第59話 取り巻く国々の思惑
アメリカ第七艦隊『ラン・フォア・ローゼス』バーン大佐
エスト伯爵からの打診を受け横須賀の司令部へと連絡を行った。
『オズマ中将閣下、バーンです。カージノ王国のエスト伯爵より重大かつ緊急案件の相談を請け、私では判断できないと考え連絡させて頂きました』
『バーン大佐で判断が出来ないとは、どれほどの案件なのだ?』
『既に本国でも把握している通りに、カージノ王国の南部地域に国籍不明原子力潜水艦が敵対行為を行った事実に対して、カージノ王国側はエスト伯爵を派遣し、当該艦を拿捕、乗員を拘束したとの報告がありました』
『な、なんだと。それで何か求めて来ているのか?』
『要約すれば拿捕した原潜を活用するための技術供与を、米国に受けることはできないか? との打診です』
『それは……確かにバーン大佐では手に余るな。私でも判断の範疇を越えている。速やかに本国の統合参謀本部へと相談し、大統領の判断を仰ぐべき案件だ。緊急と言う事だが、期限の提示などはあるのか?』
『いえ、それは明示されておりませんが、エスト伯爵はすでに日本へ打診して、日本では原潜の運用実績が無い為に、断られたようです。恐らく日本政府の意向もあり、本国へ話が回って来たのではないでしょうか? これを受けなければ、ロシアや中国との対話を行う可能性も考えれば、わが国で抱えるべき議題ではないかと考えます』
『ふむ、しかし、判断は大統領以外では行えないな。対応策を急ごう。決定次第連絡する』
『ラジャー』
◇◆◇◆
ロシア大統領府
「衛星による情報ではカージノ王国南部において確認された爆発は、旧ソヴィエトの保有していたタイフーン級の艦が関わっているのは間違いありません」
「困ったな、我がロシアがそのタイフーン級の行った攻撃に関して一切関わっていない事を、カージノ側に対して伝えることはできるのか?」
「現状、日本以外への連絡および対話をカージノ王国は行っておりませんので手段はないかと……」
「アメリカは日本の官房長官とともに、カージノ王国の使者との会食に参加したそうでは無いか?」
「はい。その情報は確認取れています」
「日本は、アメリカ以外の諸国とカージノ王国の橋渡しをするつもりはないという事か? 勝手に日本単独でカージノを国家として認めると声明を出した以上、当初我国固有の領土だと言い張った中国と開戦まで進む可能性まである事を理解しているのか?」
「それは……中国側が次にどういう発言を行うか次第ですが、今まで入っている情報などを精査した現状では、海に現れたモンスターによる米空母の損傷などの件を踏まえて、中国側もカージノとの国交の目を摘んでしまう行動はとれないのではないでしょうか?」
「ふむ、カージノに対してはそうだとして、日本に対して戦端を開く可能性は無いと言い切れるか?」
「それは、日本とカージノがどの程度の繋がりを持っているかという状況次第だと感じます」
「日本の強みは何なのだ?」
「カージノから帰国したアズマ・オグリ、並びにホタル・アララギの二名がカージノ王国の実力者である、エスト伯爵や今回日本へ訪れている、ザック、アインの両騎士爵と友好関係を結んだためと聞いています」
「その二人は民間人で間違いないのだな?」
「はい」
「わが国に対して協力要請を飲ませる手段を模索しろ。早急にだ」
「
◇◆◇◆
中国国家主席モウ・チェン
腹だたしい事態だ
我が国家が太平洋への足がかりが不足している事は、積年の問題である。
現状では大陸から太平洋に抜けようと最短距離を取るためには、南西諸島が蓋をする様に覆いかぶさっており、太平洋への覇権を唱えるためには非常に邪魔な存在だ。
そこに降ってわいた今回のカージノ大陸の出現。
この新大陸の支配さえ行えば、太平洋に広大な領土を持ち正に世界への覇権が成し遂げられるはずであった。
しかし、この新大陸には大陸と共に先住民たちが相応の文明を持って存在することが明らかになった。
我が国に友好的に降るのであれば、中国の名のもとに主権を認め、わが国にとって都合の良い存在として認める手段もあったが、この国には今までの地球には存在しなかった、人種、文化、魔法文明などが存在し、人類に仇為す存在、モンスターまで生息しているというではないか。
これらを我が中国が、いや、地球上の世界各国が御する事が出来るのか?
焦れば、とんでもない事態が起こることも考えられる。
日本が我が国の意見も聞かずに単独で国家としての承認を行うなどの暴挙に出た以上、中国の名を持って国際社会に訴え、日本単独でのカージノとの外交などを認めない決定を下さねばならぬ。
なに、あの国は資源をほとんど国外に依存しているのだ。
国際社会から追い出されれば、すぐに言う事を聞くしかないはずだ。
早急に世界中の資源国から日本への輸出を止めて、対カージノ政策の日本単独行動を糾弾しなければならぬな。
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