第116話 しょぼい
エスト達が転移してきた場所はイスラム原理主義国が首都としていた街であった場所だ。
すでに過去形である。
この十二時間の間にただのがれきの山になってしまっていた。
バーン大佐が海軍の所属なので、シールズの部隊と連絡を取りすぐに、シーホークヘリが爆音を響かせて飛んできた。
この機体はシールズの部隊単位で移動できるよう十二人乗りに改造してあるそうだ。
ヘリが到着するとすぐに部隊が降りてきてバーン大佐に敬礼する。
「早速だがモンスターとの戦闘を行いカードを手に入れたメンバーは誰だ?」
四名の隊員が一歩前へ出た。
「こちらに、いらっしゃるのはカージノ王国のエスト・ペティシャティ伯爵だ。伯爵がカードと能力の確認をされたいそうなので協力を頼む」
バーン大佐がそう告げると四名の隊員がカードを見せてくれた。
事前情報に会った通りのアラビア文字だ。
読めねー……
「アラビア文字を理解できるメンバーはいますか?」
「残念ながらこの班には、アラビア文字を読めるメンバーは在籍していません」
「あの……私読めます」
そう言ったのは東雲さんだった。
「凄いね東雲さん。教えてもらってもいい?」
「はい。四名ともランクは第八階位ですね、英語基準のHランクです。そして取得スキルは命中率向上という意味ですね」
「狙撃スキルと同じという事かな?」
「どうでしょう、ニュアンス的にはもう少し弱いというか、少し上がるという表現ですね」
それだけではよく分からないので、ステータスを確認してみることにした。
お告げカードを手に入れた四名だけでなく十二人全員を見る。
ん-……差がないな。
これじゃぁ分からない。
「まだこの辺りにモンスターはいますか?」
「はい、がれきの下から湧いてきます」
「それでは、私ががれきを魔法で取り払いますので、まだカードを持ってない方がナイフでゴブリンを倒してください。オーガが出れば私が倒します」
俺がそう言うと「「「イエッサー」」」と返事が帰って来た。
辺りに山積みになっているがれきに向かって風魔法を発動すると、三十メートル四方の瓦礫が飛び散り、その下からゴブリン十匹、オーガ二匹が現れた。
思ったより沢山現れたので、少しびっくりしたがシールズのメンバーは流石というか、果敢にナイフ一本でゴブリンに襲い掛かった。
シールズのメンバー全員の数と、モンスターの数が揃っていたのが良かったのか悪かったのか、オーガ二匹にもナイフ一本で挑みかかった二名の隊員が当たり前のように返り討ちにあって腕を吹き飛ばされた。
「バーン大佐、こいつら命知らずすぎだろ? なんでオーガにナイフ一本で挑むんだ」
バーン大佐もこめかみを指で押さえていた。
俺がバーン大佐に文句を言ってる間に他の隊員が腕を吹き飛ばされた二名を引き下がらせた。
するとそのタイミングで東雲さんが刀を抜いて、オーガ二匹を頭から真っ二つに切り裂いた。
目にもとまらぬ早業ってやつだな。
シールズの隊員も目が釘付けになっていた。
俺はオーガの退治を確認すると、腕を吹き飛ばされた二人の腕を拾ってきてもらい、大雑把に場所を合わせると浄化をかけて砂やごみを取り払ってフルリカバリーの魔法をかけると、無事に腕は繋がった。
動きを確認しているが問題は無さそうだ。
「オーガは任せろと言っただろ。腕だから何とかなったが首だと間に合わなかったぞ。まあいい、今カードが出たやつらは見せろ」
行動が脳筋すぎる奴らに対して俺も少し扱いが雑になった。
こいつらって頭脳や戦闘力がすべてエリートなはずだよな?
今の一連の流れの中で、この十二人が俺と東雲さんを見る目が変わっていて俺の指示に対してビシッと敬礼を決めた。
「「「「「アイアイサー!」」」」」
そしてほとんどの隊員が東雲さんを憧れのまなざしで見ている。
一目ぼれなのか?
今カードを獲得した隊員たちから提出してもらって再び東雲さんに読んでもらう。
「ランクは全員が第八階位ですね。スキルは攻撃力+1、体力+2、攻撃力+2、敏捷+1、運+1、体力+1ですね」
あれ……しょぼい。
だが、俺はそれを口に出したりはしなかった。
それよりもドロップはどうだ?
ゴブリンから魔石が三個ほど出ていたけどサイズも小さい。
カージノでもゴブリンの魔石は大きくないけどそれより一回り小さく感じる。
東雲さんが倒したオーガだけは普通に大きめの魔石が落ちていた。
倒した人間のステータスも魔石の大きさに関係するのか?
いや、それだと俺が倒した凄い大きさになりそうだから違うか。
単純にモンスターのレベルが低いんだろう。
これ以上のことは、オグリーヌに確認しなきゃ分からないな。
「今はこの二種類以外のモンスターは確認されてないんですね?」
「アイサー」
「オーガはどうやって倒したんですか?」
「頭部にジャベリンを打ち込んで倒しましたサー」
「ジャベリンは数はあるんですよね?」
「アイサー」
「バーン大佐、対処自体が出来るのであれば一度戻りましょう。カージノの神殿で確認しなければ分からないことが多すぎます」
「解りました」
シールズのメンバーにも声をかけておく。
「くれぐれも無茶をするなよ? 銃火器は後一年で使えなくなるんだから、使える場所で思いっきり使っておけよ」
「「「「「アイアイサー」」」」」
俺たちは三人で修理船へと戻った。
「バーン大佐、ありがとうございました」
「いえいえ、しかし伯爵の秘書さんミスシノノメも凄い実力なんですね、あの三メートル越えの鬼を一撃とか、見ほれましたよ」
「恐らく現時点では剣士として世界最強だと思いますよ彼女は」
「信じるしかありませんね」
「それよりも、これがきっかけとなって、世界中の魔素が濃い場所でモンスターの発生につながる心配があるので怖いですね」
「それは爆発を伴わなくてもという事ですか?」
「今以上に、魔素が濃くなれば十分にあり得るでしょうね。私は王都の神殿に用事がありますので、これで失礼させていただきます。
バーン大佐と握手を交わすと王宮へと転移を行った。
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