第83話 タイラーさんってどんな人?
夢幻さんによる治療で四人の重病の奴隷たちは回復に向かっているようだ。
部位欠損で俺が治療を行った三人も少しリハビリを行えば、問題無く日常生活を行えるようになるだろう。
「夢幻さん、この奴隷たちを治療した後はどうするのですか?」
「勿論、海岸の小栗君の領地で働いてもらうよ。それを考えたら人数は何人居ても足らないし、それに、今日私が治療を行った女の子のラビールやチーワの容姿を見たかい? 病気によって痩せてはいるが、これからちゃんと食事をして清潔にすれば、日本のアイドルなんかではとても太刀打ちできないほどの可愛さだよ。私の夢の生活はここにある! と言っても過言ではないね」
やっぱり夢幻さんは夢幻さんだった。
「まぁ生活費などはある程度かかりますけど、一応この国の法律では奴隷に対しての給料の支払いは必要ありませんので、衣食住の世話さえきちんとすれば労働力としては十分に当てにできるでしょう。でも何ができるとかの確認をせずに購入したので、本人達と話さないといけませんね」
「そうだな、私がこの街に常駐することは、さすがにまだ出来ないので、暫くは小栗君に奴隷たちの面倒を見てもらう事になるが、よろしく頼むな」
「この屋敷も俺とホタルだけでなく、一緒に転移したアンドレ隊長やシェフのアダムさん達も住んでいるので、奴隷の子たちの身体が動くようになったら、フローラたちにこの屋敷での仕事から教えてもらう様にしておきます」
俺はアンドレ隊長に連絡を入れ、奴隷を購入した
そういった手段で奴隷を格安の値段で入手できることに関してはアンドレ隊長も興味が湧いたようだったが、地球で生活していくという意味では奴隷制度の存続を肯定するような考え方もどうかな? と思うところがあるので、その辺りはじっくりと考える必要があるだろう。
このカージノ王国が長い歴史の中で奴隷制度を導入し続けていることの意味も、奴隷制度に替わる代案も提示できない以上、闇雲に反対というだけでは駄目だと思うし、この辺りはちゃんと考えないと駄目だろう。
日本時間の午後には『パーフェクトディフェンダーズ』社のタイラーさんとの約束もあるので日本へと戻る事にした。
一応アンドレ隊長に「タイラーさんってどんな人ですか?」って聞いてみたら「うちの社長だよ」と言われた。
社長自ら来るとか結構びっくりしたが、そういえば外交ルートを使って金を持ち込むみたいな事言ってたから、それなりの階級の人じゃないと無理なのか? と納得した。
JLJの事務所に戻ると、社長と大崎さんと財前さんが三人で話していた。
「おお、帰って来たな小栗君。今日はこの後の都合はどうだ?」
「財前さん、今日は英国からの来客の予定がありますが何か急ぎの用事ですか?」
「今、社長と大崎の三人で話しておったんじゃが、電力会社の連中とエネルギー庁、アレク電機とJLJの四者会談を急がないと行けなくなったから、小栗君も時間が取れるようであれば参加して欲しかったんだがな」
「私としては、個々の事業の進展に関しては全面的に財前さんや大崎さんを信頼していますので、決定した内容を教えていただければそれで構わないと思っています。その辺りの調整は斎藤社長に従いますのでよろしくお願いします」
「ふむ。解った。任されようじゃないか。別件で持ち株会社の話は全員集まった状態で一度きちんとしておきたいから、都合のいい日を決めてもらえるか?」
「えーと、一応明後日以降はポーラ王女の来日まで大きな用事は無いので時間は取れます。あ、それと大崎さん、カージノ大使館の仮囲い鋼板を、もうはずしていただいても大丈夫ですのでお願いします。これもポーラ王女の来日前には終わらせておきたいので」
「もういいのか? 解った明後日中に終わらせるようにしておこう」
大崎さんから了承を貰い、財前さんは社長と相談して三日後に全員で集まる様にしようと提案してくれた。
それともう一件、伝えて置く事があったのを思い出した。
「みなさんにお願いがあります。藤崎さんの妹さんに魔法治療を行ったのですが、今後JLJで事務をしていただこうと思うのですが構わないでしょうか?」
社長たちからも「必要だと思ってはいたが、会社の特殊性から適任者がいなかったので後回しにしていた部分なので助かります」と言われたのでこの件はとりあえず決定でいいだろう。
藤崎さんも、みんなにお礼を言われた。
一通りの話を終えて、一度病院にいる東雲さんに連絡を入れた。
輸血は行ったが、怪我ももう回復しているのでタイラーさんとの面会には一緒に付き添うと返事が返ってきた。
心配ではあるけど、東雲さんからしてみれば俺が海外の人と日本政府の紐付き以外で会う事の方が心配なんだろう……
十五時前にタイラーさんから電話がかかって来て、十八時に都内の有名ホテルでの食事に誘われたので了承する。
こちらからは俺とホタル、東雲さんの三人で出向く事を伝えた。
タイラーさんからも一緒に連れて行く人間がいると伝えられ、外国人の場合は報告しなきゃいけないので、確認を取ると日本人だと言われ「ミスターオグリも知っている人です」と伝えられた。
「いったい誰ですか?」
「ミスターフクヤマだよ」
「えーと運送会社の?」
「そうだ。うちの会社に船団の護衛の依頼があったから、その顔合わせも一緒にさせて貰おうと思ってね」
「そうだったんですか。それは安心です」
そう答えて電話を切り財前さんに確認した。
「小栗君が今日会うのがタイラー氏だと言うのは知らなかったが、福山が船団の護衛に『パーフェクトディフェンダーズ』社に依頼をしたことは聞いておったぞ。海軍上がりの兵士の所属が多いので有名な所だからな」
「あー、そうだったんですね。『ダービーキングダム』でも信頼できるところを見せてもらいましたし、福山さんもあの船に乗っていた以上は当然の選択だと思います」
「まーそういうことだ」
俺は少しだけ安心してホタルと一緒に東雲さんを迎えに行った。
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