第73話 大使館の人達
【聖女】スキルを獲得した夢幻さんに藤崎さんが話し掛ける。
「あの、夢幻さん。早速お願いしてもいいですか」
「ああ、任せたまえ。時価三千億円のスキルを身につけさせてもらった以上バンバン不治の病の治療はしていくよ」
さすがにそれは困るので俺が釘を刺して置いた。
「あの……夢幻さん。大っぴらにそんな発言しちゃうと絶対身動きとれなくなると思いますよ。それに現時点ではまだ不法渡航者になりますから絶対内緒にして下さいね」
「ああ……そうか、解ったよ。それじゃぁ藤崎さん、妹さんを一時帰宅させるのは可能ですか? さすがに入院先で私が診療行為を行うのはダメですから」
「はい、時々自宅に連れ帰ってますから大丈夫です。早速連絡を入れて許可を取りますね」
東雲さんが俺に確認を取る。
「小栗さん。この事実は島長官に知らせることは許していただけますか? 発表はできないですけど、重要な能力である事は間違いないので……医学博士の夢幻さんが【聖女】能力を所持したことは日本の切り札になるかも知れませんから」
「あー、まーしょうがないですね、俺やホタルが中途半端に医学を学んで対処をするよりずっと頼りになりますし」
俺がそう返事をすると東雲さんが耳元で囁いた「本当は、清い身体が条件ってホタルさんが言った時『やった!』て思ったんですけどね」
どう返事していいか困るような事を言わないで欲しいと思ったよ。
とりあえず目標は達成したので、東雲さんと夢幻さんにそれぞれ身分証を作成して貰ってから一度日本へと戻る事にした。
勿論、フローラとフラワーも合流してから戻った。
俺はホタルとフローラとフラワーを連れて大使館へと転移した。
藤崎さんは妹さんを迎えに行って、夢幻さんは現地を見た上での企画書を纏め始めた。
東雲さんは島長官へ報告に行くそうだ。
大使館には既にザック達が、セバスチャンの採用した侍女や侍従たちを連れて来ていて、屋敷で作業を開始していた。
俺はセバスチャンに声を掛ける。
「セバスチャン、もう必要な人数は揃ったのかい?」
「エスト伯爵、王女殿下のお側付きになれるチャンスですから、お触れを出してすぐに定員が埋まりました。後お伺いしておりませんでしたので馬車と馬と厩務員の手配をしておりませんが、いかがいたしましょうか?」
「あー、この国では馬車は使う事が無いのでそれは必要ないな。料理人はどうだ?」
「はい、料理人は公爵家でシェフを務めていた者がまだ空いていましたので、料理人も揃えて連れてきております」
「そうか助かる。当面はこの屋敷で働く者達の食事が中心となるが、三食きちんと食べれるようによろしく頼むな」
「はい、かしこまりました。食材などの仕入れは本国で仕入れを行ってよろしいのでしょうか?」
「そうだな。シェフにマジックバッグを持たせるのでそれで買い入れをする様に伝えてくれ。現状では王宮の中庭にしか転移の扉が開かれて無いので、くれぐれも気を付けて行動を行う様に頼むぞ」
「かしこまりました」
「伯爵とリュシオル様の食事はこちらでご用意させて頂いてよろしいのでしょうか?」
「いや、俺とリュシオルは基本的にここでは食べないので、必要な時はその都度指示を出します。後、俺とリュシオルは専属のメイドとしてフローラとフラワーを使うので、気を使わないようにお願いします。王女とザックとアインに関しては、この屋敷のメンバーでよろしくお願いします」
「かしこまりました」
大使館の建物はかなり広いが、スタッフも揃って準備は万端となった。
王女が着任したら少しずつでも日本語と英語くらいは喋れるようになってもらわないとな。
俺の部屋は一階の応接室の隣に三十畳ほどの執務室と横に控えの間があって、ホタルやフラワーたちは基本そこを利用して貰う。
控えの間には台所も完備してあって、お茶の用意もできるし、トイレやシャワールームも併設してある。
意外に現代的って言うか、日本人の俺でも不便を感じない造りだよな。
違う点があるとすれば、水回りの処理はすべて魔道具で行う事くらいだ。
日本でスライム濾過槽を使う訳にはいかないから、生活魔法のクリーンで排水を分解して庭園の噴水や、散水に利用する魔道具を設置してある。
ホタルが声を掛けてきた。
「先輩、【聖女】スキルで聖属性魔法を覚えたのは良いんですけど私、他の能力低いままですから、あまり役に立てないですけど、どうしましょう」
「あー、そうだな夢幻さんもそれは同じだけど、MP低いと高位魔法は発動も出来ないかもな。俺のスキルの貸し出しが出来るって言ってたけど、ステータス系のスキルを貸すと俺も困るから、買うしかないな」
「お金かかりますねー」
「そうだな。事業が動き始めたらすぐ稼げるようにはなるけど、財前さんが集めた資金の流用はちょっと出来ないし、目立たない程度に稼ごうか」
「はーい、基本はFXでいいですか?」
「そうだな、後はカージノで魔法陣とか売って稼ごう」
「フローラとフラワーのスキルも買わなくちゃいけないですしね」
「そう言えば欲しいスキルは聞いてくれた?」
「はい、あのですね馬娘たちはステータスの項目が違うみたいです」
「そうなんだ? どんな風に」
「スピード、スタミナ、パワー、ガッツ、インテリジェントの五項目だそうです。モンスターを倒すか十九歳を迎えると私達と同じになるらしいですけど、それまではその能力しか上げれないようですよ。後は馬娘だけの固有スキルが競争場や距離や天候、戦法なんかで芽生えることがあるらしいです」
「へー丸っきり競争ゲームの要素と同じ感じだな、まぁ確かに身体強化とか魔法を使徒馬娘が使うとどうにもならないしね。回復魔法使いながら走ったりしたらドーピングだし……」
「で、フローラたちは二人とも貰えるならスピードスキルが欲しいそうです。ちなみにAランク馬娘で平均的な能力でレベル5は超えてるらしいです」
俺がホタルとそんな話をしているとフローラが話し掛けてきた。
「あの……ご主人様、私達本当によくしてもらってるので、スキルなんていりませんから、このままご主人様の側に居続けさせて貰えれば十分ですから」
なんともけなげだ……
「フローラ、じゃぁさ俺達が始める新しい競争のスター選手になってもらいたいから、その為に力をつけて欲しいって俺がお願いしたら聞いてくれるかい?」
「ご主人様のお願い……ですか?」
「そうだ」
フローラとフラワーが頷き合って返事をした。
「ご主人様の望みであれば頑張ります!」
「そうか、じゃぁさ今日見に行った俺の領地のビーチに新しい競走場を作って、新しいルールで走って貰いたいんだ。その為の試験データを取りたいから協力して貰えるかな?」
「「はい!」」
「ホタル、夢幻さんに二人を預けるのは危険すぎるから、夢幻さんがデータを取る時は必ずホタルが付き添ってくれよ?」
「はい、でも夢幻さん、あの歳まで清い身体で居続けるメンタルの強さがあるなら大丈夫そうですけどね?」
「あ、それ、俺もちょっとビビったよ。だって夢幻さんとか普通にしてたらメチャもてそうな感じなのにね」
「そう言えば話は変わりますけど藤崎さんの妹さんは本当に大丈夫なんでしょうか?」
「心配だよね、俺も気になるから治療の現場は一緒に見に行こう」
「了解です」
フラワーとフローラにこの部屋でゆっくりしておくように伝えると、JLJの事務所へと戻った。
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