第96話 テレビ出演決定
ダンジョン初体験を終えると日本の自宅へと戻った。
昨日は遅くまで、みんなが居たせいなのか今日はすでに事務所には誰もいなかった。
それでも玄関には『パーフェクトディフェンダーズ』社のガードが立っている。
二十四時間、二人体制のガードの料金は結構な高額ではあると思うけど、これはけちる部分ではない。
門の前には、カージノ大使館の正門に繋がる日本政府の税関があるために、警備局の出張所も併設されている。
さすがにこの環境であれば先日のような襲撃は起こらないだろう。
東雲さんに明日のスケジュールの確認をすると、丸一日の空きがあった。
「ホタル、どうする? 明日ならテレビ出演ぶっこんでも大丈夫だけど」
「前日に、いきなり言ってもどうでしょうね」
「ほらホタルのお袋さんが何やら暗躍してんだろ? 一回だけの約束でなら出るって言えばそれである程度のお小遣いは出るだろうから納得しないか?」
「どうでしょうね一回話を聞けば、またお願いって言ってくるだけだと思いますから、うちの母は無視でいいです。私が直接お小遣い程度であれば渡しますから」
「そうかホタルがそう言うならそれでいいか」
「先輩どこに電話しましょうか? ああ、そうだな前に無限さんが出てた所あるじゃん、大崎さんや財前さんと一緒に。そこの局に電話してみて」
「了解です」
ホタルが電話をかけると、すぐに番組制作局の偉い人に電話が回って明日のゴールデンタイムに特番をぶち込むことになった。
時間は放送が三時間、事前の打ち合わせに三時間で計六時間も拘束される。
出演料は結構破格とも言える、一人五百万円であった。
「お袋さんのお小遣いには十分だな」
「ですね。先輩はどうするんですか? 出演料」
「そうだな、俺もホタルを見習って親父たちにリフォーム費用にでも使ってくれと言って渡すかな」
「リフォームって……全部渡しちゃうんですか?」
「ああ、そのつもりだけどホタルは違ったのか?」
「私はまだカージノからお給料もらってないし、JLJでも全員一律の都の最低賃金だけですから、私の生活費は取りますよ」
「そうだったんだ。陛下に言っておくな」
「ゴルでもらっても困りますよね。金塊だとこっちで日本円にすると無駄に税金とられますし、どうしましょう」
「金なら今はいくらでも欲しいと思ってる人がいるから、それこそターナーさんにでも交渉すれば大丈夫だろ? 持ち込みは俺がやれば問題ないし」
東雲さんが突っ込みを入れてくる。
「小栗さん、エスト伯爵なら大丈夫ですが、小栗さんが金を持ち込んだりしたのがマルサに見つかると結構な事件になっちゃいますから、その辺りは
「あ、そういうのあるんだな。了解です。東雲さん」
その後は三人で食事に出かけ、帰ってからはスキルの受け渡しに時間を取った。
そろそろ寝ようという時になり、東雲さんから念話が入る。
『あれ? どうしましたか』
『すいません小栗さん。今日カージノで武器を買っていただいたじゃないですか、それでご相談なんですけど、私のスタイルと言うか習得した今までの経験を生かそうと思うと、やはり日本刀のほうが扱いやすいと感じたのですが、日本刀を用意したらそれを魔法金属に錬金するなんてことは出来ますか?』
『はい、可能ですよ』
『それでは私は明日、小栗さんたちがテレビ出演をなさっている時間を使って日本刀を用意してきますので、よろしくお願いいたします』
『了解です。それではおやすみなさい』
『はい、おやすみなさい』
翌日になり午前中にアレク電機の川越常務から連絡が入った。
『おはようございます小栗さん。製品版の魔道発電機が完成いたしました。早速、発表の手はずを整えたいと思いますがどうしましょう』
『早かったですね。発表に関しては社長と財前さんに任せていますので、お二方と打ち合わせをしていただいて進めてくださるようにお願いします』
『了解しました。それでは連絡を入れて準備に入らせていただきます。それともう一点。発電所仕様の魔道送風機の仕様書が出来上がっています。こちらはどうしましょうか?』
『パソコンのデータで暗号化して送ってください。一週間もあれば試作品を用意できると思います』
『了解しました』
でもアレク電機さんって結構フットワーク軽いよな。
まさに社運をかけて取り組んでる感じなのかもな。
部屋でテレビをつけると、俺とホタルのテレビ出演が決まったことのテロップが朝の番組の中でも流れ続けていて、ちょっとビビった。
藤崎さんが連絡してくる。
『小栗さん、朝からテレビ局からの電話がひっきりなしなんですが、どう返事したらいいんですか?』
『あれ? テレビは今日出るって決まってるのになんでですか?』
『今日出る局以外の番組プロデューサー達からです。各局一人じゃなく、番組ごとにかけてくるもんだから、ずっと電話が鳴りっぱなしですよ』
『参ったな……テレビ関係は、JLJのホームページへの申し込みでしか対応しませんと返事しておいてください』
『了解しました』
『あ、あと、申し込みに対しての、お断り文章をテンプレで用意しておいてください。今日申し込まれてきたら、すべてそのテンプレ文章を送ることで対応しましょう。検討させていただきますの一文を入れて置いたらしばらくは大丈夫でしょ?』
『絶対、出る気ないですよね? でも一応了解です』
出ても出なくても問題が巻き起こるんだな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます