第65話 アンドレ隊長たちのスキル購入
アンドレ隊長、ミッシェル、ベーアさんの三人と東雲さんを連れて女神聖教の神殿へと向かった。
東雲さんが物珍しそうにキョロキョロしてる。
「東雲さんは、お告げカードも取得していないし、そもそもこの街の入街許可証も持って無いから目立たないようにしてしてね。俺と一緒に居る以上は捕まる事も無いけど、無用なトラブルは避けたいから」
「はい、気を付けます」
「アンドレ隊長たちは取得するスキルは決めてあるんですか?」
「ああ、パーフェクトディフェンダーズ社から予算を三百万ドルほど許可して貰ってるのでそれに合わせて考えた、俺とミッシェルがランク五の魔法スキルを一つとランク一のステータス系のスキルを五つずつ、後はベーアにもランク一の体力ステータスを二個与えてレベル二にしたい」
「今の隊長たちのランクって何でしたっけ?」
「全員Fランクだな」
「結構上げてますね」
「ダンジョンにも入っているからな」
「俺もそのうち行ってみたいです。でもランクってステータスが直接影響するわけでは無いんですか?」
「そうだな、その辺りは謎だが恐らく潜在能力の様なもんじゃないかと思う」
「潜在能力ですか?」
「そうだな上限値というか」
「なるほど! それなら何となくピンときます」
「実際アズマは今のランクってどうなんだ?」
「そうですね……一応、他の国の人達には隠しておいた方がいいと思うのでその辺りはお願いしますね。俺はオグリーヌから勇者スキルを与えられてそれに伴いSSですね。恐らく上限なしだと思います」
「めちゃくちゃだな……何かあった時には協力を頼むぞ」
「なんでもっていうわけには行きませんが、前向きに検討します」
その会話の後でアンドレ隊長は火属性魔法を一つ、攻撃力を四つ、魔力を一つ購入。
ミッシェルさんは、水属性魔法を一つ、敏捷を四つ、魔力を一つ購入。
ベーアさんは体力を二つ購入した。
「全部で一億八千二十五万ゴルですね。とりあえず立て替えておきますから、パーフェクトディフェンダーズ社からゴールドを受け取った後で、清算をお願いします」
「解った。アズマに会社のエージェントから連絡が入るから対応する様にしてくれ」
その会話をしてると東雲さんから待ったがかかった。
「小栗さん。パーフェクトディフェンダーズ社という事は、当然英国の所属会社ですよね?」
「ん、そうだけど、駄目なの?」
「取引自体がダメとは言いませんが、ゴールドを現物で預かる取引ですよね? 必ず私も一緒に立ち会える様にお願いします」
「ああ、外国の人との会話は制限があったんだっけ。解ったよその時は一緒に頼むね」
ちょっと面倒だな……とは思ったけど了承しておいた。
神殿を出て屋敷に戻る途中で、広場の屋台でハンバーガーを売ってるアダムさんの店に立ち寄り、ハンバーガーを購入して昼食を取った。
「アダムさん相変わらず売れ行きは好調そうですね?」
「見ての通りだよ、毎日行列を捌くのが大変だ。でも俺もだいぶ言葉が通じるようになったから、商業ギルドから売り子さんを紹介して貰ってなんとか間に合わせてるぜ。ニャルも頑張ってくれてるしな」
「それは凄いですね。そろそろ海岸の土地の開発にも取り掛かりたいんでその時には力を貸してくださいね」
「おう、店を用意してくれるなら料理は任せな」
ハンバーガーを食べて屋敷に戻ると、隊長に頼んでバーン大佐に連絡を入れてもらう。
「エストです。連絡を貰っていたそうですね」
「はい、それと確認なのですが、エスト伯爵はいつの間に英語を覚えられたのですか? 『ラン・フォア・ローゼス』の襲撃の時には理解されて無かったと思いますが」
「アンドレ隊長から教わりました。ある程度のステータスがあれば一週間程度で会話に困らない程度には覚えることはできますので」
やばっ……そういえば前回の電話も普通にしゃべってたよ。
「そうですか、カージノ王国の人々の能力の高さに感服します。先日お尋ねになられた件に関してですが、本国と確認を取り修理と運用技術の提供に関してご協力させて頂きたいと大統領からの返事をいただきました」
