第71話  夢幻さん達のスキル獲得

 モンスターの現れる林を前にして、俺がみんなに説明をする。


「このカージノのルールだと、ラストアタックを取る事で経験値の様なものが貰えると思います。ラノベ展開であるようなパーティ機能は無いみたいですので」

「そうなると私達が全員、直接モンスターを倒さなければならないんだね」と夢幻さんが聞いて来た。


「はい。そうですね。後は確定では無いんですけど、最初のモンスター討伐は、飛び道具は辞めておいた方がいいと思います。貰えるギフトが【狙撃】スキルが現れる可能性が高いようなので」

「それだと、剣とかナイフのような物で止めをささないと駄目って事かい?」


「そうですね、一応この国の人に聞いた範囲でしか分からないんですが、お告げカードを手に入れた時に貰えるギフトは、その人の今までの人生が大きく関わるそうですが先日、斎藤社長に実験で狩りをしてもらったところ、銃など初めて持つのに【狙撃】スキルが身についたので、地球の現代兵器を使った場合高確率で【狙撃】スキルになるのではないか? と推測しました」

「解った。それでは武器は貸してもらえるのかい?」


 俺はとりあえず、インベントリからM4カービンを一丁取り出してホタルに渡した。

 東雲さんと夢幻さんと藤崎さんにはそれぞれサバイバルナイフを渡す。


「敵は俺が魔法で致命傷を避けて倒しますから、みなさんは止めを刺してください。全員がお告げカードを手に入れたら一度こっちに戻って内容を確認してランクがI以上に上がるまで今度は全員M4カービンを持って狩りをしてもらいます」


 俺が先頭に立ち探知スキルを使って反応のあった方向へと侵入した。


 都合よく三匹のゴブリンが現れたので太もも辺りの高さに向けて【エアカッター】を放つ。

 三匹のゴブリンが足を失って倒れたので「今です! 止めを刺してください」と告げた。


 東雲さんが最初にゴブリンに近寄り、首筋にナイフを滑らす。

 青い血を流しながらゴブリンは息絶えた。


 東雲さんの足元に銀色のカードが落ちる。


 その様子を見ていた藤崎さんの顔色が少し悪いけど大丈夫かな?

 次は夢幻さんが、ゴブリンの胸にナイフを突き立ててカードを手に入れる。

 最期は藤崎さんがゴブリンに近寄ったが、まだ死んではいないので激しく手を振って抵抗された。

 ゴブリンの手が藤崎さんの足に当たり、その場に転んだ。


「藤崎さん! 大丈夫ですか?」と声を掛けると、その場に倒れているゴブリンの血で体中青く染まった藤崎さんが、怪しい笑みを浮かべながら藤崎さんを転ばしたゴブリンをナイフでめった刺しにした。


 俺達はその姿に少し引いてしまった……


 ホタルが藤崎さんに近寄り「藤崎さん! もうゴブリン死んでますから、正気に戻ってください」と声を掛けた。


 ハッとした表情になり「すいません。我を忘れちゃいました」と頭を下げた。

 でも、全身ゴブリンの血で真っ青になっていたので、凄い迫力がある……


「ちょっとそのままって訳に行かないので、クリーンをかけますね」


 俺が生活魔法のクリーンをかけると青い血まみれだった藤崎さんが綺麗になる。


「もう大丈夫ですから、予定通りお告げカードのチェックをしに戻りましょう」


 スタート地点に戻って、それぞれのカードを確認した。


 ホタルが東雲さんのカードを見る。


「東雲さん凄いって言うか流石ですね。Hランクです。アンドレ隊長やプロサッカー選手だったカールさんと同じランクですよ。そしてスキルは剣術ですね」

「ありがとうございます。私が一番欲しいと思っていたスキルです」


 続いてホタルは夢幻さんのカードを見る。


「夢幻さんは、Jランクでした。私と同じです。スキルは薬師ですね」

「おお、薬師って結構凄いのかい?」


「ランク3のスキルだから買えば千二百五十万ゴルだったはずです」

「このスキルが合ったらポーションとか作れるっていう事なのかな?」


 その問いかけに対して俺が返事をした。


「薬師は確かにポーションや色々な薬を作る事が出来るんですけど、前提条件として薬師としてのランクまでの薬しか作れないので、とてもお金がかかりますね。例えば【エリクサー】はランク十の薬ですから、それを作れるようになるには後五百十一個の薬師のスキルを買わなければならないんです」

「それはまた随分お金が掛かりそうだな」


「えーと六十三億八千七百五十万ゴルですね。頑張ってゴールド貯めて下さいね」

「ふむ、でもラノベなんかでエリクサー一個の価値を計算すると五十億円くらいの価値になっても不思議じゃないから、六十三億ゴルで自分で作れるようになるなら割安なのかな?」


「どうでしょう? 材料費が結構かかると思いますし、材料を集めること自体大変だと思いますよ?」

「そうか、そんなに美味しい話は転がって無いってことだな。そう言えばこれで【聖女】は覚えられるのかい?」


「いえ、カードのレベルを上げないと覚える事が出来ないですね。この後はM4カービンで狩りをしてもらいますから、結構すぐ上がると思います」


 最後に藤崎さんのカードを見せてもらった。


「藤崎さんはIランクですね。スキルは……【バーサーカー】です。先輩バーサーカーって持ってます?」

「いや……持って無いな。ユニークスキルなんじゃないかな?」


「あの……【バーサーカー】って何が出来るんでしょうか?」

「恐らくさっきゴブリンに倒された時に藤崎さんが陥った状態が、戦闘時に常に起こる可能性がありますね。北欧ではベルセルク日本語訳では狂戦士ですから」


「えっ、嫌ですそんなの消しちゃいたいです。消す方法は無いんですか?」

「ありますよ。女神神殿で使徒の競争に賭けて外れれば無くなります」


「えーと、それって今から連れて行ってっもらっていいですか?」

「いいですけど、みんなどうしますか?」


 そう聞くとホタルが代表して答えた。


「私達は、ここでゴブリン狩ってランクアップを目指します。M4を心ゆくまで撃てる機会なんて日本じゃ中々ないですから」

「じゃぁ予備の弾倉を渡して置くから、気を付けて狩りしてくれよ。危険な事があったらすぐ連絡してくれ」


「はーい。東雲さんは銃の扱いは大丈夫ですよね? 夢幻さんはどうですか?」

「はい、M4カービンは任務でも扱った事があります」

「私は実際に撃った事など無いな」


「じゃぁ少し扱い方を練習してから行きましょー!」


 その様子が少し心配だったけど、東雲さんが居れば大丈夫だろう?

 と思って藤崎さんと二人で街へと戻った。

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