更に心がくのでした。


「貴女!ジョーはどうなったの?わたしのこと、覚えていないの?」

 エリーゼが叫びました。


「・・ジョーは、あの魔女に囚われてしまって・・わたしにはどうすることも・・うううううう・・・早く、助けてあげてください。今は、魔女はいません。早く、早くしてください。ここは、5階です。5階で待ってますから。5階ですよ」


「よし、早く行きましょう!」

 エリーゼと王子はこの塔の扉を開けて、入って行くのでした。


 つづく





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