第60話 異変
「島官房長官、資源エネルギー庁の方がお見えになっております」
「ん? 資源エネルギー庁の人間が私に何の用だ? 私に専門的な話をされても、あまり役に立てないと思うが」
「ご一緒に経済産業省の次官も見えられております」
次官も? 次官の方が上位の役職であるのにエネルギー庁の人間が来たと告げたのは、それなりの意味があるのであろう。
「どういった要件ですか?」
「官房長官。カージノ王国を日本が単独で公認してしまう事は正しい選択だったのでしょうか?」
「と、言われますと?」
「日本は各種資源の殆どを海外からの輸入に頼らざるを得ない状況です」
「当然私もそう認識しています」
「今回の日本の独断専行は、海外との
「それは君の意見ですか? それともエネルギー庁としての総意、もしくは経済産業省としての総意ですか?」
「現在の所、私見と言わせていただきますが、このまま燃料価格が高騰した上に日本への供給を後回しにされる可能性を考慮すると、方針の変換もしくはカージノとの外交に関しては世界各国と足並みを揃えていただかないと、日本の経済が立ち行かなくなると考えます」
「なるほど、それでは伺いますが産油量や天然ガスの生産量は、今後回復するのですか? もしかしたら、今後さらに産出が減り日本に関わらず輸出すること自体が不可能になるような状況は無いのですか? そうであれば足並みを揃える事に何の意味も持たないのではないでしょうか」
「そ、それは……確証はありませんが、日本国やカージノ王国がそれでも構わないほどの代替えエネルギー源を確保できる保証がない以上、世界の足並みを揃えるべきでは無いのでしょうか?」
「そうですね。まだ発表出来る段階ではありませんが、ある! と言えばその意見は引き下げていただけますか?」
「それは、誰の責任においての発言になるのでしょうか?」
「最低限発表する時は、藤堂総理からの発表になるでしょう。恐らくは総理の性格からして、日米合同声明か、その他の親日国を含めての合同での形になると思いますが」
「本当に存在するのですか?」
「私は専門家ではありませんので、詳しく説明はできませんが、近いうちに技術の発表はあると思います」
「わかりました。当然現時点では秘密の内容という認識で?」
「はい。もし言ったとしても誰も手が出せないとは思いますが……」
「と、言われますと」
「魔法の力ですね」
「………………」
エネルギー庁の事務方のトップと、経済産業省の次官に対してはああ言ってしまったが、早く小栗君の会社が新技術を発表してくれなければ私や総理の立場も危なくなるな。
逆に言えばこの技術さえ発表すれば減少したエネルギー生産に対して危機感を持った国々が、その技術を手に入れるために繋ぎの期間も、日本に対して優先的なエネルギーの供与をしてくる可能性は高い。
確認だけはしておくべきだろう。
◇◆◇◆
俺は一人でスキル販売カウンターに行き、Aランク以上の専用フロアへの入場を求めた。
カードを確認され専用フロアへ入場する。
相変わらずオグリーヌが一人でカウンターの中へ立っていた。
「あら、久しぶりですねアズマ。あなたにお願いしたい用事がたまっていますわ」
「オグリーヌから俺に直接連絡とかできないのかよ?」
「できない事は無いのですが、神力を大量に使うので、できればアズマがもっとこまめに顔を出してくれる方が助かるわ」
「そうなのか……それで用事ってなんなの?」
「海洋性モンスターの退治を頼みたいのです。現在の私の力ではカージノ王国を囲む結界の外にはほぼ力が及びません。この星の神々からも苦情が来ていますので、早急に手を打たなければならないのです」
「そういえば、クラーケンだっけ? でっかいタコ。この間地球の軍艦に四匹も纏わりついていたのを片付けたぞ。それ以外にもサメのモンスターも確認されているみたいだし、海で勝手に増えてるみたいだな」
「クラーケンを生で捕食した生物が変異をしてしまってる様です。一部分だけでも体内に取り入れてしまえば、変異が起こるので弱い生物では難しいと思いますが、ある程度の強さを持った生物であれば可能性はあるので注意を払って下さい」
「てかさ、海の中で見つけるのは難しく無いか?」
「この世界の索敵方法では無理ですがアズマならば海中で探知を使えば見つけることはできます」
「潜れないし……」
「あら、潜水艦でしたか? あれを使えばいいじゃないですか。アズマが手に入れれるように、私が誘導して結界に衝突させたのですが」
「……ってあれオグリーヌの仕業なのかよ?」
「もともとこの大陸を嗅ぎまわっていた、テロ組織? の潜水艦ですから少し舵を動かなくしただけです」
「結界に攻撃をしてきたのは、あいつらの判断っていう事なのか?」
「急に舵が効かなくなって衝突して、先に攻撃を受けたと判断して応戦したのかも知れませんが」
「テロ組織と言えどもなんか可哀そうになるな」
「それでも彼らは放っておけば罪もない人々を巻き込む存在だったのですからしょうがありません。海に存在するモンスターを退治するためには必要ではあるので役にたってもらいましょう」
「なんか、釈然としないけどとりあえず了解だよ」
「報酬はちゃんとあるんだよな?」
「はい、海洋でのモンスター退治一匹に対して、ユニークスキルかエクストラスキルを一個差し上げましょう。ただし選ぶことはできません。前回のクラーケン四匹の報酬を差し上げますね」
そう言ってオグリーヌが渡して来たスキルオーブは、エクストラスキルが三個と、ユニークスキルが一個だった。
「このユニークスキルは何だ?」
「【コピー】ですね。アズマの所持しているスキルオーブを一つだけコピーできますが【勇者】スキルのみには使用できません」
「えっと【勇者】以外なら大丈夫って事は【聖女】はOKなのか?」
「はい、大丈夫です【聖女】にはそこまでの万能性はありませんので」
その返事を聞いて俺はエクストラスキル三個を【予知】に使い【コピー】を【聖女】に使用した。
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