第68話 記者会見でのやり取り

 総理との会談が終わると、島長官と共に日本のメディアへの共同記者会見へと移った。


 今回は俺が席に着き、すぐ後ろにリュシオルが控えて、ザックとアイン、フローラとフラワーが更に後ろへと立つという形だ。


 別に俺だけでも良かったんだけど、絵面的にフローラとフラワーが居た方がいいかな? 的な感じで、それならザック達も居なきゃダメだろって事でこうなった。


「改めまして日本の皆さま。カージノ王国のエスト・ペティシャティ―と申します。今回の私の来日は正式な在日本大使となる『ポーラ・グラディウス』カージノ王国第一王女が来日するための準備を行う為です。既に本日早朝に、カージノ王国の伝統的な建築物を大使館として使用するための移築を行い、日本政府の求める税関施設の設置が終わり次第、カージノ王国の文化を広く認知して頂くための拠点として活用していきます。先日より後ろに控えるザックとアインの両騎士爵が日本で学びながら、カージノ王国との文化の違いや、他国との付き合い方などを検討させて頂きました。今後カージノ王国がこの地球上に存在する各国と仲良く共存して行けるように努力したいと思います。カージノ王国として地球側各国に対して現時点でお伝え出来ることは多くはありませんが、人種も文化もまったく異なる国家ですので、すべてが地球側の国々の都合に合わすことも出来るとは思っておりません。カージノ王国の方針と致しましては


①カージノ王国から地球に存在する他国に対して、戦争、侵略行為を仕掛けることはありません。

②ただし敵対的な攻撃を受けた場合は、これを排除し報復活動は行います。

③カージノ王国は自給率百パーセントの国家であるため、地球の資源を必要としておりませんので、積極的な貿易の予定はありません。しかしながら、新たな文化を受け入れる用意はありますので、その点に関しては検討の余地もあります。

④今後の交流のために必要と思われる設備に関しては、国家としての取り組みでは無く、民間レベルでの交流を基本として進めていきたいと考えており、現在、私的な交友関係のあった、アズマ・オグリ、ホタル・アララギの両名の所属するJLJ社を窓口として活動していきます。


以上が現時点でお伝えできる内容です」


 そう言い切った俺に替わって島長官が、マイクの前に立ち補足を行った。


「今、エスト伯爵が発言された内容に関して、様々な疑問点などあると思いますが、現時点で日本政府として把握できている部分だけであっても、人種に関してや、神様の存在、また魔法の存在、魔法を使った技術の存在など、既存の地球上での世界各国との付き合いに比べ、常識のレベルが全く異なりますので、お互いをリスペクトする事で良い関係を築き上げたいと考えます。それを踏まえた上で質疑応答に移ります」


 新聞社やテレビ局の代表であろう人物たちが一斉に手を挙げた。

 島長官が指名をする。


「毎朝新聞の野中と申します。魔法という技術に関しては、地球人が覚えることができる物でしょうか?」

「それに関しては朝の会見でも出た通りに、女神オグリーヌへの信仰が認められれば加護があるかも知れません」


「読専テレビの菅原と申します。先ほどJLJ社の名前が出ましたが、その他の会社や、日本政府との直接の取引は一切、受け付けないという事でしょうか?」

「現時点では考えておりません。もし菅原さんが偶然事故に巻き込まれて、カージノ大陸に転移され、その中でカージノの国民に慕われ、私やザックのようなある程度の決定権を持つ者の目に触れ、友好関係を結ぶことができるようであれば、窓口は増えて行くのかもしれませんが」


「東西ラジオの山岡と申します。モンスターと呼ばれる存在が居ると聞きました。それは地球上の既存の大陸に出現することはあるのでしょうか? また、もし出現した場合にカージノ王国はそれに対して責任を持って対処して頂けるのでしょうか?」

「責任? 何をもって責任と言われたかが解りませんが、カージノ王国が望んでこの星に現れたわけではありません。ましてやモンスターは思考で襲って来るのではなく、本能として喰らう為に襲って来る存在です。どこに現れるかなども責任と言われても答えようがありません。例えばこの世界では日本の領海で地震が起きて津波が発生したとして、その津波が日本以外の国の沿岸に到達して被害を与えた場合、日本が損害賠償を行うのですか? そういう法律があるのなら「そういう考え方の人もいるんだな?」程度には聞けますが、カージノ王国の常識にてらし合わせば、それは言いがかりです。話は戻りますがカージノ王国においても誰でもモンスターを倒せるわけではありませんので、危険なモンスターが現れた時には、冒険者ギルドに討伐の要請を有料で行っています。それと同じような対応は可能なのではないでしょうか?」


