第3話 オリヒメとヒコボシ③

 そして、衣を拾ってから2年目、ヒコボシと離れ離れになって5年目の凪の日がやって来ました。


 オリヒメは、親があまりにもしつこく言うのと、自分も、もうヒコボシはこの世にいないのではないかと思うようになり、遂に、この5年目の凪までにヒコボシが来てくれなければ、あるいは対岸にも居なければ、親の決めた結婚をすると約束したのでした。


 さあ、オリヒメは朝日が昇る前から岸に出かけて行き、対岸を見守っていました。


 川面には朝日が反射して、キラキラと川面を照らしていました。


 すると、上流から、ヒコボシの鉈が流れてきました。


 鉈は、殆ど木でできた取っ手の部分しか残っておらず、その木の部分には、やはり星のマークが彫られてありました。


 それは、まるでオリヒメの所に届けと言わんばかりに、オリヒメの居る岸に吸い寄せられるようにやって来ました。


 オリヒメは、それを取ると、ムネに掻き抱きました。


 オリヒメは、滂沱ぼうだの涙を流し、呟くのでした。


「ヒコボシ、わたし、待ってたのよ。ずっと、ずっと、待ってたの。ヒコボシ、あなたは私を置いて、天に召されてしまったのね」

 そう言うと、オリヒメは川に身を投じようとしました。


 しかし、ずっと見張っていた父親は、それを許すはずがありません。


 オリヒメは、父親に連れられて行き、父親は、家にオリヒメを閉じ込めると、庄屋の家に行くのでした。


 オリヒメは、母親に説得されます。


 母親は、まず、約束しましたねと言って責めました。


 そして、今度は一転して、涙ながらに私達を助けてくれと頼むのでした。


 オリヒメは、この両親のホントの娘ではありません。

 でも、これまで育ててもらった恩があります。


 オリヒメは、ヒコボシへの想いを封印して、お嫁に行くことにしたのでした。



 一方、ヒコボシは、そのオリヒメの婚姻が決まるより少し前に、川幅が遂にある一か所だけ狭くなっているところを発見したのでした。


 そうして、急流で、雨が激しく降る中を必死に泳いで渡ろうとしました。


 しかし、目論見よりも川の流れが急でした。


 ヒコボシは、遂に流されて、溺れてしまいました。


 鉈は、その時に、失ったのでした。



 ヒコボシの運命や如何に?



 つづく



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る