「おお、それは素晴らしい事です。カージノ王国とアメリカの友好のために素晴らしい判断だと思います。それでは現実問題としてどこに運べばいいのでしょうか?」
「恐らくですが、その艦体は損傷を受けているので放射能が漏れだしている懸念もあります。その為にカージノ王国の外に持ち出しての修理は難しいと判断します。本国よりドック設備を有する修理船をカージノ王国へ回航し、そこでの修理を行いたいと思います。回航までに一週間ほどの時間が掛かりますが、よろしいでしょうか?」
「はい、了解しました。それでは待っています。場所は以前『ラン・フォア・ローゼス』が停泊していた辺りでお願いいたします。私の領地がその海域になりますので」
「了解いたしました閣下」
アメリカはえらくあっさりと了解したな。
交換条件でどんなことを言ってくるのかが気になるけど、今日の会見の後の会議で少しは見えてくるだろうな。
まだ時間的に少し余裕があったので、ギャンブリーの街からヴァルゴ地区のギャラガ侯爵の領地である砂浜へと転移を発動した。
一緒に行ったのは東雲さんだけだ。
現地に行くと二百名ほどの兵士たちが俺の作った収容所を取り囲むようにしていた。
転移によって突然現れた俺を警戒しながら責任者のような人物が近づいてくる。
「私はこの不法入国者の監視を命じられたヴァルゴ地区の騎士イーブンと申すものだ。貴殿のお名前を伺ってもよろしいでしょうか」
転移の前にエストの姿に変身していたので、明らかに貴族っぽい姿だったので、この責任者は結構丁寧に聞いて来た。
「私は『エスト・ペティシャティ』と申します。国王陛下の命によりこの者達を捕縛した者です。ギャラガ侯爵はこちらにいらっしゃいますか」
そう返事をするとイーブンと名乗った騎士は「しばし待たれよ」と返事をし、兵士たちの居た場所より二百メートルほど離れた場所に設置された天幕の方に走っていった。
鎧を装備したまま砂浜の上を走る姿がとてもきつそうだ。
イーブンが天幕に入ってから三分程で再び現れ、また走って来る。
「お待たせいたしました。エスト・ペティシャティ伯爵ご本人で間違い御座いませんか?」
「ああ、間違いない」
そう返事をすると、天幕の方に案内された。
東雲さんは、天幕の外で待ってもらって俺一人で中へと入る。
「お初にお目に掛かります。エストでございます、お手数をかけて申し訳ありません侯爵」
「あなたが噂の新たなる勇者殿ですか? よろしくお願いします」
もしかしたら「この新参者が」的な敵意を向けられるかとも思ったが、陛下からの通達で思ったよりも好意的に受け入れられたようで安心した。
「今のところ問題はございますか?」
「そうよのう。陛下から監視だけしか、まだ命令をされておらぬが、なにぶん何を喋っているのかまったく伝わらぬので、困っておるところじゃよ」
「そうでしょうね。彼らの食料や水はどうされてますか?」
「一応、飲み水は皮袋に入れた物を放り投げてはおるが、食料は与えておらぬ。まだ三日目であるし死んではおるまい」
「解りました。二、三日のうちに王宮の通訳官と王宮の騎士も派遣させますので、その間監視だけはよろしくお願いします」
「承った。領主など普段あまり仕事が無いからよい暇つぶしになるわ。そう言えばこの海岸の新たなる領地は海に飲まれぬと聞いたがそれは真か?」
「はい、この星の理では殆ど海水面の変動はありませんので、台風や地震による被害が起こらぬ限り安全かと思います。現在私がサジタリウス地区の海岸線を陛下に拝領いたしましたので、活用方法を考えております」
「ふむ、なるほどの。良い手段があれば話を聞かせてくれ」
「それでは、次は通訳官とともに訪れます」と伝え天幕を出る。
天幕の外で、東雲さんが聞いて来た。
「あの乗員たちはまだ放置ですか?」
「そうだな。本来であればとっくに全員殺されてるとこだし、もう少し恐怖体験でもしてもらおう。それではいったん戻りますよ」
そう言って日本へと転移で戻っていった。
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