「中央新聞の冴島です。カージノ王国には日本や他の国々とは違う食文化が存在するのでしょうか?」

「そういう質問は好きですね。私自身まだこの星の食文化に関して調べたわけでもありません。精々、トモダチであるアズマ達から聞いた範囲でしか、お答えできませんが調理技術に関しては、この星の方が優れていると思いますが、食材に関してはカージノ大陸の方が優れた食材を有していると思いますよ? 先ほども話題に出たモンスターなどはとても優れた食材です。皆さんも機会があれば是非召し上がってみてください」


「夕日テレビの綾瀬です。人種についてなのですが、エルフやドワーフなどは平均的な寿命が長い存在なのでしょうか?」

「はい、結論からいいますと寿命は人種によってはあまり変わらないのではないでしょうか? ただ保有魔力による老化の遅延などは起こります。一例とさせていただきますと、貴族になるような人間は大体二百年ほどの寿命で、百八十年程は老化を迎えません。種族的に言うとエルフやドワーフなどの場合は保有魔力が高い者が多いので長寿の者も多いですね。皆さんも女神の加護を与えられれば、魔力が芽生え長生きできるかもしれませんね?」


 それ以外にも三社ほどの質問を受けた所で、島長官が割って入ったくれた。

 報道各社との質疑応答は、一応は俺がリュシオルに囁いて、リュシオルが日本語で話すというスタンスを取ったから結構時間が掛かったよ……


 最後に島長官が報道の連中に対して、税関として使用する施設の魔法を使った移築を、三日後の朝から行う事を発表し、その時は公開をして撮影もできると伝えたので、盛り上がりを見せて会見を終了した。


 控室に下がると島長官が俺に声を掛けてきた。


「エスト伯爵お疲れ様です。随分慣れた感じで返答されてましたね?」

「あー、慣れてはないですけど、ステータスの知能が上がっているので頭の中で適当に答えを考えて喋れたんですよね。自分でもなんかびっくりな感じです」


「そうなんですか? 私も機会があれば是非能力を上げたいですね」

「あー島長官だったらお金は結構用意出来たりするんじゃないですか? お金次第で能力は身につけられるのが、カージノの理ですよ」


「そうなんですか? それが知れると一部の富豪たちがカージノに行きたがりそうですね」

「まぁ地球の資源でカージノでも変わらず価値がありそうなのは、金、銀、プラチナなどの一部の鉱物資源に限定されそうですので、手に入れるなら早い方がいいと思いますよ?」


「そう言えば最近金の相場がかなり上がり始めてるんですが心当たりはありますか?」

「どうでしょう? アンドレ隊長たちとはそういう話題が出たことあるので、『パーフェクトディフェンダーズ』社絡みとかで、積極的に買っているのかもしれませんね?」


「総理とも相談して日銀の金の保有割合を上げるようにしておこう。そういえばカージノというか女神聖教はそうやって集めた金は何のために使っているんだい?」

「どうなんでしょうね? 聞いた事が無いから解りませんけど何か理由があるのかもしれないですね」


「それともう一点、化石燃料の採取がカージノ出現以降世界的に落ち込んでいて、それに応じて燃料価格の上昇が看過できないレベルになって来ているんですが、これは何か原因があるのでしょうか?」

「そうなんですか……現時点ではわからないが回答になりますけど、化石燃料の採掘場を訪れたら何か解るかも知れませんね」


「国内では、石炭の採掘場が弱冠ある程度ですが機会を見て行って見ますか?」

「えーと……すいません。その問題は現時点ではカージノ側では魔石さえあれば問題は何もないので、興味が持てないです」


「……質問を変えてもいいでしょうか? カージノは化石燃料は全く使って無いのですか?」

「薪は一般的に使ってましたけど、石油や石炭を見たことはありませんね。『ダービーキングダム』からカージノに向かったときもそもそもは燃料が手に入るかどうかを調べに行ったんですが、事態が急転したので調べていないままですし」


「そうですか、出来ればその辺りの問題も今後相談にのってもらえれば助かりますが」

「俺に何が出来るかは解りませんが知識として身につけれるように調べておきます」


「お願いします。そろそろ会食の時間ですので席を移しましょう」

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