第2話 オリヒメとヒコボシ②
ヒコボシは、オリヒメにどうしても会いたいと、必死に川を遡ります。
川下の探索は、既に済ましました。
この川は、魔の海まで続いており、対岸へは行けませんでした。
後は、この川の上流を目指して、川が渡れるかを探索するのみです。
ヒコボシは、諦めませんでした。
上流へ行くとすぐに、深い森の中に入ります。
森の中には、怖い魔物達がいるので、ヒコボシは、用心しつつ森の中を歩いて行くのでした。
何とか、運良く森を抜けると、喉が渇きました。
川の水を飲んでいると、服がヨレヨレで臭いのが鼻につくので、服を脱いで洗いました。
そうは言っても、川は、急流です。
必死になってやっと洗い終わり、後ろを向くと、大きなキバをした大きなヒヒ型の魔物がいるではありませんか。
ヨダレを垂らしながら、ヒヒッと笑っていました。
ヒコボシは、腰に差していたナタを握りしめました。
ヒコボシは、別に武術の心得があるわけではありません。
ヒヒは、ヒヒッと言いながら、飛び掛かって来ました。
ヒコボシは、ナタを振るいました。
しかし、そのナタはヒヒのキバに当たって折れてしまいました。
ヒコボシは、ヒヒの手で顔を引っ掻けられながらも、何とか横に跳んでヒヒの攻撃をかいくぐると、干していた着物をヒヒの顔に投げつけました。
ヒヒは、前が見えなくなり、両手を
ヒコボシは、命が助かり安堵しましたが、また決意を新たに対岸への手掛かりを求めて上流へと向かうのでした。
一方、オリヒメは、毎日毎日、岸へ行き、対岸に向けて「ヒコボシーー、愛してるーー、待ってるからーー!」と叫ぶのでした。
もちろん、対岸に声が届いているわけではありません。
でも、ヒコボシがオリヒメの所へ行くと言っていたので、オリヒメは自分に出来る事はないかと考えて、このように声をかけるのを日課としたのでした。
そうして、二年が経った日、あの一年に一度の川が
オリヒメは、上流から愛しいヒコボシの衣が流れてくるのを見つけました。
人を呼んで、その衣を取ってもらいました。
確かに、ヒコボシの物でした。
その衣には、昔、オリヒメが刺繍した星の模様があったのでした。
衣は、ボロボロで、所々破れていました。
それには、エリの折り目や、袖の中に獣の毛が付着していました。
薄れてはいましたが、血痕のようなモノもありました。
衣を取ってくれた人からは、「多分、獣に襲われて川に落ちたんだろう。もう命がないかもしれない」と言われました。
オリヒメは、衣を胸に抱き、神様にヒコボシの無事を祈るのでした。
そうして、更に、1年が経ち、2年が経とうとしていました。
待ってろと言ってくれたヒコボシからは、何の音沙汰もありません。
オリヒメは、それでもと想いながら毎日岸に立ちました。
ですが、流石に、心のどこかで諦めに似た感情が生じておりました。
オリヒメの親は、心配でなりません。
オリヒメの婚期をこれ以上伸ばしては、良い縁談も無くなるかもしれないのです。
今まで以上に、何度も縁談を持ちかけるのですが、オリヒメは、ウンと言いません。
そんな時でした。
庄屋の放蕩息子との縁談が、オリヒメの親の所へ舞い込んで来ました。
オリヒメの親は、庄屋さんから借金があった為、オリヒメが結婚するように説得するのでした。
つづく
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