09 triggers ~凌駕する天下の才能~

立花レイ

プロローグ

プロローグ 最悪の日

 これは俺が野望を果たし、新たな国の長となる少し前の物語。


***


 「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 息が荒くなっていき、日汗が頬を伝ってボトンッと下に落ちる。

 

 絶望の瞬間だった。


 燃え盛る炎が大好きだった故郷を覆いつくしていき、とんでもないスピードで崩壊し始めていた。俺が呑気にお使いを行っている間に村は火の嵐と化していた。


 それも国民を守るためにある帝国騎士団によって。




 最初は何かの見間違えだと思った。騎士団がこんなことするはずない。国民を守るのが彼らの義務、殺すはず何てあり得ないんだ。いや、あってはならないんだ。




 信じたくなかった、否定したかった。しかし、現実は想像絶するほど暗闇に染まっていた。



 木の陰から見えたは村のみんなが帝国騎士団によって拘束され順々に運ばれていく悲惨なありさまだった。

 


 俺の憧れた強くてカッコイイ騎士団はどこにもなく、あるのは血みどろな嫌な影。今やそんな騎士団に恐怖を抱いてしまい心臓が波打ち、全神経に行き渡る鳥肌が龍のごとく身体に走った。


 心の中で救済を求めても届くはずもない。

 

 小さかった俺にこの最悪な状況を打破する力はなく、ただ残酷な光景を一人震えてみることしかできなかった。



 だが、これだけで絶望は終わらない。





 “大切なものを全て失う気持ち、お前らに分かるか?”

 




 パンッと轟く銃声音が俺の精神を引き裂く。

 

 弾丸と悲鳴、泣き叫ぶ声が雨のごとく鳴り響き、その虚音は段々と小さくなっていった。


 止めてくれ……お願いだから殺さないでくれ……

 俺たちが何をしたっていうんだ


 村は国の末端にあるため資源が豊富ではなく、とても良い生活とは言えなかった。しかし、村全体で協力して支え合って生き抜いてきた。みんなが家族みたいなものだったんだ。


 騎士団に手を煩わせることなんて何一つしてない。


 なのにどうして……どうしてなんだ……









 誰か……もういっそ誰でもいいよ。お願い。騎士団を殺してくれ









 どうしようもなかった俺はひたすら願うしかなかった。

 唯一出来ることを精一杯尽くすしかなかった。










 「ゼル!いるんだろ!!お前がこの村を救ってくれ!!そんでもってこのクソったれな国を壊せ!!」








 燃え滾る炎の中、一風を凌駕する逞しい雄叫びが村中に響いた。





 兄の声だった。




 力強い声で最後の希望である俺にすべてを託したかのようなそんな声だった。







これが俺の原点。






最強になるまでの長くて短い復讐劇の始まりだ。

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