第66話 カージノツアー計画
自分の部屋に転移で戻ってきた俺は東雲さんと一緒に事務所へと降りて行った。
事務所の中には藤崎さんと夢幻さんだけが、ソファーでテレビを見ながら寛いでいた。
「お二人だけですか?」
「あーそうだね、そう言えばアレク電機の川越部長から電話が入っていたよ」
「お、発電機の進捗があったのかな? 連絡して見ます」
早速電話をして話を聞いた。
『小栗です、連絡を貰っていたそうですが』
『小栗さん、試作品が出来ていますので現物を確認しながら説明をさせていただきたいのですが、研究室の方に見えていただく事は可能でしょうか?』
『早かったですね、明後日の昼であれば時間を作れます。研究室って何処でしたっけ?』
『川崎です。車でお見えになられても一時間程で到着できると思います』
『解りました。それでは明後日の十三時頃に伺わせて頂くということでよろしかったでしょうか?』
『了解いたしました。説明と魔道具の構造変更のお願いなどで二時間程は掛かると思いますのでよろしくお願いします』
『了解です』
電話を切って一息つくと、東雲さんがコーヒーを入れて来てくれた。
みんなでソファーに座ってコーヒーを飲みながらテレビを眺める。
相変わらず、テレビ番組ではカージノ王国関係の番組で盛り上がっている。
海岸線の減少の話題はほぼ出ていないが、これは恐らく報道各社がカージノ王国との関係性に
藤崎さんが話し掛けてくる。
「小栗さん。大崎建設に依頼されている港湾工事や飛行場の整備が整うまでは一般の方のカージノへの渡航は難しいですよね」
「そうですね港が無いんじゃ船が着きませんから」
「私、夢幻さんと一緒に少し調べたんですけど、浮き桟橋なら設置はかなり簡単にできるそうじゃないですか?」
「そうですね、福山さんの運送会社も資材の積み下ろしにそれを利用するそうです」
「それなら、一般の客船用に同じものを用意すれば、かなり前倒しで渡航が可能になりませんか?」
「不可能ではありませんが、一般の方が日本から客船でカージノに渡航するには費用的な問題が大きいと思いませんか?」
「確かにその問題は起こりますが、例えばですよ。台湾からなら半日程度で到着できるんではないでしょうか? 台湾まで飛行機で移動して、そこから客船で移動ならば三泊四日程度のツアーも可能になってきます。それであれば現実的な金額の設定も可能ではないでしょうか?」
「なる程ですね。カージノへのツアーに関しては『ダービーキングダム』を所有する船舶会社が積極的に動き始めているはずです。俺と一緒にカージノに取り残されたダニエルさんという黒人男性がプロジェクトリーダーで取り組むようですが、そこの提供する高額ツアーとは別の切り口で面白いと思います。具体的な案を纏めて置いて下さい。受け入れ側の許認可関係は何とかしますから」
「解りました。早速LCCや台湾の旅客船関係の会社を調べてアポイントを取ってみたいと思います。国内のツアー会社との提携も視野に入れていいですか?」
「そうですね。ただしJLJの主導が保てるようにお願いします。法的な問題なども出てくるので、斎藤社長とも相談しながら進めて下さいね」
「解りました」
藤崎さんとの話が終わると、夢幻さんが聞いてくる。
「小栗君、明日は予定通りで良いんだよね? もう楽しみでしょうがないよ」
「夢幻さん、はっちゃけすぎないようにお願いしますね」
その話を聞いた東雲さんが不思議そうな顔をした。
「小栗さん? 今のお話はどんな内容なんですか?」
「あ、東雲さんは昨日居なかったから知らないよね」
その後で昨日の夜のカージノ訪問や、藤崎さんの妹の話、夢幻さんが医学博士なので【聖女】のスキルを身につけてもらって治療が可能なのではないかといった話などをして、その為に明日、藤崎さんと夢幻さんにお告げカードの取得のためにカージノで狩りをしてもらう予定であることなどを話した。
「当然、私もご一緒させていただきますね!」
それはもうキラキラした笑顔で嬉しそうにしていた。
「私もお告げカードを手にしたら、スキルを手に入れたいです。神殿で売っていたスキルは私も買えるんですよね?」
と、食いついて来たけど「買えるのは間違いないけど、安くはないですよ?」と、主だったスキルの内容や、その値段などを説明した。
当然、夢幻さんや藤崎さんも食い入るようにその話を聞き、自分がどんなスキルが欲しいのかを計算しながら考えていた。
「小栗君……今の話の内容だと話題に出ていた【聖女】スキルって値段を付けるなら一体いくらになるんだい」
「聞いちゃいますか? それを」
俺も計算したことは無かったが、まず聖属性スキルのレベル十だけで二千五百億円相当になる。それに通常では上がれないSランクになって十二種類のスキルを身につける事が出来る。
「えーと……ざっとですけど三千億円くらいの価値だと思います」
俺の返事を聞き藤崎さんと夢幻さんが固まった。
「なぁ小栗君? その三千億円の価値を持つスキルを俺はいくらで買えばいいんだい? 人より貯金は多い方だと思うが、流石にそんな金額は持って無いな」
「ああ、心配しなくてもそのスキルに関しては無料でいいですが、追加する分は自分で買って下さいね」
「いいのかい? 太っ腹だな」
「どうせ自分では使えないですし」
「解った、俺はこのスキルを有効に使用して【聖女】として生きて行くよ」
なんだか夢幻さんが妙に感動していたが、東雲さんが突っ込みを入れる。
「小栗さん? でもスキル名が【聖女】なんですよね、男性が身につけることは出来るんですか?」
そう言えば可能かどうかはわからない。
「どうなんでしょ? とりあえずチャレンジしてみますけど駄目な場合も考えなきゃならないですね。明日はホタルも同行しますから四人のうちの誰かが覚えれたらいいですけど……」
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